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自転車乗りと二人乗り+ボツ

『自転車乗りと二人乗り』
 https://kakuyomu.jp/works/16818023212140192269

 草森ゆき様の誕生日自主企画、
『犯罪者が出てくるブロマンスを書いて欲しい』参加作品。自転車泥棒が出ます。男子高校生と土手で二人乗りします。

 難産だった。

 犯罪、犯罪か、どんなのあるっけと頭を抱え、殺人は絶対被るな、でも死人出た方がいいのかな、とかとか考え、何故か未成年略取ものの序盤ばかり書いて、いやこれなんか違うだろとなり、植物が好きな方だから違法植物を育ててる人、いや生えてくる人良くね? と迷走し、死体埋め……いや埋め部シリーズと被る! あれが至高! とやめて、あーあーあーあーとなった末に自転車泥棒に落ち着きました。ちなみに怪異の違法売買とか強奪した親友の骨を海にばらまくとかも考えた。
 実は、草森様は去年、『死別ブロマンスを書いて欲しい』という自主企画を立てられていて、それに参加できなかったのがすごく悔しかったから、今回企画立てて頂けたのすごい嬉しく、死別いけそうならやりたいとか思ったんですけど、死別、死別……。
 悔しかったあまり、わてが書いたブロマンス全部死別してるんすよね。そろそろ死別しないブロマンスを書きたく、死別しないブロマンスになりました。

 いつも素敵な作品を書いてくださる草森様。これからも読ませて頂けることを、楽しみにお待ちしております。
(あと、楽しそうな自主企画あったら参加したいです)

 ちなみに下のはボツです。
 仲介人と運び屋の話。
 黒本はリボルバーが大好きなす。

◆◆◆

 八畳一間のアパートの一室、部屋の中央には黒いソファーが一台、そこに腰掛ける黒髪長髪の男が一人、その足元には黒い旅行鞄が一つ。
 それが、蓬生《よもぎ》青年が許可を得て部屋に上がり、最初に目にした時の状況だった。
 一人掛けの黒いソファーに深々と腰掛けるその男は、乱れ知らずの艶やかな黒髪を一つに束ねて横に流し、口元に笑みを浮かべ、狐を思わせる細い目を静かに蓬生青年に向けている。彼が口を開くのを待っているのだろう。
 視線が重なることに妙な居心地の悪さを覚えた蓬生青年は、男が身に纏う黒いシャツの胸の辺りを見つめながら、恐る恐る口を開いた。

「ご連絡、ありがとうございます。本日は、その、どちらに何を運びましょうか」
「……今夜はね、海に行ってほしいんだよ」
「……海、ですか」
「そう。海」

 男はそこで徐に足を動かしたかと思えば、黒い旅行鞄を蓬生青年の元へと蹴り飛ばした。フローリングの床を僅かに傷付けて、旅行鞄は蓬生青年の傍に届く。彼は動かない。まだ、どこの海に運べばいいのかを聞いていないから。顔を下に向け、男の発言を待つ。
 男は足を組み、静かに蓬生青年を見つめるばかり。再度訊ねたくなるが、男の望まないタイミングで発言をすることは許されていない。そんなことをすれば、どうなるか、知らない蓬生青年ではなかった。
 冷たい風が吹き荒ぶ日ではあったが、蓬生青年の額にはうっすらと汗が浮き始めており、その頃になってようやく男は口を開いた。

「逗子まで行って。日付けが変わる頃に取引相手が来るだろうから。今回はお薬じゃなくてレンコンだから、間違っても海にぶちこまないでね? 使い物にならなくなっちゃうから」
「気を付けます」
「頼むよ。きみ一回やらかしてるから、毎度心配なんだよ、ぼく」
「……はい」
「ぼく専属の運び屋だって自覚はあるよね? きみの失敗はぼくの失敗。ぼくの顔に泥を塗らないでよね、きみ」
「……もちろんです。全身の部位を余す所なく売り飛ばされそうになっていたのを、左手の小指のみで済まして頂き、職と住居まで与えてもらったんです。貴方には──常磐《ときわ》さんには頭が上がりません」
「それで良し」

 早く行きなよと優しく手で追い払われ、蓬生青年は旅行鞄を手に取るなり、素早く部屋から出ていった。

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