先日近況ノートでお知らせ致しました、ユーディ様とのコラボ企画小説の後日談となります。
こちらがユーディ様の御作品です。
『リベンジャー』
https://kakuyomu.jp/works/16817330668477771280 拙作のアリスが第三十七話~第四十一話に登場しております。
そちらも併せてお楽しみ頂けましたら幸いです。
コラボ企画小説後日談 きっとあるよね、そんな世界
「そういえば私、夢の中でうな……『うなじゅう』? とな、な……『なっとう』? を食べたよ」
いつものように空き教室の窓際で机を寄せ合い、菓子を広げて談笑してると、アリスが思い立ったように言った。
元々はアメジスト寮のシェリーの先輩である千梨・フォン・フェルトが「ラーメンが食べたい」と呟いた話から「らーめん」とは何かということになり、そこから日ノ輪国の食文化についての話題になったのだ。
「『うなじゅう』?『なっとう』? アリスちゃん、なぁにそれ?」
「『うなじゅう』はこう、にょろにょろした生き物を捌いて焼いて、甘じょっぱいタレを塗って、白くて粒々した温かいものの上に乗せて食べるの」
「にょろにょろって……それ、本当に食べ物?」
レイチェルが疑いの眼差しを向けるため、アリスは「美味しかったよ! ……夢の中だったけど」と反論する。
「『なっとう』は何なんだ?」
チョコレートの掛かったビスケットをひたすら消費していたシェリーが、更にビスケットに手を伸ばしながら言った。
「やっぱり白いものの上に乗せるんだけどね、臭いが独特で……ネバネバしてた!『なっとう』も美味しかったなぁ」
「アリスの話だと、どうにも美味しさが伝わって来ないのよね……」
レイチェルが口直しのように紅茶のボトルを傾ける。
「そもそも、本当に日ノ輪国にあるのかしら。『うなじゅう』と『なっとう』は? アリスの夢の中の話でしょ?」
「……後で千梨先輩に聞いてみるか」
「でもあったらあったで、ちょっと怖いよねぇ? アリスちゃん、今まで見たことも聞いたこともないものを夢に見て、食べたってことだもんねぇ」
「確かに」
ミリセントの恐る恐るといった言葉に、シェリーが真面目な顔で頷いた。
「あっ、これしかない。シェリー、アンタねぇ。一人で食べ過ぎよ」と言いながら箱からビスケットを取ったレイチェルが、「で?」とアリスに尋ねる。
「『で』って?」
「ご飯を食べただけの夢だったの?」
「あぁ! ううん。初めて会う人達が出て来てね、色々助けて貰って……そうそう! 私夢の中で変身してね、結構強かったの!」
「何だその、情報量が多いな」
「強いアリスちゃんかぁ……ちょっと想像するのが難しいなぁ」
シェリーが呆れを含んだ口調で呟き、ミリセントが控え目に、しかしきっぱりと言った。
「確かに」とレイチェルとシェリーまでもが同意するので、アリスは頬を膨らませる。
「出会った人達ね、皆優しくて、温かい人達だった。楽しかったな」
「……人の夢は、深層心理はどこかで繋がっていると聞くわ。もしかしたら、また会える日が来るんじゃない?」
「そうなんだ……そうだと良いな。いつか皆のことも紹介したいもん」
「なら、菓子折は持っていった方が良いわね。どうせアンタのことだから、夢の中でも方向音痴で迷惑掛けたんじゃないの?」
「有り得る。むしろ想像に難くない」
「ふふ。じゃあ『Mr.アダムス』のお菓子を持って行かないとだねぇ」
友人達からの信頼のなさに「皆酷いよ」と文句を溢しつつ、夢の中でも迷子になったのは本当なのでそれ以上強くは言わなかった。
実はアリスは、夢で出会った彼女達にまた会えるのではないかと、少しだけそう思っている。
夢を見た日の朝。
起きてみると、アリスの手には銀色の指輪が握られていた。
それには可愛らしい兎の姿が彫られていて、瞳には赤い宝石が嵌め込まれていた。その赤は、シェリーの紅玉そっくりだった。
今は寮の自室の小物入れに、麗から貰った黄色い花のヘアピンと共に大切にしまってある。
あの指輪が夢の世界の彼女達との縁を、再び繋げてくれるような気がしている。
「……そう言えばそろそろ文化祭も近いし、そういう他国の料理を出す喫茶店なんかも、出し物としては良いかもね」
「誰も作り方を知らなくないか、それ」
「私頑張ればいけ……ないかなぁ。日ノ輪国の料理は見たことも、作ったことも全然ないやぁ」
「私も食べたことしかないよ」
「夢の中でな」
シェリーの突っ込みに、レイチェルとミリセントが笑う。
「そうなんだけど、そうじゃないんだよ」と口をもごもごさせつつ、アリスも朗らかに笑った。
こうして少女達の、いつかの放課後は過ぎて行った。
コラボ企画小説後日談
きっとあるよね、そんな世界 完
いつも楽しく読ませて頂いている御作品に自分の創作のキャラクターが登場し、尚且つ作中の登場人物達と会話をして動いているというのが、本当に新鮮でとても得難い経験でした。
改めましてユーディ様。
大変貴重な機会を、また素敵な企画をご提案頂き誠にありがとうございます。
そしてお読み下さいました皆様、本当にありがとうございます。
引き続きユーディ様の描かれる『リベンジャー』の世界をお楽しみ下さい。
また拙作『私とアリス』も、応援頂けましたら幸いです。
ここまでお読み下さりありがとうございました。
これからもどうぞよろしくお願い致します。