「死刑囚か」
閻魔大王は、審議名簿を見て嘆いていた。死刑囚にではない、犯行にだ。
「近頃、変化してきたな、世に放った人間たちの考え方の稚拙さが」
「はい。人と人との繋がりが希薄になり、孤立を感じ対人不安を覚え、自己顕示欲に陥り、他人より劣ると思われる事への原因を他人に求め、破れかぶれになり、自殺を図るが思考力の未熟さから未遂に終わる。自分への殺意がいつか他人から殺害されるのではないかとの理不尽な考えに及んでいます」
「怒りが持続し、攻撃性が自分に向くか他人に向くか分らぬ不安定さか…」
「そんな時に犯行の引き金となる出来事が起きます」
「それは本来、考えるべき時間を与えたもの。読解力が著しく低下していては望めまい」
「はい。自殺を考え留まった者は、その怒りを他人に向けるのです」
「嘆かわし」
「人の目を見て話す。全ての生き物に与えた眼の力による抑止は、腐った目には通じぬわ」
「目を反らす。嫌なことは避けて通る。その言い訳を用意する。この行動を玉ねぎを剥くように繰り返し泣き、その感情を恨みへと変化させてしまうのです」
「不満を溜め込み爆発させるか…」
「自分自身の怒りや偏った思考を社会と隔絶させた処で増幅させ、事件を起こします」
「社会との隔絶か…」