『夜の列車と少女の横顔』の中で描かれている美術の世界。
少し専門的な言葉も出てきましたが、今回はそのいくつかを簡単に紹介したいと思います。
【高校の美術科】
国内に数校存在する美大進学を目指すための学科です。油画、日本画、彫刻、デザイン等、それぞれの美大入試に必要な実技のスキルを身につけるカリキュラムが組まれています。
【デッサン】
鉛筆や木炭を使って、モチーフ(対象物)の形や光の印影を描くことです。素描(そびょう)とも呼ばれ、絵画の基礎力を養うために行われます。
季節や時間帯が変わっても安定した自然光環境で描くため、北側に採光窓を設けた「デッサン室」を設備として持つ学校もあります。
【画用木炭】
木の枝を蒸し焼きにして炭化させたもので、デッサンに使われます。鉛筆よりも濃淡を表現しやすく、油画科や彫刻科の入試で使われることが多いです。現在の入試では木炭以外の画材の使用も可能になっているようですが、物語の時代背景を少し過去としているので、美術科では木炭デッサンを行っている設定にしました。
【イーゼル】
絵を描くための画面を載せる画架(がか)のことです。
【カルトン】
デッサンの際に用紙を固定するための画板です。
【ヘルメス像】
ギリシャ神話に登場する、神々の伝令を務める守護神の像です。異界を繋ぐ者、また、英介が乗り越えようともがく現実の象徴として、物語の冒頭に登場します。
【ベルヴェデーレのトルソ】
男性の裸体の断片的な彫像で、獅子の皮の上に座るへラクレスと言われています。堂々として圧倒的な存在感は、英介がライバル視している同級生「新関」の象徴として登場します。
【アリアス像】
ギリシャ神話に登場する女性、アリアドネの像です。微笑んでいるような、悲しんでいるような、憂いのある表情をしています。英介はこのアリアス像に列車で出会った少女「栞」の面影を重ねて見てしまいます。
物語の中で使われる言葉が、登場人物たちの心の動きと重なって見える瞬間があれば嬉しいです。
美術を通して描かれる英介たちの世界を、これからも見届けていただけたらと思います。