ショートショートのなる木(
https://kakuyomu.jp/works/16817330654849646944 )を更新しました。
元々は何らかの映像作品を作ろうとしていたと思われる当時の初期稿を修正していきました。
2020年の1月頃のものです。
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「花と暮らす少女」
プロローグ
薄暗い森の奥。木の枝を十字にしただけの粗末な墓地が並んでいる。
墓地に少女が一人座り込んでいる。地面に刺したスコップを背に、目の前の鉢植えを見つめている。鉢植えの花(青)はほのかに発光している。
花が咲くと誰かの声が聞こえる。
『楽しみにしているよ』
花は再生すると枯れ、光が失われた。少女は項垂れる。
1
薄暗い部屋。木造で、物は少ないが壁には絵が飾られていたりする。黄色の花の前でそわそわする少女。
こほん、と喉の調子を整えて花のつぼみをちょんちょんと指でつつく。花はうっすらと光を纏った。
少女は「~~♪」と歌を歌う。
部屋にはいくつかの鉢植え。全部花のつぼみが光っている。また別の花を顔の前に持ち上げる。
2
崩れた街並み。コンクリートや木造建築だが所々緑に浸食され崩れている。誰もいない街並みを少女が歩いている。家々の前に鉢植えが置いてあるところがある。
それを通りがかりに少女が指でつついていく。
街中にはいつしかたくさんの話声がするようになった。
「おはよう」「もう野菜に水はやったの?お花にも忘れちゃだめよ」「今日のごはんは何にするー?」「もう遅いんだから帰らなきゃダメだろう」「『これしかいないと合唱は無理なんじゃないかな?』 『できるよ!絶対』」「楽しみね」
様々な声が木霊する街並み。少女は楽しそうに歩く。
3
空けた会場のような場所でたくさんの花をつついていく少女。
音が段々と曲のようになっていく。
少女が足でトントンとリズムをとって歌い始める。とても楽しそうな顔をしている。
クレジット(歌が流れる)
少女の目には客席にほほ笑む住民たちが見えていた。ぱちぱちと拍手をしている。だが、実際には少女以外には誰もいない。
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