ちょっと申し訳ないのですけれど、
これまで寄せてくださった素敵な作品の中で
今も私の心に残っている作品を、紹介させて下さい。
ずっと、心に棘のように刺さっていたのです。
なんで私はこの作品を推さずに済ませてしまったのだろう、と。
幸いにしてありがたいことに、
こちらの作品の作者様には、掲載の許可をいただくことができました。
掲載の基準などという点は敢えて申し上げません。
過去の企画に参加していただいた作品であること、そして作品の内容が全てでございます。
私の心に、今も棘としてあるいは、ぬくもりとして残っている、そのことが全てでございます。
過ぎた企画の内容を改めて紹介することに、一抹の不安もあります。
ですが、どの作品もすばらしい作品でした。
間違いなく、それだけは言えます。
自信を持って、おすすめできます✨️
こんな、出し忘れの宿題を恥ずかしげもなくまた再提出する私が悪いのです。
作品に罪はありません✨️
どうか、ご堪能下さい。
そして、味わって下さい。
◯青のポラロイド / 缶津メメ さま
https://kakuyomu.jp/works/16817330649845595822自分と同じ立ち位置の友人……だと思っていた。
でも、その彼女は自分の知らないうちに「普通」の女の子として生きていて、「普通」の女性として人生の階段を登っていた。
自分と同じ歩調だと思っていた、勘違い。……思い違い?
いずれにせよ、これで自分が「普通じゃない」、置いていかれたことが決定的となった。
さっきまで、話そうと思っていた内容がすべて恥ずかしいほどの上滑りで通り過ぎていく……。
そんな時、ふと足を踏み入れた非日常の異空間、異世界……?
立ち並ぶ、酒の自販機にタバコの匂い───。
自分の中に、違和感として持っていたよくわからないものが、形となって目の前に再構築されていく、快感と興奮……。
人とはどこかずれている、他人とは同じ気持ちになり得ない、歩調が違う───。
ずっと、抱いていた自分の中の未分化の感性。
それが、目の前の舞台表現という名の裸によって、自分の心に、腑に落ちた。
今はもう、失われようとしている文化の中に、感じたことのない感情を呼び起こす。これが、所謂「ライブ」の力なのではないでしょうか?
私自身、一度も立ち入ったことのない空間に存在する、非日常という名の異空間。
マイノリティは恥じることではない。
それは、誰にも侵されることのない、個性と感性。
◯駒井舞音は広告になりたい。 / world is snow さま
https://kakuyomu.jp/works/16818023213904175517光指す場所への憧れ───
私(天川)とは、ある意味正反対の感性の彼女……。
そんな彼女が目指したのが、生きたマネキンとも呼べる、あるカフェの特別な席。
なりたいだけじゃなれない、そんなのわかってる。
ダメ出しされる度に、内から湧き上がる……
反骨の精神と、偏執狂とも呼べるほどの情熱とこだわり。
冷酷に冷徹に、そして作為と目的と……そんな彼女に期待を寄せる、
客と店員の、女と男の、矜持と情熱のぶつかり合い。
華やかなりし場所に立つ(座る?)には、それ相応の覚悟と代償が必要になる。
それは分かっているけれど、この情熱……お互いに、只者ではない───!?
(※こちらの作品の作者様は、春とともに姿を隠し冬の訪れとともにまたカクヨムにやってくる、妖精さんのような方です。そのため、現時点では掲載の確認が取れておりませんので、予告なくこちらの文面を削除するかも知れません。今のうちに題名を心にしたため、お読みくださるようお願いいたします✨️)
◯モノポライズロマンス / 千鶴 さま
https://kakuyomu.jp/works/16817139555534484346もはや、失われようとしている、旧き良きミニシアターのある風景。
一時代を彩った、そんな場所と共に半生を生きた、ある男女の物語。
からからと鳴る引き戸に、売店のあんぱんに、色とりどりのひざ掛けに、
そして、かすかな音を立てながら回るフィルムと銀幕に───。
手触りと空気までをも感じさせる、その情景に……浸り酔いしれたい。
彼女の想いは、伝えられること無く……それでも、彼女をずっと支えてきた。
物語の傍観者の私には、切なさを……。
それでも、彼女自身はそれを歓びにして今日まで生きてきた。
刻まれた月日の年輪は、細やかに描かれた情景の端々に
あざやかに見て取れます。
もしかしたら、別な物語があったのかも……。
でも、その答えは彼女の心のうちにだけある。
この、切なくも美しい過ぎ去ろうとする時間を
創作物語ではなく、心の風景として……
どうか一緒に見送りましょう。
◯錯覚幽霊ライン / あかいあとり さま
https://kakuyomu.jp/works/16818093075763768725不可思議な現象が起こった時、
それを自分の中でどう処理するでしょう?
誰かに話す、ネットで調べる、気にしない……。
彼女は、そんな偶然が消えてしまわないように、敢えてその不可思議に「乗る」ことを選んだ。
血族と姻族、その心の動きの類似と相違。
大切な人と死に別れるということ……。
縁の遠い者にとっては、それは世間にありふれたよくある話。
しかし、当事者にとっては……簡単に割り切れるものではなかったのです。
気まぐれで始まった、不思議な物語。
そこに、現実が口を開けた時……
感情のぶつかり合いはどこまでも残酷に深淵を覗かせます。
「夢でいいから───」
二人の「家族」は、そんな微かな糸に縋り……やがて現実に還っていく。
法要に訪れた南信地方の景色の中に、何故か懐かしさと寂しさを感じずにはいられない……。使い古された表現で恐縮ですが、いつか何処かで見た景色、あるいは銀幕の中で見た風景を呼び起こすようで、懐古的な切なさに胸が締め付けられるようです。
企画最終日の前日~当日に舞い込んできた、ようやく選考に踏ん切りをつけようとしていたところに差し込まれた、ずしりと重い一作──最後の最後でまた悩まされた、罪で素晴らしい一作でした。
◯「オ・ソロイ」 / 朝吹 さま
https://kakuyomu.jp/works/16817330660350778989「様々な」事情を持つ女たちの駆け込み寺。
そんな施設で育った、少女の物語。
トケイソウの描写は、不気味さと卑猥さの間のほんの少しの隙間にある美しさをすくい取ったかのような、色情をもたらしてくれました。
立場的には、苦しいものであったであろう少女たち。
しかし、主人公の園子はそれらを深く理解すること無く大人になった。
それは、幸運だったのか……それとも。
愛の形に定義はありませんが、それは決して安易に白日の元にさらしてはいけない、秘められたものでもあったはず。多様性、などという一括りで済ませるには……世の人間の感性と感情は、まだ成熟の域に達していないと思わざるを得ない。そんな、私たちの浅はかさまでをも感じてしまいそうになります。
彼女の心は、どこまでも霞の向こうではっきりと掴むことが出来ない。そんなおぼろげな中にある、明確にされていない心を……呼び名のない感情を、どうかそのままに味わって下さい。
今回、ご紹介させて下さった皆様、本当にありがとうございます✨
改めて、作品をもう一度読み返してみましたが、記憶の中にあった感情がより鮮明に、感触をもって感じられるようでした。
わたしの賞を進呈することが作品の優劣を示す事
ではないということは何度も申し上げてきましたが、それ故に、ずっと……
「自分はなんでこの作品を推さずに終えてしまったのだろう」という気持ちがずっと消えずにおりました。
間違いなく、わたしの心を掴んで離さなかった物語たちです✨
素敵な作品をありがとうございました✨