『女たちが究めたシルクロード その国々の生活文化誌』(東洋書店)
ソ連崩壊後間もない1994年から10年にわたり、詳細な地図さえ入手困難だった当時のシルクロードの国々を旅した女性研究者たちによる調査レポート集です。カラー写真も豊富に掲載されていて、現地の人々の日常生活の様子がよく分かります。未だ政情が不安定で紛争やテロ事件も起きている中、女性の視点による日常のレポートは貴重です。
わたしたち日本人があたりまえに享受しているきれいな水のありがたさに気付かされたり、大家族で支え合う素朴な暮らしぶりだったり。わたしたちが資本主義、物質主義の恩恵をいかに受け、その代わりにいかに大きなものを失ったのか。
先進諸国が大きなしっぺ返しを食らっている今、これらの国の素朴な人々の生活はどのように変化していくのか。変化しないのか。
世界中のすべての人々が平和に暮らせる日はくるのか。事件や紛争と隣り合わせの日常を見つめながら、考えてしまいます。
ところで、キルギスには「子どもは天使である。子どもの翼は足が長くなるにつれて、短くなる」ということわざがあるそうです。最近、息子のつるつるだった足にうっすらすね毛が生えてきたのがショックな私は、わかるわーと頷きまくりなのでした。
『馬車の歴史――古代&近代の馬車――』川又正智編著(神奈川新聞社)
馬の博物館によるブックレットだけあってものすごく専門的です。100Pにも満たない薄さなのですけど内容は濃いです。特に後半は、宮内庁車馬課にお勤めだった方に、馬車の操縦や馬の調教について体験談を聞く対談になっていて、その経験から古代の馬車について考察したりしていて面白いです。
こんな細かな描写を作中ですることはないだろうとは思いますけど、ディテールが分かっているかそうじゃないかは大きく違いますからね。勉強になりました。