オールインクルーシブソファの中央に腰かけるオレは、右肩に茜、左肩に理緒をそなえていた。
具体的には、白のオフショルニットに紺のプリーツミニの茜と、黒のラフシャツ、デニムショートパンツの理緒……二人に両サイドから寄りかかられ、二人の体重にサンドされていた。
それぞれの柔い感触がオレの両腕にあるのは、さておき。
「茜、起きてるか」
「うん……なんとかね。ちょっと眠いかも」
秘匿性の高い国際手配ファイルを、右側にある110インチの超大型液晶スクリーンで確認、太腿の上のマウスでカーソルを操作しながら下へ下へとスクロールしていく。
「これを見る限り、東亜の伝説『暗黒物質』――特級魔法士『|王神美《ワンシェンメイ》』を支えるスポンサーは、オリジン社の中国支部だったのか」
「だと考えるのが自然かもね。さすが、世界最大の超能力機関。なんでもお持ちのようで」
「皮肉が過ぎる言い方だな。せめて世界的ガリバー企業だとか、あらゆる業界を占有する大資本企業だとかにしてやれ」
「同じことでしょ。科学、文化、経済、軍事、政治、最先端研究……全てを独占してる時点で、もう会社と呼ぶことすらご大層な見当違い」
「かもな。……で、そうなると色々懸念すべき点も多い」
オリジン社の権威を舐めると痛い目に遭う、と相場が決まっている。
たとえオレたちでも一筋縄ではいかないだろう。
「面倒だ」
「ね」
オレの右肩の上で、茜がスクリーンを見ながら共感の相槌を打つと、
「ふぇ……? それはだめ。だめだよ、とーやー」
オレたちの話し声で眠気を吹き飛ばしてしまったようで、左の理緒が謎の寝惚け声を発した。
「オレは何も言ってないぞ」
「え、あれ……? あ、そっか、あたしウトウトしてて……」
夢の中でオレが理緒に何をしていたのかは知らないが、彼女は顔を持ち上げ、眠そうな表情のままスクリーンを見た。
「すまない。起こしたか?」
「ううん、だいじょぶ」
理緒は茜の前でも甘声を隠さなかった。身も心も預けていると暗に示されているようでむず痒い。
「統也、それ誰の資料?」
「ん、ああ。これか?」
オレは逆スクロールし、平文化されたファイルの初期ページを示した。
「……王神美? 中華の特級魔法士の?」
「そうだ」