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──書店にて。
美月「『剣と魔法の世界で婚約破棄され城を追放された悪役王子の俺が、辺境でスローライフを楽しみながら一夜にしてハーレムを築き、チート無双して相手に土下座させいつの間にか復讐を果たしていた件』ですか……」
つづら「こういう小説が流行ってるんだね」
美月「試し読みができるみたいですよ」
夏輝「いやこれ序盤からストーリー破綻してない? 辺境でスローライフしながらどうやって復讐するんだ? それに一夜でハーレムとかさすがに無理がありすぎるだろ……」
美月「あ! 『ジャンル:ダンジョン農業』と書いてあります! 豪農になって見返すという事では?」
夏輝「え? 表紙と内容に落差がありすぎない? 剣と魔法の世界はどこ行ったの?」
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──十分後。
夏輝「中世ヨーロッパ風の世界観なのに主食がおにぎりなのが意外だった」
美月「はい。そして、思った以上に泣ける内容でしたね……イナゴの御霊に稲を全滅させられた主人公が、地下ダンジョンで光魔法を駆使して稲の育成に大成功する痛快逆転劇だったとは」
夏輝「俺もあのシーンは感動したが、コメの課税撤廃をめぐっての隣国との戦闘が壮絶すぎた。まさか一巻だけで主要キャラクターのうち五人が死ぬ鬱展開になるとはね」
美月「そうですね。後は、主人公のお妃候補の十三人がお互いの毒殺を試みる頭脳心理戦も緊迫感がありました。次は誰が犠牲になるのかと思うともう恐ろしくて……!」
夏輝「その時点で既にハーレム物というよりホラージャンルだと思うけど……」
美月「そういえば、元々は主人公との婚約を破棄したプリンセスと弟王子一派への復讐の話ではありませんでしたか? それなのに、いつの間にか物語のメインが王国内のコメの格付け選手権に……!」
夏輝「俺も、主人公が何と戦っているのかが未だによく分からない……」
つづら「あのさ。二人とも盛り上がってるところ悪いんだけど、そろそろ行かなくちゃ」
夏輝「ああ……そうだったね」
美月「では参りましょうか。本屋さん、楽しかったです」
(完)
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作者より一言:いつも読んでいただき、有難うございます。
温かいコメントをたくさんいただき、有難うございます。
(お返事ゆっくりですみません)
本日はエイプリルフールなので、ネット小説における旬のテーマを『常世現世』に思いっきり盛り込んで遊んでみました!
いつか、こういった人気のあるテーマで執筆してみたいです。
お付き合いいただきありがとうございました!