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「塵の街」と「スケーターズ・オン・ザ・エッジ」が点字化されました

先日、川崎市の点字グループ「芽の字会」様による「塵の街」と「スケーターズ・オン・ザ・エッジ」の点字化が完了し、データが川崎市情報文化センターを通してサピエ図書館に収蔵されたとのご報告を頂きました。
サピエ図書館は点字で書かれた本をオンラインで無料で読める図書館です。

点字書籍は性質上一冊が非常に大部になりますが(拙作も塵の街は全4巻、SOEは全15巻に達したそうです)、最近はサイトから点字データをDLし「ブレイルメモ」のような手持ちの機器で点字化して読むということが可能だそうです。
また音声で聞くことも、さらに地域によっては近隣の一般図書館経由でプリントアウトもできるそうです。

もともとスケーターズ・オン・ザ・エッジを書いた際、心掛けていたのが
「目の見えない人や耳の聞こえない人が読んでも、何が起こっているのかわかる文章表現にしよう」
ということでした。
点字化というようなことを具体的に思い浮かべていたわけではありませんが、それが当時の私にとっての音楽や動きを言葉で表現する基準でした。
今では再編と整理のために消去の運びとなりましたが、本作は鳩ケ谷市立図書館様に音声データ化していただき、一時期視覚障害を持つ方々に提供されていました。



10年ひと昔といますが、私がスケーターズ・オン・ザ・エッジを自費出版して実に15年半になります。
その間、塵の街やスケーターズ・ハイの出版を含め、小説に関することだけでも本当に色々なことを体験しました。
トータルで言えば、温かい賞賛を頂けたという良い思い出の方がはるかに多い。
今月になってもまた、身に余るお褒めの言葉を新しく頂きました。

しかし残念ながら、それらを塗りつぶしてしまう、心を凍り付かせる出来事が一定数あったということも確かです。
小説を出版しさえしなければ絶対に際会しなかったことども。

「どうして自分のアイデアで小説を書いて自分のお金で出版したというだけで、こんな嫌なひどい目に遭わないといけないんだろう」
「出版なんかしなければよかった」
「小説なんて書かなければよかった」

今では何とか克服できましたが、そんな思いが本当につい最近まで、通奏低音のように私の心の中にずっと流れていました。
呆れかえったことに、攻撃の一部は今でもまだ続いています。

しかしこのたび点字化完了のお知らせを受け、ようやく理解できました。
小説を書いて自分一人で楽しむのではなく、ネット発表で済ませるのでもなく、「出版」し「紙書籍」の形にして世に出す意義とは、これなのだと。
それを思うだけで、心の中に力が流れ込んでくる気がします。
そして私の次の書籍が、商業のものであるようにしたい。
そう願うのではなく、心に誓いました。

芽の字会スタッフご一同様、改めて本当にありがとうございました。
皆様のご多幸を、心よりお祈りさせていただきます。

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