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『その本の中には、私の知らない私が居ました/秀才少女は、学院の天才が気に入らない』完結にさいしてのあとがき

 皆様、いつも私の作品を読んで下さり、本当にありがとうございます。日々、嬉しく思っています。

 今回は、10万字超えの作品としてはカクヨム様ではじめて投稿そして完結まで出来た、『その本の中には、私の知らない私が居ました/秀才少女は、学院の天才が気に入らない』が本日完結を迎えたので、あとがきとしての近況ノートです。

 この近況ノートは、『その本の中には、私の知らない私が居ました/秀才少女は、学院の天才が気に入らない』――以下、長いので「わたしら」と略します――最終話までのちょっとした完走した感想や裏話、これからの話を書くつもりです。

 ということでまず、「わたしら」は異世界転生モノです。が、主人公はその異世界に住む女の子シオンなので、最終回まで「異世界転生」という言葉は一つも出てきません。というのも、今回は「学院恋愛」と、『たとえ貴女がここにいないとしても』という以前の作品でやったような、「想い人への出会えなさ」を書きたくて物語を作っていました。ですので、あくまで「シオン」の、アカネとの物語であって、異世界転生モノ――「アカネ」の、シオンとの物語では、今回はなくて、それは「コレカラのユメガタリ」以降、〈死んだ意志〉たちとの戦いになっていきます。
 ――と、全編まるっと「序章」を意識して書きつつ、その〈死んだ意志〉たち打倒作戦を書く予定は今のところは、ありません。シオンの物語が書きたかったというのが一番おおきいです。

 もとは、5万字程度の中編にする予定でしたが、「シオン」の筆が思ったよりも進んだために、3倍ほど長くなりました。神獣や盟約、〈死んだ意志〉などの世界観は元々決めていたので、最初はどうやって5万字にするつもりだったのか……。

 シオンがアカネに対して、「忘れさせてくれ」と言ったシーン、あの場面本当はアカネがシオンの記憶を消す、シオンがその行動に後に憤る流れを考えていました。本当に、書く直前まではそうするつもりでした。けれど、「燈る、2人だけの星」を書きながら、シオンが耐えられないと思うようになり、それからアカネも、シオンとの3年が終わった後地上での戦いに戻り、二度と王国へ戻れないと知っているから、と。
 シオンの「忘れさせてくれ」という提案も、アカネがそれに了承することも、彼女たちを10数万字書いて来て自然とそうなりました。シオンが記憶を取り戻してからの場面の通り、ロッテやダンは同じ状況なら似た選択をしたと思っています。特にロッテは、ヒュッテとの関係にたどり着くまでにかなりつらい想いや選択をしているので、実際に実行するまで行くかはともかく、だったら忘れたいとよぎりはするかな……

 そして、シオンが忘れて、自分が書いた本を読んで、思い出し、あの日の場所で慟哭して。それからすぐアカネが戻って来たから、シオンとしてはすぐに再会できた、という流れですが……シオンはこの時に改めて自分の選択の重みを理解しましたし、アカネの熱を感じて、自分が「アカネを知らずに過ごして来た5年」に対して忸怩たる思いも抱いたと思います。確かに時間としてはすぐではあったけれど、あの瞬間シオンの胸中に降りかかった重みは5年以上のものがあったのではないかな、と。

 ミドリ先生について。ここは唯一の後悔ですが、もう少し登場させてもよかったかな、と……ただシオンは自分で書いている通り、自らミドリ先生と積極的に会話しにいくことはしていませんでしたし、「試験騒動」以降はアカネ一筋、24時間アカネアカネという日々になる関係、「アカネとの日々の記録」として書き残したかった場面ではミドリ先生はあまり登場しませんでした。
 やはり、作中の9割はシオンがアカネとの日々を忘れたいのに、忘れたくないという矛盾した気持ち、葛藤から書かれた私小説の形を取っていて、かつシオンが書きたい内容がアカネとの出会い、恋人になるまで、アカネの秘密を知るまで、というものなので……どうしても組み込めませんでした。

 その代わり、シオンとアカネが地上へ旅立つ日にはたっぷり挨拶を交わしてもらいましたね。

 ダンとアレンについて。彼らの物語も書いてみたくなりますね……クールキャラっぽいけど意外と抜けたところの多いアレンと、軽そうに見えて根がとてもまじめなダンのカップルは書いていてとても楽しかったです。
 それからロッテとヒュッテも、シオンとアカネの関係性の変化に一役買ってくれましたし、なによりハンナ、アイリ、ロッテの3人はシオンの成長に非常にかかわってくれました。正直、ハンナとアイリが居なかったらシオンはアカネに謝れたかどうか……ロッテとも、恋愛の相談やお互い肩の力を抜いて離せる間柄として大人になってからよく支えてくれています(これは描ききれませんでしたが、ロッテはたまにシオンの寮まで来て飲んだりしてます)。

 ここまで、裏話と感想を書かせていただきました。
 最後に、「わたしら」を書いていて、本当に楽しかったですし、読んでいただき本当に感謝しています。シオンという不器用な子が、アカネという大切な人との出会いをきっかけに、それまで切り捨ててきた人との関係を少しずつ進めていく、優しさと温かさと後悔のお話でした。
 私はこれからも百合、特に恋愛関係のお話を沢山書いていきたいと思っています。主に現実世界のお話を、「わたしら」や『S区崩壊境界線』のようにファンタジーなお話も(今プロットや設定を練っている長編はかなりファンタジー寄りですが)書いていきます。
 いつも読んでくださっている方、初めて読んでくださった方、少しでも見てくださった方、全ての出会いに感謝を。

 皆様、良い年末をご健康に過ごせますよう。

音愛トオル

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