*いすず視点
学校からの帰り道、たまにはと思って通学路を歩いていた。普段はマネージャーさんが迎えに来てくれるんだけどね。
気分よく歩いていると、
「ん? あれは」
家の近くで、見覚えのある人が近所の家の塀をジッと眺めているのが見えた。
「お兄ちゃん何してるんだろう? 何かいるのかな?」
不思議に思ってゆっくり近づくと、お兄ちゃんが何を見ていたのかわかった。
「にゃー」
そこには可愛らしい野良猫が座っていたのだ。
「(あっお兄ちゃん、猫を見ていたんだ)」
お兄ちゃんは野良猫をジッと見つめていた。
やがて、猫に向かって何かを喋りだした。
「にゃー」
「にゃ?」
「にゃーにゃー」
「(えっ? お、お兄ちゃんが猫語を話してる!?)」
お兄ちゃんの横顔は、それはもう幸せそうにみえた。普段見ないお兄ちゃんの姿。
「にゃー」
「にゃーにゃー」
「……(きゅん)」
お兄ちゃんの猫語を聞きながら、私の胸はときめいていた。
「(お兄ちゃんが可愛すぎる! やばい、この可愛さを一生保存しなくちゃ!)」
慌てて私はスマホを取り出すと、お兄ちゃんが猫語を話している姿を録画した。
「(はぁ〜かわいい、これで秘蔵フォルダーがまた一つ増えちゃった。今日歩いて帰ってきてよかった!)」
その日の疲れが吹っ飛ぶくらい、私は満足していた。
「ふふっそれに」
お兄ちゃんが猫好きとしれてちょっとした収穫だった。
「これでお兄ちゃんをからかえる材料が、また増えちゃった♡」
ちなみにその後、いすずが猫耳&メイド服で兄をからかったのはまた別の話。
おしまい