この『人類が住むのに適さない星~habitable zone~』を書くのには非常に苦労しました。
なんとなくSFチックな話にしようとは構想していたものの、今まで天文学というものにあまり触れてこなかったせいか、なかなかイメージが湧かなかったからです。
それで私は図書館に行って、様々な宇宙の不思議について書かれていた本を読み漁りました。
特に太陽系に関する話や、SFといえば宇宙人だろ!と思っていたので、宇宙人が居る可能性についての話を多く読みました。
しかし、本を読めば読むほど宇宙人の存在を否定するような話が多く、宇宙人物を書きたい私は困ってしまいました。
たくさんの本を読む中で、私は副題にもなっている「ハビタブルゾーン」という言葉を知りました。
宇宙の中で生命が誕生するのに適した環境と考えられている天文学上の領域のことです。
この「宇宙の中で生命が誕生するのに適した環境」とは具体的には、惑星の表面で、水が液体で存在する温度になる領域を指しています、
水は0℃で凍り、100℃で沸騰し水蒸気になります。
なので、惑星に生命が誕生するためには、惑星の気温が、この0℃から100℃の間になるようには適度に恒星(太陽系で言えば太陽)から離れている必要があります。
その恒星から適度に離れている距離というのがハビタブルゾーンというわけです。(専門家ではないので間違っていたらすみません)
このハビタブルゾーンという言葉の根底には、生命の誕生には、適当なエネルギーと、水が液体で存在できることが必要である、という考えがあります。
しかし、私は思ったのです。それは、「我々人類」と同じような種が誕生する条件だろう、と。
宇宙には、まだ私たちが知らない物質や物理法則がたくさんあります。
地球と同じような条件の星は確かに少ないですが、もしかしたら、水を必要としない種族や酸素を必要としない種族が、我々の常識を超えた物理法則によって誕生する可能性はないのだろうか?
そういう考えに至った時、私の小説テーマは完成しました。
「ハビタブルゾーン」という考え方自体へ疑問符を投げかけることがこの作品のテーマです。
そのため、副題がhavitable zoneなんていう一見関係のなさそうなものになっているという訳なのです。
話は変わりますが、この話を読み終わったあと、是非タイトルとあらすじをもう一度読んでみて下さい。きっと最初と違った感じを抱くはずです。
アイザック・アシモフは著作で、単に宇宙船や宇宙人が登場するのがSFではなく、価値観の転倒による驚きがあるのがSFだと述べています。
私の小説もそれを目指して書かれています。
皆さんの価値観、ひっくり返せているでしょうか?