私が起きている時間に、旦那さんが帰ってきたら
物陰に隠れて「ワッ!」と驚かせたり、
ニーブラをくらわせたりする。
(ただし私がゲームや読書をしているときは「つー!(お疲れの意)」しか言わないのだが…)
もうかれこれ10年くらい同じことをしているのだが、飽きずにわたしだけが楽しんでいる。
だが、しかし。
今日はちがった。
鍵が回る音がすると、私はすっと立ち上がって玄関へ向かった。
「ただい——」
「待たれよ」
「え?」
「緊急事態である」
「うん」
そう言いながらも、旦那さんは「またなんか言ってら」といった感じで部屋の中へ入っていく。私はピタリとその後ろへはりついて、事態の深刻さを伝えようと必死である。
「我、小学校の入学のしおりを再読した」
「うむ」
「したらば!!」
荷物を置いた旦那さんは、手を洗いに洗面所へ向かう。まだ事の深刻さを理解していないようである。私はピタリとはりついて(以下略)
「たし算カード、ひき算カード、一枚一枚に名前を! 記入しなければならないと書いてある!」
「ええー!!」
ようやく事の深刻さを理解した旦那さんは、目を剥いた。インドネシアあたりの神様のごとく、目をポロリンと剥き出して驚いていた。
私はその反応に少しだけ満足する。
たし算カード、ひき算カードとは、いわゆる暗記カードのことであり、全部で4束あった。
「キサーマは、先に夕飯を食べるべし(自分であたためろ)」
「わかった」
「わたしはチョコを食べる」
もぐもぐ口を動かしながら、旦那さんは不安そうに尋ねてきた。
「一枚一枚、手書きしなきゃいけないの? 一枚一枚?」
「旦那くんよ、安心したまえ。わたしは文明の力を手に入れた」
「え、なに?」
「お名前シールだ!」
「おお!」
「わたしはたし算をやる。君はひき算をやるべし」
「御意」
わたしたちは、黙々とけれども時々、
大谷選手や足の裏がゴリゴリする話をしながらシールを貼った。
すると「ううっ…」と旦那さんが呻いた。
「どうした?」
「め、目が……」
「ムスカ大佐か!」
「しばしばする」
「それは仕方がない」
「ドライアイかな」
「いや……」
♪Happy(○´3`)ノ"┌iiii┐ヾ(´ε`○)Birthday♪
1つ歳を重ねて、オジサンになりました!
(明日だけどw)
おめでとー!!
——完。