見てしまうのがもったいなくてなかなか視聴できずにいたアニメ『平家物語』を見終わりました。良かった、すごい良かった。
駆け足ながらもおさえる部分はおさえた、初心者に優しくマニアにも満足できる仕上がりだったのでは、と思います。頼朝にはうるさいワタシもあのキャラはツボでしたし、知盛と重衡びいきなので見せ場が多くて嬉しかったです。
作家によってキャラクターが異なる徳子も共感度の高い人物になってましたね、早見沙織さんの落ち着いた声音が良かった。
生きながらにして六道を見たと語る徳子。これってなにも極端な経験ではないのですよね。そのときどきで六道をいったりきたりする、それが人の境涯です。
「永遠なんてないとしたら この最悪な時代もきっと続かないでしょう」
そう歌うOPも素敵でした。この歌詞も現在に投げかけるものがあります。この曲だけで泣けます。
また、ハイライトシーンでの琵琶の弾き語りが圧巻でしたね。アレンジを加えながらの古典の素晴らしさを味わえました。
随所に登場する今様もいいエッセンスで。ただ個人的に、「遊びをせんとや~」の節回しは、大河ドラマ「平清盛」のが好きなので微妙な気持ちになりました……
『天山の巫女ソニン2 海の孔雀』菅野 雪虫∥作(講談社)2007/02
シリーズ2作目。前作よりも人の心の動き、国と国との関係の難しさや支配者階級の為人や心構え、なんてものがより深く描かれています。主人公の行動も頼もしくなったような。
このお話の主人公はとにかくフラット。彼女の物事の受け止め方が素直だから、彼女の目を通した描写もフラットで、それが読み手にとっては深みになるのかなって思います。
ところがそのフラットさ=欲のなさが危ういことでもあるようで……。引き続き読み進めたいシリーズです。
『シェーラ姫の冒険下』村山 早紀∥著 佐竹 美保∥絵(童心社)2019/03
大団円を迎えた物語。はー、ヨカッタ。本当にヨカッタ。悲劇といえる展開も多くて、オトナでもハラハラドキドキ、そして一筋縄ではいかないキャラクターたちで、面白かったです。
砂漠が舞台っていうのが個人的にポイントが高くて、おとぎ話のモチーフをふんだんに取り入れつつオリジナリティの強い世界観になっているのは、羨ましいというか、こんなふうにできたらって思いました。
サウードが良かったですー、サウード。こういう適役って重要ですねー。うーん。
『御社のチャラ男』絲山 秋子∥著(講談社)2020/01
リレー方式の証言でひとりの人物を浮き彫りにしていく、一度はやってみたいやつ……と思いきや、チャラ男だけにフォーカスしてるわけじゃないので群像劇的な感じでした。でも充分おもしろい。
とある食品会社に集う人々が語るのは世代やジェンダーや性格的な溝であったり、社会にふつうにあるグレーゾーンだったり。
〈人間の心の内側には、どうしようもなく残忍で野蛮なやつが潜んでいる。どんな善人だろうが、上品な顔をしていようが、鬼や変態や差別主義者を心のなかに飼っている。そういう人格は、不安を食って太り出し、ゲートに納まった馬みたいにガタガタ暴れている。ゲートが開いて走り出す時を待っている。やつらは危機的状況に飢えている。カタストロフィを見たいと叫んでいる。〉(p263)
すかっとするタイプのお話は楽しいですけど、自分では言葉にできないもやもやを浮き上がらせてくれるお話だって面白いです。
このお話は、最後になんかいい感じにまとめちゃってて、個人的にはこういう落としどころはなくてよかったのにと思ったのですけど、はっきりしたラストにしないとなのかしらーとか。悩ましいです。
『保健室のアン・ウニョン先生』チョン セラン∥著 斎藤 真理子∥訳(亜紀書房)2020/03
この作者さんの短編集を数冊流し読みして、いい意味でライトで、女性が思わず手を伸ばしちゃうようなポップな装丁でそろえてるあたりも、ターゲットがはっきりしてるなぁと感心したのですよね。で私は長編をじっくり読みたいのでこの本を借りてみたのですけど。
文章も展開もテンポがよすぎて最初は読みにくかったです。でもでも慣れてきたらすごく面白くて。なんでこんななるの!?っていうストーリーはもちろん描写がもう面白い。
笑っちゃって、泣けるところもいっぱいなのですけど全体として軽やか。
コミカルに明るく仕上げるならテンポよく、なのですね。テンポ、テンポ~