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断熱圧縮についての補足

 本編では熱エネルギーモデルを『部屋の中にいる発熱体』と例えました。
 しかし、科学的には――

 熱エネルギー ≒ 熱振動 ≒ 原子の振動

 というのを、まず踏まえるべきです。
 そして先に最低温度を――

 部屋の中に、一人も発熱体がいない状態

 と定義するべきだったりも。
 ちなみにマイナスの温度は存在しません。
 どっちむきだろうが原子が振動してれば、それはプラスです。
 なにより「発熱体がマイナス――原子がマイナスに振動しているって何だよ?」となってしまいますし。
 勘の良い方なら察したかもですが……この断熱系は『絶対零度』を導入して考えないと、色々とバグります。
(驚くべきことに古典科学では、マイナスの温度が定義できないのです!)

 そして0℃は絶対温度表記で273.15Kですから――

 10畳の部屋で、2731人の発熱体が暴れている状態

 と表現されます。
 これが1/10へ圧縮されると、一畳あたりでは2731人ですから――

 なんと2457.85℃!

(現実には圧縮した速度なども影響するし、ここまで劇的変化はしない。が、イメージモデルと同じく反比例はしている)
 そして断熱膨張の場合、10畳を100畳へですから――

 一畳あたりは27.31人、つまり約245℃ほど冷えた

 となります。
(やはり実際には、もう少し緩やかな変化)

 まれに断熱圧縮を利用し、溶鉄などしている作品がありますが――

 おそらく説明されていない『何か』があります。

 確かに適当な熱源で温めた気体を、溶鉄に必要な1600℃以上へ熱を偏らせることは可能です。
 しかし、仮に1/10へ圧縮した場合、それは10気圧の状態なわけで――

 超高熱かつ超高圧なまま操作

 ということになります。
 あるいは、高熱へ偏らせた後――

 なんらかの触媒へ、熱の均一化を利用して熱を移す

 必要が。
 もちろん、これは物凄いロスに!
 さらに繰り返す前提だと、すぐに物理的限界へ到達してしまいます。

 実際、断熱圧縮を利用した溶鉄炉などは構想されていて、学者先生が研究してらっしゃいますし、最先端の炉では部分的な活用もされているようです。
 が、まだまだ完全な実用には程遠く!

 実用が成功している範囲でいうとエアコンや冷蔵庫、エコキュートなどの湯沸かし器ですが――
 それらですら、ここ百年で驚異的進化を!

 現在の最先端 > 昭和・平成期 > 大戦機 > 工業時代突入 > 手工業 > 転生者が作らせた製品

 でしょうから、いま現在から七世代ぐらい前の技術となります。
 集積回路の技術で例えたら、真空管レベルでしょうか?


 また溶鉄の場合、「そんな超高温を、どうやって捕まえておくのだ?」と御馴染みの問題が。
 ……ようするにコークスと耐熱建材を使った方が手っ取り早い。


 最先端のエコキュート系の場合、使った電力に対して5~60%を利用――お湯を沸かせられます。
(これでも電熱器などの数倍。効率300%などを謳っている場合は、この比較)

 しかし、何らかのパワーソース――火力、原子力、風力など――から50%の力を抜き出せたら、それは超高効率なシステムと見做されます。

 なので「風車から超高効率でパワーを抜き出し、それを50%の効率で熱変換した」が理論値25%の論拠です。

 そして効率1~2%でも冷凍庫としては成立しちゃうんですから、この技術のぶっ壊れぶりが分かって貰えたり?

 ちなみに作中では割愛しましたが、熱媒体の塩水へ氷点下の熱を移し、金の針金を伝わらせて冷凍室へ運び、内部の放熱板で冷やしています。
 昔の1ドア式冷蔵庫と同じ仕組みですね。
 熱媒体が塩水なのは凝固点を下げる為(飽和食塩水で-21℃に)
 内部が黄金製なのは錆対策と、優良な熱伝導を見込んで。……もちろん値段を跳ね上げる目的でも。
 またS〇NYタイマー的な仕込みもしていて、分解すると元に戻せないし、無理させるとすぐ壊れてしまいます。
 リュカ的にはガイウスの代で失伝させたかったりも。

蛇足

 現代の工業力なら、人造温泉ユニットも実用可能では?
 一馬力程度の小さな水車でも、効率25%なら毎時8リットルのお湯が!
 つまり、常に家族風呂一杯分が湛えられて!?

 逆方向で現代工学の粋を集めれば、二桁台の馬力な水車や風車も!
 もう本物の人造温泉が!

 ……いけると思うんだけどなぁ。

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