むかーし昔。
たぶんまだ学生時代だったと思うんですが、歌舞伎座で『燈台鬼』という舞台を観て衝撃を受けたことがあります。
遣唐使だった父親が行方不明になって帰郷せず、後年その息子が遣唐使となって大陸に渡り、ついに捜し当てたとき父親は灯台として金持ちの家で奉仕させられていた、というストーリー。
頭の上に蝋燭をのっけた、あれ、誰が演ってたんだろう(お金がなくて一幕見で観たからプログラム買ってないんだよねえ)。とても恐ろしい話だったのだけど、白塗りメイクが滑稽にも見えて、当時もう家の本棚はホラーまみれだった私は「わっきゃあ!」心臓をズキューンされてしまったのでした。
こういうのをトラウマという。
その『燈台鬼』を本歌取りにしたのが拙作『人間燭台』です。
元ネタを切ったり貼ったり煮たり焼いたり。意図的に変えたところもあるし、勝手に展開しちゃったところもあるのだけれど、私自身の作品と思えるくらいにまで育ったので発表させていただきました。
ところで、私が観た歌舞伎の『燈台鬼』。
原作は、なななんと! 南條範夫でしたっ!
ひええええ、文豪カテゴリーの大御所作品を下敷きにしてしまったぁぁぁ!!!
先にあれこれググっちゃうと情報に引っ張られちゃうから、いつも作品が書きあがった後に諸々のチェックはしているんですが。
いやはや、久々に投稿ボタンを押す指が震えました(笑)
ちなみに『燈台鬼』の元ネタは「灯台鬼」という怪談です。
わりと広く流布したお話で平家物語やらなにやらにも登場するのだとか。
実は私、元ネタは中国由来の書籍なんだと思い込んでまして。「さすがは人豚の国よね!」なーんて勝手に納得していたのですけど。
日本発信の怪談となると、むしろ「だるま女」なんかと同じ括りの都市伝説なのかもしれないですよね。ちょっと思ってたのとニュアンスが違うー。
でも、まあ、誤解も込みでオリジナル作品ということで、そのへんは悪しからずご容赦願いたいです。
ついでなので、もうひとつ「大雁塔」について。
三蔵法師が持ち帰った仏典を収めるために作られた長安のランドタワーです。
実は、第一稿では父親は武術者ではなく科挙に合格した市井出身の状元という設定でした。書き始めたら結構なバイオレンス作品だと気がついて、体力的に書生じゃムリだろうと設定を変更したいきさつがあります。
大雁塔というのは科挙の合格者の名前を掲げる場所でもありますから、勉強三昧だった過去の否定という意味を兼ねたラストになるはずでした。
でも、書きあがってみると、設定、変えてよかったなーとは思うのですが。大雁塔の名前だけは都の象徴という形で残しておいてみました。
最後の最後にいきなり固有名詞が登場して違和感を覚える方もいらっしゃるかもしれないなあ、とは思ったのですが。
大雁塔。以前西安に行った時、観光地の中では一番感動した(今でも上まで登れるんですよー)思い出があり、なんとなく残しておきたかったのです。
そう、作者のエゴです(笑)
↓残酷描写があるので広く「読んで!」って感じでもないんですけど、それでもいいよって方はどうぞ↓
『人間燭台』
https://kakuyomu.jp/works/16818093091040289293コメント、レビュー、ありがたく頂戴しております。
過分な感想、恐縮です。
応援を勇気に変えて今後ともガンバりまーす(*≧∇≦)ノ