https://kakuyomu.jp/works/16818093087794558040 にいさん
ぼくはにいさんを失って
わかりあえる人が誰もいなくなって
しまったんだよ
心を許せる人も通じ合う人もなく
夜ごと酒を飲んで自分を慰めて
いるんだよ
コンクリートのはざまで
ネオンに褪せた月を眺めながら
永遠に明かされることのない心を
もてあましているんだよ
………………………
小鳥の鳴き声が聞こえる。春かと思ったら、静かに、音もなく粉雪が舞っていて、山々も、畑も,ほんのりと白く雪化粧を始めている。その中にぽつんと後ろ姿の人影が佇んでいて、グレーのコートの肩のあたりを、降りしきる細かな雪がしだいに白く染めていくのである。
「狂気と風のレクイエム」より
「狂気と風のレクイエム」大好評(ウソです)連載中!