日露戦争の時ロシアのバルチック艦隊が日本に向かう途中で誤って英国の漁船を砲撃し沈没させてしまった。
死亡したのは1人の漁民だけで他は救助された。
しかし、この知らせを聞いた時の英国王エドワード7世は激怒した。
「ロシアの軍艦が日本に向かう途中英国の港に寄港することは許さん!」
読者の中には「それが何だ?」と思われるかも知れない。
英国の港に寄港できないからといってそれで何が困るのか?
それが...、である。「英国の港」ということは世界中の重要な港のどれにも泊まることができないということを意味する。
当時英国は世界の4分の1の陸地と7つの海を支配していた。
7つの海とはすべての海である。
英国の許可がなければどの国の船もアフリカ、インド、シンガポールなど、大型船が停泊できるような港に入ることができない。
つまり、英国の港に寄港することを許さない、と言われてしまうとバルチック艦隊は日本まで延々と補給も兵員の休憩もなしで航海を続けなくてはならないことになる。
そのため、バルチック艦隊は山のように食料や燃料を積み込んでトコトコと日本までやって来た。
もう艦長も船員もへとへとになっているので、元気いっぱいやる気満々の日本の連合艦隊の敵ではなかった。
今英国は植民地を失い、エドワード7世の時代のような権勢を振るうこともない。
しかし、世界の主要な船舶は船舶保険に入らないとどこの国の港にも入ることはできない。航行はできるかもしれないが、積み荷を持っていってもそれを降ろすことができないのでは意味がない。
そして、その船舶保険の発行権を一手に握っているのが英国のロイズ海上保険会社なのであり、その船舶保険をどこの国の海上保険の会社も使用している。
私は世界中にどれくらいの船舶があるのか知らないが、いずれにしても世界を貿易目的で航行する船の保険を一手に扱えるというのは莫大な富をもたらす。
英国が植民地を失ったとはいえ、今でも大国でいられるのはこうした過去の遺産があるおかげである。
翻って今の日本の情けない外交態度はどうだろう?
日本の船がペルシャ湾やマラッカ海峡などで海賊に襲われても海上自衛隊が救援に向かってくれるわけでもないし、そうしたことが起きないよう護衛を付けて守ってくれるわけでもない。