グレイさんの家に住まわせてもらうようになって数日がたった。皆凄く仲が良くて、数ヵ月前まで他人だったとは思えなかった。
僕に対してはちょっと微妙な感じだけど、それも仕方のないことだと思う。
こんなに仲の良い家族を引き裂こうとした。僕はその片棒を担いでいたのだから。
それでもグレイさんや…その、ニナ姉…さんがよくしてくれるのがとても嬉しかった。…ちょっとだけ恥ずかしいけど。
ニナ姉…さんはよく魚の皮とかパセリをくれる。決して苦手なものを僕に押し付けてる訳じゃない。多分…。
グレイさんは顔が怖くて皆に誤解されてるみたいだけど、家の中ではとても良いお父さんだ。あの人は血か繋がってなくても家族を本気で愛している。だから家族もあの人を信頼して愛しているのだと思う。
僕が思うにグレイさんと、”聖女”と呼ばれていたアリアメルさんは凄く親密な関係だ。
夜にアリアメルさんが枕を持って、グレイさんの寝室へと入っていく姿を見たから間違いない。
それに今もソファでグレイさんが本を読んで、隣で編み物をしていたアリアメルさんがグレイさんに寄りかかってうたた寝をしている。そんな二人の膝にはラッツ君、ステラちゃん、ニナ姉…さんが。
二人はなんというか…とても仲の良い熟年夫婦のようなイメージだ。ベタベタし過ぎないけどしっかりとした信頼関係がある。
一方ではイスカ君とフィオさんの二人もとても仲が良い。フィオさんは口では色々言ってはいるけど嬉しそうにイスカ君の世話を焼くし。
目の前でイチャイチャされるのって正直凄く気まずい。そんな僕にできることは空気を読んで空気になることだけ。
水を差すような真似はしたくないし。うん。
……でもグレイさんって『戦乙女』のリーダーのエミリアさんともただならぬ感じがする。むむむ…
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察しが良いのか悪いのかよくわからない勇者アレしゅ。