主人公の壮太視線で進められないという理由で、書いたはいいもののお蔵入りになった『美少女ギャルの罰ゲーム告白…』第3章 第7話と第8話の間に入る、芽衣と祐奈のお話です。
第3章の第7話までを読んだうえでお楽しみください。
「祐奈ちゃん」
お兄ちゃんを待ちながらクッキーを食べていると、声がかけられた。声をかけてきたのは、お兄ちゃんの彼女の芽衣さんだった。このクラスの他の人と違って異装はしてない。
とりあえず机の上を片付けて、手招きする芽衣さんの方へと向かう。
「壮太着替えてくるっていうから、ちょっとね」
「いいですよ」
通されたのはいわゆる裏方というところ。お兄ちゃんがあの格好からいつもの姿に戻るまで、それなりに時間がかかるから、表じゃなくこっちで待っててとのこと。裏方は想像よりだいぶ広いし、端の方には椅子と机が2つずつ置かれた休憩スペースまで用意されている。私はその休憩スペースでお兄ちゃんを待つことになった。隣には芽衣さんも座っている。
「あの、芽衣さんは、執事になったりしないんですか?」
「私は厨房担当だからしないよ」
「なるほど」
なんで、お兄ちゃんは厨房担当じゃないんだろう? まあ、どうせ碌な理由じゃないんだろうけど。
「そういえば、お兄ちゃんと付き合い始めたんですよね」
「ああ、うん。お付き合いさせてもらってます。私から言うべきだったよね」
「で、ですね、聞きたいことがあるんですけど」
「えっと、何かな?」
「芽衣さんはお兄ちゃんのどこに惹かれたんですか?」
「や、優しくて、カッコいいとこ。あとは、とりあえず文句言うけど、やることは人一倍やってるとこかな」
ふむふむ、私と同じくらいお兄ちゃんの事をよく見てるんだなぁ。
「お兄ちゃんの事、よく見てるんですね」
「かれこれ1年くらい私の片思いが続いてたからね」
「1年前ってことは文化祭ですか?」
「まあ、半分正解。実行委員で一緒になったんだよ。そこで、文句言いながらもずっと作業してる壮太を見てたらね。本人は全然覚えてなかったけど」
「なるほど」
お兄ちゃんが、毎日パソコン持って帰ってきて、作業してたりしてた、あの文化祭実行委員会に芽衣さんもいたのか。じゃあ、お兄ちゃんが、実行委員には俺と同じように、押し付けられた仕事してる奴もいるし、っていうのは芽衣さんの事だったのか。改めて、芽衣さんを見る。
少し派手だけど、凄い綺麗で、お兄ちゃんでつり合いが取れてるかっていうと微妙だけど、お兄ちゃんの事ちゃんと見てるし、引っ張ってってくれそうだし。
「ふつつかな兄ですが、よろしくお願いします」
「いや、そんな、寧ろ私の方こそ、よろしくね」