跳世ひつじ

アビゲイルが死んだ。 アビゲイルの夫のルーカスから、イライジャの妹のノラへと連絡があった。 イライジャはルーカスに嫌われていたから、直接雇用されていたにも関わらず、ノラへと連絡が…

出兵した弟・マウリリオの行方を尋ね、敗戦後の首都を訪れた画家のジャンマリア。彼が見つけたのは、視力と片足をうしない、損なわれてしまった弟だった。 高慢な長男と愛情深い末子、そして…

赤錆びの雨が降り、街は陰鬱に彩られていた。 青年マリアは、薄暗い雨降りの昼に《人形店》の主とその作品を殺害した。己のなかの殺人者の影に喘ぎ、苦しみ、悶える彼は、自らが手にかけたは…

十九世紀末・上海。 僕は片手に老舗の月餅を下げて、お役人であるところのL氏を訪ねようとしていた。 待ち合わせ場所はとある妓楼、しかし何か嫌な予感がする――。 初出：小説×イラス…

山の中腹に抱かれた方楼は、強大な母に支配された家だった。 溺愛された娘・青浪が婿を迎えるとき、家には変化が訪れる。 三年前、戦役から帰還し醜い容貌へと変わり果てた兄・春峰。 青…

ヘキライ第７回「はじめまして、さようなら」参加作品

『赤錆びと渇きの。』クリスマス短篇

戦火を厭って故国を去った青年・磁翠は、滅びた魔術が未だ強く息づく街・ホーンへと逃避する。 彼は導かれるように街を彷徨い、享楽に耽り、やがて暗い地下のひと部屋を辿り着く。白い髪、銀…

双子の一方は若く、一方は老いていた。 赤い雨が止み、奇病が蔓延るホーン。数年ぶりに師のもとへと帰ったヴァイオレットは、幾度も繰り返す少女の生のなかで、いつも死だけを見つめていた。…