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夏濤(なつなみ)についてのメモ

 数年ぶりに文章を書いた。もともとは他の投稿サイトの企画で書き始めたもの。
 テーマはホラーで駅を用いた内容。A4サイズで5枚ほどに収めるつもりで書いてみたが、できあがると10枚を超えてしまった。
 当初は男の遺書で始まる予定で、自殺の理由を母に知らせるためだった。書名も「駅の魚」。知人の女が鉄道自殺するのを見た男はショックで後追いするという話。
 この女は生き別れの妹で、それと知らずに男は恋愛感情を抱く。でも妹は知っている。兄妹の関係性が話の軸になるわけだが、兄が妹を好む理由の裏付けとして非日常的なものが欲しかった。
 コロナ禍の非日常性にあぶり出されて、長年の負の感情が表れる。負の感情とは男の家庭環境。母子家庭でアンバランスな感情を母に抱いている。
 母に似た女を好きになるというのは珍しくないが、その投影を妹に求めるのは無理を感じた。ここで妹を姉に変更した。
 姉弟の連続性を描写するには紙数が増えてしまう。なるべく少なく書きたかったので、姉は不詳とした。もともと母への遺書で始まっていたのは、妹との関係性の終着点が母だったからだ、と思い直した。
 夏のホラーということで姉を幽霊とし、生前の情報は極力省いた。他の投稿サイトでは無人の駅、気がつくと見知らぬ駅にいた、実話と称している体験記、待合室に閉じ込められるといった内容に偏っていたので、それと被らないように絶叫や流血も省いた。
 怪奇小説は読まないので、横溝正史のような家族の連続性が話の軸になるものをイメージしたが、ぼんやりとした結末になってしまった。戸籍を調べて姉を追跡するという手段もあったかもしれないが、これも省いた。専門家に質問したものの転籍、除籍、結婚の有無でかなりややこしい。
 書名を夏濤にしたのは夏の季語である、電車が駅に飛び込んでくる様が波のようである、それに轢かれて姉弟が離別(或いは冥婚)するのが安寿と厨子王に似ていなくもないという意味合いがある。しかし関連付けはしていない。キャッチコピーの短歌もその名残。
 総じて、あまりよろしくない出来になってまったのは悲しい。「応援」下さった方、ありがとうございました。

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