ゆあん様自主企画「筆致は物語を超えるか」【葉桜の君に】への参加作品として、「葉桜の君に」という作品を投稿しました。
https://kakuyomu.jp/works/1177354054897530608たくさんの方に読んでいただけただけでなく、レビューを含め、積極的にコメントをいただけてとてもうれしく思います(ほんとに)。
また、おなじ企画に参加されたたくさんの作品を読むと、みなさんの想像力の自由さにただただ驚くばかりです。僕もけっこう奇想を働かせたつもりでしたが、ぜんぜん。まだまだ。あの手この手でレギュレーションを巧みにこなす工夫の数々がとても楽しいです(もちろん王道的なものもちゃんとありますが)。
さて、ほとんど自分のための備忘録ですが、作品を仕上げるまでの経緯について書き残しておこうと思います。
(書いているうちにすっかり長くなってしまいましたので、以下特にお読みでなくても、本ページは通信欄などにご自由に活用くださいませ)
企画として作品にはいくつかの【お題】があるわけですが、まず主要人物として教師と女生徒というふたりがいて、しかも女性とは教師の昔の恋人に似ている、と。
あとは女生徒に悩みがあって、いちど教師に打ち明けるのだけれど答えを聞かず走り去ってしまい、後日またふたりで会って、答えを聞く。
このふたつが大きな課題でした。
作品を書くにあたって、まず決めたのは【悩み】の部分。女生徒は【小説を書く人】で、そのことについてなにかしら悩んでいる。
そして教師によってなされる解決は【小説を書き続ける】こと。つまり【書き続けられない】障害があるんだな、と仮定。それってなんだろう、とあれこれ考えていきます。これがスタートでした。
詳細ははぶきますが、そこからすこしずつお話の構造がまとまっていき、そのうちに「これでいこう!」という骨格になったので、いそいそと書き始めます。
【昔の恋人と似ている】設定も無理なく消化し、小説を書き続けることへの礼賛も仕込むことができ、順調に筆を進めていきます。
よしよし、このペースなら期間内に十分間に合うな。企画に間に合うか心配していたので、ほっとして、毎日のルーチンのようにコツコツと書き進めていきます。やがてラストシーン近くまでたどり着きます。あとすこし!
ものを書く人であれば誰しも経験するであろう、死神のひと言がこのとき耳元で囁かれます。
「あれ、このお話、あんまり面白くなくね?」
「……。」
こういうとき、いわゆる「死の受容プロセス」が演じられることを、僕は経験から学びました。否認、怒り、取引、抑うつ、受容……。「ここをこうすればなんとかなるよ!」という甘いささやきは、まず成功しません。ついそう思ってしまうのですが、残念ながら、そうはいかないものなのです。
プロセスの最終段階、僕はすべてを受け入れ、作品投稿をあきらめました。
ちなみにそれは現代を舞台にした、ハーフの女生徒と元恋人をめぐるお話でした。
「面白くない」を受けいれると、じゃあどうして面白く感じないんだろう? とひとり反省会を始めることができます。「面白くなさ」を分析していった結果、たどり着いた結論。書いている本人が、登場人物たちのこと、あまり好きじゃなかった。
……あ、そうか、それってけっこう致命的だな。
そんなことに気づかず書いていた自分の呑気さにがっかりしますが、まあこれでも、だめになったものにしがみつく時間が短くなったのは、経験のおかげです。
教師と生徒という年齢的な隔たりが、強く踏み込むことをどこか抑制してしまう。その殻を破るほどのあざとい強さを持つ人物造形が、僕にはできない。
もちろん未練たらたらで、受容プロセスの「取引」はしきりに僕にささやきかけますが、分析はできているので心はゆらぎません。問題の根っこが解決しない限りは、小手先の操作でどうにかなるものでは、ない。
問題の根っこが解決しないかぎりは。
……というわけで。
仮に登場人物たちを好きになれるとするなら、どこを変えればいい?
まあ、年齢の隔たりをちいさくできれば、もっと踏み込んだ会話が発生して、好きになれるかもしれない。
じゃあ年齢ほとんど同じにしちゃいましょう。飛び級、飛び級。そうすれば万事解決。そんなの不自然だって? じゃあ、ディストピア的な未来にして、それがありうるという雰囲気の舞台にしちゃいましょう。そういうの好きでしょ?
こうして現在の形の作品ができあがりました。
そんなわけで、最終的にSF的な作品に仕上がったのですが、それは企画のレギュレーションからの要請として変化を受けた結果という、後天的なものでした。自分でもその流れに「へー」と思ったので、経緯を文章にしてみたくなりました。すっかり長くなっちゃいました。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。引き続きこんな感じで精進してまいりたいと思いますので、よかったらまた、読んでみてくださいませ。