…またここか。
前回、鈴カステラをかものはし？ ステラにあげた場所だ。俺の手にはしっかり鈴カステラと……今回はりんご飴まである。
…でも結局あれ夢オチだったんだよな。
あの後から子供達に着てもらいたくて、それっぽい服を探し回っていることは皆には内緒だ。
俺としてはイスカ、フィオ、アリアメルにも着てみてほしいが……流石に嫌がられるか。
五体投地の心構えを見せればなんとかならないだろうか…。
しかしここに来たということは、またあのかものはし？ ステラに出会えるかもしれない。
そんなことを考えながらソワソワして待っていると……き……なっ？！
大きなクチバシ、茶色の体毛、水掻きのような手足のかものはし？ ステラがトコトコ歩いてきた。相変わらず可愛い。天使。いや、かものはし。
そしてその隣には…
「にゃーんっ おとーしゃんにゃーんにゃーん！」
手にはいつもの人形を持って、猫の着ぐるみを着たニナと
犬の着ぐるみを着たラッツが居た。ラッツは長くもふっとした尻尾を両手でぎゅっと抱いている。
天使が……増えただと？
これにはお父さんもニッコリ。
俺は辺りを見回す。
うーん…この流れでイスカ達も加わってたりしないかなと思ったが…流石にないか。
「くわっ」
「にゃーんっ」
（ニコニコしながら手に持った尻尾をふりふりしてる）
三人が近寄ってきて可愛いくアピールをしてくる。
…くっ！
いかん……余りの可愛さに心臓が止まるかと…
くいくい
「ん？」
かものはし？ ステラが両手の水掻きで服を引っ張ってくる。
「くわっ くわっ」
ああ、成る程。
俺はその場に胡座をかいて座る。すると三人の天使が膝の上にぴょんと座る。
…三人とも凄くもふっとしてて暖かい…。
三人はひとしきり膝の上でわちゃわちゃすると、俺の持っている鈴カステラとりんご飴をじっと見つめてくる。
「……ほら」
俺が鈴カステラを一つ差し出すと三人揃って口を開ける。
「くわっ…あーん」
「にゃーっ…あー」
（目を瞑って口を開ける）
一人づつ鈴カステラ食べさせながら思う。
なんか雛鳥みたいだな。
幸せそうに鈴カステラを食べる三人の頭を順番に撫でる。
至福。
「おとーにゃんこれなに？」
おとーにゃん……？
「りんご飴だ。みたことないのか？」
俺がりんご飴を見せながらそう言うと三人はキラキラした目で頷く。
「ほら、一人一本づつあるから」
そう言ってりんご飴を三人に渡す。
正直かものはし？ ステラがクチバシと水掻きでどうやってりんご飴を食べるのか物凄く興味がある。
先ずニナは普通に受け取り嬉しそうに小さな口でペロペロ舐めている。
「にゃーんっ おとーにゃんっ」
うん。ニナが喜んでくれておとーにゃんも嬉しいぞ。
ラッツは……
「ラッツどうした。大丈夫か…？」
りんご飴を口にした瞬間固まってしまったラッツに声をかける。
心配してラッツの顔を覗きこむと…
目をキラキラさせたままりんご飴をじっとみつめていた。
「気に入ったのか…？」
俺がそう訊くとこっちを見たラッツがこくこくと頷く。心なしか着ぐるみの尻尾が揺れているような…気のせいだよな？
「そりゃ良かった」
ラッツの頭を撫でるとニコニコと嬉しそうに笑う。
そして肝心の、かものはし？ ステラは…
りんご飴がクチバシに引っ掛かって舐めることすらできていなかった。
やっぱりか…。
やがてかものはし？ ステラはりんご飴をクチバシから離して俺をじっと見詰め。
「…くわっ」
と鳴いた。
おとーにゃんはお前達になんでもしてあげたいとは思ってはいるが…今、この状態で一体何ができるというのか。
…B級冒険者って無力なんだな。
「……パパ、これ外して」
あ、そうか。
―――――
「……食べたらまたつけるのか……」
「…くわ…」
「…にゃ…」
（寝ながら口をもごもごさせている）
「あ……グレイさんもお昼寝しちゃったんだ。ふふ…皆どんな夢を見てるんだろ』
ちびっこ達をお昼寝させる為にベッドに連れていったグレイがなかなか戻ってこなかったので、気になったアリアメルが部屋へ見にくるとちびっこ達と一緒に寝ているグレイを見つけた。
アリアメルは四人にそっと布団を掛けながら嬉しそうな…それでいてどこか困っているような寝顔のグレイを見て、少しだけ…少しだけと思いながらちびっこ達を挟み込むように自分にも布団を掛けて目を閉じる。
………
次回 聖女、もふもふになる。
続…………く？