夏休み。ぼくと、幼馴染のまつりは再びいつもの日々を送っていた。
そんなところに一枚の依頼が舞い込んだ。
彼女の兄は彼女の記事が新聞に掲載される出来事を境におかしくなり、それが反社会的な勢力との付き合いに由来しているようだ。
投稿したとも言っていないのに真っ先に新聞を取りに行ったり、載っている月の物だけひったくるように先に読み、必ず発狂している。
彼女は監視されており、それは『兄』のスパイの下で成立していた。
兄は引き籠りで、反社会的集団や佐村との付き合いがあった。
引き出しの原稿を持ち出したり、彼女の居場所を「安田さん」に報告に出かけたりして、徹底的に監視に協力していた。
ある日「安田さん」の家は一家心中する。
実はこの兄は「妹を庇って行った」と供述するのだが、後に金銭のやり取りや、電話での長期間のやりとりが発覚する。太田という人物と懇意にしていた事も判明。新聞の際の不可解な言動を含め、事前に闇バイトを承知し、スパイをしていなければ成立しない。罪から逃れる為の苦し紛れの供述だった。
――それと同時期に放火事件が起きる。
犯人は『青葉』という人物として報道されているが、彼女にはどうしてもそうは思えないのだという。
青葉というのはある地区の産業ビルを放火した犯人で、
社員の才能を妬んでビルを燃やし、36名の死傷者をだしたとされている。
産業ビル火災のときの写真も、まるで原稿のテーマを引き合いに出したようなTシャツで報道写真に写っていたり、その内容の台詞に沿った言動を青葉氏が繰り返していた。
・・・
佐村は、何らかの家業をしている資産家で西尾 新の後援会を仕切っている。
・町では時折36が目印になる事件が報道される。それは佐村の裏社会とのやりとりだという噂があった。
・西尾 新は少し前に現れた政治家。佐村の報道とは別に、票数の水増し等の疑惑があった。コラム等も執筆しているようだ。
『才能』『虐待』という単語を気にしているふしがあるほか、指摘・言及されそうな内容を前もって原稿にする癖がある。