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コロナ騒ぎの中で

 皆さん、得体のしれないウィスルが世界的に蔓延する中、如何お過ごしでしょうか?
 自分はマレーシアの自宅で、毎日忙しく仕事をしています。オフィスワークより忙しいのではと思えるくらい、非常に厳しい環境に置かれています。
 テレワークになってから、さすがに外国人は様々なインターネットツールを持ち出して、コミュニケーションについては全く問題ない環境を整えてしまいました。コミュニケーションのプラットフォームがあり過ぎて、どれがどれだか分からなくなるくらいです。
 ついていけない、これは過剰だ、などと思いながら、ついていくしかありません。
 例えば誰かが携帯へ電話をかけてきて、通話最中にまたコールが鳴る。最初の通話を終えて着信履歴を確認しても、それがどこにも見当たりません。
 はて? あのコールは幻か? などと考えて、はっと気付きます。
 通常コミュニケーションツールはパソコンの上で使用しますが、自分は携帯にも同じアプリケーションを入れてシンクロさせているのです。すっかり忘れていました。
 コールは、それらツールの会話機能による電話です。しかも留守番電話機能があり、音声メッセージに加えてご丁寧に文字変換されたテキストメッセージも届きます。
 そう、知らないふりをしようと思っても、逃げられません。
 しかもみんな仕事をしているふりをしたいのか、とにかくメッセージの嵐です。具体的な仕事をする暇がない。コミュニケーションが仕事であればいいのですが、これのほとんどが一銭も金を生みません。
 もちろん方針を伝える、指示を出す、現状を確認する、ということでは便利ですが、それ以外の余計なことが多すぎます。そして肝心なことでは応答なしのだんまり。みんな面倒なことが嫌いです。僕も嫌いです。もちろん僕も、だんまりを決め込みたい……。
 こうした顔を合わせないコミュニケーションで、実際に仕事が上手く運んでいるかと言えば、これが全くだめです。電話やメッセージやメールでは、「オッケー、ノープロブレム」と調子よく言うものの、せいぜいそのことを覚えておいてもらえるのは一時間や二時間。まあ、大体が裏切られて、こちらは火消しに奔走することが毎日のように起きています。
 もちろん家庭で、オフィスにいるのと同じように真剣に取り組んでいる人もいれば、長期休暇と勘違いしている人もいます。その両者のギャップが凄まじく大きい。色々なところでずっこけるのは当然です。
 つまり今のシチュエーションは、自分にとってストレスフルな毎日ということになります。もううんざりしているところへ、現在の規制が再び二週間延長されるという通知が届きました。
 思わず、死亡確定、とつぶやいてしまいます。
 眩暈を覚える延長通知に、色々な会社がこのままではもたないぞと心配になります。
 その前に、自分のプロジェクトが足元から崩壊しそうです。まじでやばい。

 当初自分は、このCOVID19を非常に軽視していました。インフルエンザに毛の生えたような病気で、一体何を大騒ぎしているのかと。
 しかしよくよく分かってくると、これって結構恐ろしい病気なようです。肺が線維化して呼吸困難になるとか。
 線維化すると空気が抜けるのか何が起きるのか詳しくは知りませんが、自分の年齢で感染するとかなりやばそうです。しかも重症になると、相当しんどいらしい。どこかの有名な方が感染し、せっかくだからと自分の闘病記をリアルタイムでインターネット上にアップしていましたが、とても辛そうでした。通常の高熱ではへこたれないが、これは一味違う、などということを申していた。
 しかし我が家では、大黒柱でかつ一番やばい高齢者の自分が、危険な外気に触れながら全ての買い出しを一人でこなしています。
 車に乗れるのは一台一人という制限があり、それを破って見つかると罰金三万円。ペナルティーがぬる過ぎるという話があるようで、これを十万円まで引き上げることが検討されているとかなんとか。フィリピンの射殺や完全封鎖よりはましかもしれませんが、出歩きが不便なのは確かです。
 とにかく自分は今、完全に使い走り状態。自分が感染して死んだりするものなら、一体この家族はどうなるのか? などと心配になりながらスーパーで買い物しています。
 スーパーの建物に入るときには、レーザー式の体温計で体温をチェックされます。問題ないはずですが、なぜかいつも緊張します。そして売り場に入るときにも再度体温チェック、そして手の消毒、さらに使い捨てビニール手袋を渡され、それをはめなければなりません。鬱陶しいのですが、確かにみんながべたべた触ったものを買うのは嫌だなと思うので、ビニール手袋はいいアイディアだと思って我慢しています。
 この手袋の問題は、測り売りの野菜などを買うときに、備え付けのロールプラスティック袋を使うのですが、つるつる滑ってこれを開けることができない。隣のおばさんは両腕を使ってもみ込んで、いつまでも空かないプラスティック袋と格闘していました。おばさんが身もだえているようで、少し妙な光景でした。その脇で、僕は手袋を外してさっさと袋を開けたのですが、それをおばさんがぎょっとした顔で見ていました。
 どこの家庭も同じようで、スーパーにはたくさんのお父さんがいます。みんな慣れない買い物で、携帯片手に奥さんと品物について確認しながら売り場の中をうろついている。
 そういう自分も同じで、頼まれたものが売り場にないと、これでいいか、あれでいいかと確認します。どうしても伝わらないときには品物を撮影して写真を送るのですが、気付くと隣のお父さんも同じことをしていて、目が合ったりします。
 いやあ、お互い苦労が絶えませんなあ、という感じです。

 もちろんこのままいくと経済の先行きが心配で、ひいては自分の身の上にも具体的なしわ寄せがくるのではないかということまで考えるのですが、それもさることながら、子供にストレスがたまりはしないか心配です。
 全く外へ行けず、一か月以上も家の中だけで過ごすという経験は、初めてのことです。
 それだけで気付かないうちストレスになっているような気がするので、せめて少しの我儘は許しています。
 例えば夜は遅くまで遊んでもいいとか、欲しいお菓子やジュース等があれば買ってあげるとか、特に食事のリクエストにはほとんど応じています。
 美味しいステーキが食べたいとなれば、普段は買わないオーストラリア牛肉の塊を買い自分が料理します。こうしていつの間にか、僕はステーキマスターになってしまいました。赤ワインと醤油、砂糖、みりん、バターを使った手作りソースが絶品です、と自分で言ってしまいます。
 それ以外、子供には通信販売で欲しいものを買ってあげます。先日は、中の娘にお絵描き電子ボードを、下の子供にはテントを買いました。
 なぜテント? と思うかもしれませんが、子供は自分だけの空間を持てると、本当に嬉しいらしい。自分にも経験があるのでよく理解できます。
 下の息子は、気付けば家の中に設置したテントにこもり何かをやっている。それだけならいいのですが、夜はテントの中で一緒に寝ようとお願いされます。さすがにタイル床ですから、マットを敷いても体が痛い。しかし頑張って付き合うのですが、夜中に目を覚ますと自分一人が寂しくテントの中で寝ています。リクエストをした本人は、ベッドで僕の場所を占有しぐっすり寝ているので、自分は仕方なくソファーで寝ました。
 翌朝どうしてベッドで寝たのかと聞くと、僕のいびきがうるさくて逃げだしたそうです。なるほど、それならば責められません。
 勉強はインターネット配信されたテキストを自宅でプリントアウトしてやる。おかげでプリンター用の用紙がどこも売り切れで、入手が大変。
 そして時々Zoom授業をやる。Zoomというのは、先ほど触れた、インターネットコミュニケーションツールの一つです。
 学校は紙代を節約でき、電気代も随分少なくて済むはずです。色々な経費が安くすむはずですが、授業料のディスカウントはありません。何か理不尽な気がしないでもないですが、文句を言わずに払ってます。
 こうなると、電気や水の検針ができず、今は仮で、前月同額が請求されます。事態が収拾すれば検針結果で追徴や払い戻しがあるそうですが、我が家はそうなる前の電気代がたまたまとても高かったため、今はたくさん払わなければなりません。ガスはタンクを配送してくれるので、それは問題なし。
 各種レストランはマックやスターバックスも含めて閉鎖ですが、フードデリバーをやっています。おかげでフードパンダとかグラブフードだとか、そういったバイクでのデリバリーサービスが大繁盛です。がらがらに空いた道路で、やたらとそういったバイクが暴走しています。
こうした道路を走っていると、以前の万年渋滞は一体何だったのだろうかと不思議に思います。いつもこうだったらいいのにと心底思うのですが、しかしこの規制は早くなくなって欲しい。
 規制が始まったら、街はゴーストタウンのようになるのではと想像していましたが、これがそうでもありません。人がいなくて車が少なくても、不思議と街は街としての体裁を保っています。夜の道路にオレンジ色の街灯が並び、マンションのビルにも煌々と灯りがともっています。そうなると、やはり街は街でゴーストタウンにはなりません。いつも部屋の窓から、車のない街灯に灯された道路を、意外と綺麗だな、などとぼんやり眺めています。
 つらつらと現状を書いてみましたが、何はともあれ家族はみんな元気に暮らしています。少々疲れ気味なのは自分だけで、何となくこの休みをみんなが謳歌しているようにさえ見えます。
 実は今年の会社契約更新で、もう会社を辞めたいと悩みました。更新は四月の頭であるため、更新手続き(主にVISA)は二月の終わり頃から始まります。現状の仕事の状況を考え、渋々更新したのですが、しかしそのあとでこの騒ぎです。もし会社を辞めてフィリピンへ帰っていたら、働くこともできず外出もままならずで、一体どうなっていたことやら。結構厳しい状況になっていたかもしれません。今はどうにか給料だけはもらえますから。
 みんなで本当に、不思議な体験をしていると思います。人類滅亡がまんざら絵空事ではないような気もしてきます。
 本当は、もっと言いたいことがありました。例えばこのウィルスはアメリカの陰謀で、アジア人にしか伝染しないように作られているウィスルではないかと疑った話や、少し咳をしてコロナにかかったと言ったら、我が家の子供が一斉に僕から真剣に逃げ出したことなどです。一体どうして、こうしたウィスルが世界中に伝染していくのかなども、よくよく考えると不思議です。
 しかし長く書き過ぎました。この辺で失礼したく思います。
 ああ、早くこんなこと、なくなって欲しい、と心から願っています。
 くれぐれもコロナにはお気を付けください。

3件のコメント

  • 引き続きコロナですが、世界的に色んなことが起こってます。中国共産党VS西側諸国みたいな状況。まだ2月頃にはそんな話は無かったのですが中国の対外侵入によりインドとの戦争寸前状態、尖閣諸島への中国公船の国境侵犯、北海道や佐渡島など各地での中国人の土地の買収、アメリカでのBLMによる暴動は実は中国が暗躍していた事がわかり総領事館が閉鎖、FBIが捜査していて領事館に匿われていた中国空軍士官のスパイ活動容疑での拘束と尋問。大量に機密書類を燃やしたため家事騒ぎになり、焼け残った書類からもかなりの事実が判明している様子。それ以上もいろんな情報がありこれからどうなるのか。世界は何かの方向に進みつつあるようには見えますが、まだ確かな事は年末まではかかりそうですね。
  • clipmcさん、コメントをありがとうございます。他の記事へのコメントも頂きまして、併せてお礼申し上げます。
    返信が遅くなり申し訳ありません。日本はどこへ、に対するコメントですが、なぜか返信できません。他の方のコメントには以前返事ができているで不思議なのですが。
    よってそちらへの返信も兼ねて、ここに書かせて頂きます。
    おっしゃる通り、日本の底力がまだまだあることは理解しております。国債発行ばかりして借金だらけなどと言われていますが、日本国債の引き受け手はほとんど日本の銀行ですし、日本の借金と資産をバランスシートで見れば、まだ健全です。
    そもそもお金は印刷物なので、その気になればたくさん刷れるんですよね。勿論供給過剰になれば金の価値が下がりインフレにはなりますが。
    そんな観点で考えると、結局金があるとかないとかは、国がどれほど付加価値を生み出すことができるかどうかにかかってくるのだと思います。現在日本は、かつてのヨーロッパ諸国の様に、蓄えた資産があります。それを食いつぶしていけばまだいけるのですが、そろそろ錬金術をあみだしておかないと苦しいかもしれませんね。
    そこへきてこのコロナ騒ぎですが、本当に色々なことが起こっています。鶏が先か卵が先か、という話みたいに、世界の秩序が破綻するのを隠すために、誰かがコロナ騒ぎを起こした? と疑いたくなるほどです。
    昨日は家族で食事に行きましたが、家族が一つのテーブルに一緒に座れない。少し前は大丈夫な店だったのですが、お上のチェックで指導されたのだと思います。家族を離すことは本当にナンセンスと思うのですが、お上が偉そうに指摘するのでしょうね。こうなると、家族で外食なんて意味ないじゃないかという気になりますが、そう思うのは我が家だけではないはずです。
    こうした感情が蔓延すれば、外食産業はレストランをオープンできても、ボディーブローのようなダメージ蓄積させていくのでしょう。身近なところで具体的な変化がたくさん起こっているのを見ると、本当に何かが大きく変わりつつあるような気がします。
    さて、clipmacさんの投稿作品、読ませて頂きました。こちらも何かが起こりそうな予感を膨らませながら、次回を楽しみに待っております。
    ありがとうございました。
  • 秋野さん、返信ありがとうございます。

    脳出血の後遺症か、iPhoneで文章を書くのにかなり手がかかりまして、パソコンで執筆した方が楽なのに気が付き、今、再開しだしたところです。

    コロナ禍ではかなりのレストランが閉店してます。たまに食べに行こうと思いGoogle マップで営業時間を確認したら閉店という字が。
    結構行きたかった店が無くなってました。

    お身体には気をつけて、次回の作品読ませて下さい。
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