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本棚の詳細レビュー

紹介本棚なのにレビューが多いという意見があり、ノートなどに分けたほうがいいんじゃないんですか?と言われまして……「まったくのその通りです」と思ったので作りました。

ふかーく詳細レビュー用です。

7件のコメント

  • 【Marvelous mercenary-マーヴェラス・マーセナリィ-】河野 る宇 さま
    [詳細レビュー]
     ここからスロースターター・後半まで読まれないのは何故かの考察になる。戯言だと思ってくれて構わないので話半分で読んでもらえると助かる。

     正直にいうとこの作品はスロースターターではない、と私は思った。たしかに一話目にドーン!と来る展開はない。しかし、一話目を読むと文章力があって雰囲気もいい。これからに期待が持てる!と思った。その矢先、二話目で躓きかける。PV数も見れば分かるがこの二話目を境にガクッと減っている。

     その大きな一因は「視点変更」だと考えられる。

     この作品は三人称神視点を採用している。それが悪いわけというわけではなく、むしろこの独特な雰囲気は三人称神視点でしか出せないだろう。しかし、その弱点をよく理解できていない節がある……気がする。
     神視点はいろんなことを描写できる利点がある。逆に欠点は「視点変更」の難しさがある。一人の視点ではなく、さまざまの人物に視点変更していくので読者は揺すぶられる。後半こそ気にせず読むことができたが、特に序盤、キャラクターが読者に伝わっていない状態でされると読み手は追いつけず置いてきぼり状態を食らう。なにせ主人公の名前もまだ出てきていない時で、主人公・少女・従者・モブ黒服(5人)と登場してきたなら尚更である。キャラクターが立つまでは視点変更を抑えたほうがいいと思われる。
     視点変更があまりに多すぎると読者がついていけなくなる。この問題は全編を通してある。面白い要素がしっかりとあるので、この問題を意識するだけでこの作品はぐっとクオリティが高くなると思う。
     細かいルールについては省くが、事例を少しだけ交えて見てみる。

    ―――・―――(◆第一章 二話目「*エメラルドの青年」抜粋)―――・―――
     二人は互いに目が合い、同時に動きを止めた。
     青年はその鮮やかな赤い髪と瞳に、少女はその整った容姿と神秘的な瞳に──
     青年は受け止めた感覚から華奢な女性だとは感じていたが、幼い顔立ちにまだ十代なのだと納得した。
     年の頃は十代後半だろうか、背中までの赤い髪を後ろで一つに束ね、品の良いワンピースと整った体型を隠すようにローブを羽織っている。
     方や、少女の目は青年の容姿に釘付けだった。
     中性的な面持ちにあまり感情は見られず、目が合った瞬間は多少の驚きがあったのかもしれないが今はただ無表情に見下ろしているように思えた。
     切れ長の瞳に上品な鼻筋と薄い唇、存在感までもが青年を美しく彩っている。これほど優美な男性がいるのかと、少女は目が離せなくなった。
    ―――・―――・―――・―――・―――

     視点変更その1(主人公=青年→少女)。主人公とヒロインが出会って顔を見合うシーン。大切なシーンでもあり、ここは別にいい。(視点変更の話ではないが、ここで主人公=エメラルド(翠色)の瞳を持つ青年 と描写されていないのは敢えてなのだろうか? 章のサブタイトルが「エメラルドの青年」なのでこの章が終わっても出てこなかったので逃したのかと思って二度読みしてしまった)。そして、4行ほどはさみその後に控える文章。

    ―――・―――・―――・―――・―――
     そんな二人の間を破るように駆け寄ってきた若い男に、ミレアと呼ばれた少女はホッとした表情を浮かべる。
     肩までの栗毛に黄金色こがねいろの瞳、二十代後半だろうか神妙な面持ちで少女を気遣うように小さな肩に手を添えた。
     アレウスと呼ばれた男に青年はいぶかしげな視線を向けられ肩をすくめる。
     青年をひと睨みし口を開きかけたアレウスだったが、幾つもの大きな足音にハッとする。気がつけば暗めのスーツを着た五人ほどの男に囲まれていた。
     いずれも紳士風に装ってはいるが、攻撃的な感情が二人を見る目から感じ取れる。その動きからも、まったくの素人という訳ではない事が窺えた。
    「──っ」
     男は少女を護るように身を引き寄せ、闘う覚悟に目を吊り上げる。
    ―――・―――・―――・―――・―――

     視点変更2(少女=ミレア→男=アレウス→主人公)。「スーツを着た五人ほどの男」はこのあとずっと「男」と表現される。しかし、この最後の行の「男」はアレウスだと思われる。混同させないように「アレウス」または「アレウスと呼ばれた男」と変えたほうがいいと思われる。そして7行後。

    ―――・―――・―――・―――・―――
     見知らぬ青年に目を向ける者はいなかったが、少女だけはじっと青年の様子を見つめていた。
     この人はどうしてこんなにも落ち着いているのだろう……。ただ無表情にこの状況を眺めている青年に見入った。
    「ふむ」
     青年は突然の出来事に数秒ほど思案するように沈黙していたが小さく唸ると、男たちと二人を交互に視線を移し、おもむろにアレウスたちに歩み寄る。
    ―――・―――・―――・―――・―――

     視点変更3(主人公→少女→主人公)。
     ……この一連のシーンだけで5回ほど視点変更している。先述したが、キャラがわからない状態でこれは読者の目を回してしまう。ここで読むのを諦めてしまう人がいても仕方がない。

     ちなみに、私がキャラクター像を掴めたのはこの一章二話目のラストあたりである。多くの人に読み続けさせたいのなら、そのあたりまで視点変更は多くても2~3回ほどに控えておくべきだ。

     しかし、この視点変更で独特な世界観も生まれているような気がする。全体でも視点変更が多く見られる。ただ、最初の出会いの互いに見つめ合うシーンのようなものでない限り、同じ段落で違う視点が混在しているなどは避けたほうがいい。
     あらかじめ「このシーンでは使う」「このシーンでは使わない」とはっきりさせてから書いたほうが伝えたい内容を明確に伝えられると思う。



     余談だが、同作者の「クラウ・ソラスの輝き」でも手法こそ違えど、同じような問題が発生している。本作の続編(スピンオフ?)にあたるので軽く触れるだけで留めるが、キャラクター像が出来上がる前に装飾過多が起きている。そのキャラがどんなキャラか分かる前に「父親が~」「母親が~」と身辺が語られる。読者の中にキャラクターの芯ができていないのに、そこに装飾していくとその重みで芯がブレてイメージがしづらい。ただこれは私が「Marvelous mercenary-マーヴェラス・マーセナリィ-」を読む前の感想なので、今作を読了の今から読むとイメージが変わるかも知れない。

     あと、気になったので。
     ヒロインのミレアの一人称が最初「わたし」だったのに終盤で「私」になったのはなにか意図があっただろうか? もし意図がなければ「わたし」に統一したほうがいいと思う。主人公も「私」が一人称なので混同しかけたので。

     地力のある方なのでこれからの作品にとても期待しています。

     ……なんか、気を付けているのに偉そうな感じになってしまった。いろいろ言ってすみませんでした! いろいろ書いたけどおもしろい作品だから読んでみてください。
  • 【ザコキャラコンソレーション】 増岡 さま

    [詳細レビュー]
     まず、ここから衝撃の辛口コメントがある。正直、見ないでもらってもいい。もし見るなら作者さんは心の準備をしてくれ(ちなみに、一番下に「誤字の指摘」や「犯人考察」があるので、心が弱い作者はそこから逆算的に読んでもらったほうがいい)。



     OK?







     本当に?









     では、ぶっちゃける。


     人生で初めて小説を読むのが辛くなった。

     いや違うんです! この作品が悪いわけではないんです! 私が悪いんです! 謝りますから聞いてください!

     ごめんなさい、取り乱してしまいました。

     簡単に言うと、私の読み方が合わなかっただけである。私は基本作品のほうに読み方を合わせていくタイプだ。ギャグならその勢いのままに読み飛ばしたり、シリアスなら端から端までどっぷりと浸かるように読む。しかし、今回は企画として立ちあげて気合を入れすぎていた。なのでこの文章圧力に蹴落とされないよう「読まなきゃ読まなきゃ」となっていた。しかし、この作品はそういうものではなかった。これは私の所感だが、しっかりとゆっくり咀嚼して少しずつ食べたい作品だった。それを一度に口に放りこめば息苦しくなるのは当たり前だった。なので、一度一章で区切り、そのあと少しずつ読ませてもらおうと思う。もちろん読んだら感想を追記させてもらう。

     この作者は私が出会ったWeb小説のなかで一番に描写書き込み能力が高い。しかし、これは描写力の『最大値』の話。文章がうまい人は逆の『最小値』を入れるのがうまい。
     実はレビューで今まであえて言うのを避けてきた表現がある。「文章がうまい」である。「うまい」にもいろいろある。上手い、甘い、美味い……。この人の場合は描写が「旨い」に当たると感じた。味の濃い「うまい」だ。そして、文章としては「巧い」わけではない。それはおそらく文章圧力的な話ではなく、文章構成力の話だ。
     なんでこんなに描写に触れるかというと、ところどころ風景が想像できないところがある。細部にこだわって全体像がつかめない。せっかく書き込まれた描写もこれでは台無しである。物体を描かずして質感を描こうとするようなものである。この作者が絵を描いている(しかも、メッチャ上手い!)のでそれを例として出した。自分がデッサン人間だから対抗心を燃やしているわけではない。
    例えば、二話目の女子グループの説明のとき、一人一人紹介されて深く描かれているのに想像できない。ここは何人で構成されている女子グループなのかを前提として全体像として書いたあとに、一人ずつ書いたほうが想像しやすいと思う。

     ストーリーはまだ途中なので的外れなことを言わないようにするが、一章は「青春の表と裏」で、二章は(今のところ)ミステリーとしてぐっと引きこむ感じで書かれている。正直なところ、一章だけだと全然違うことを口走ったと思う。一章のミステリー要素の存在感が弱かったので。
     でも、一章はやっぱり「青春」主体だったと思う。彼女に告白されたのに次の日(数日後?)違う女を家に泊めやがったぞ、この主人公……。しかも、彼女に対して申し訳なさそうな描写もない。こ、こいつ……!って思った(笑)。

     突然だが、私の犯人考察。う〜ん、情報が少ないけど、怪しいのは『近原スナオ』か委員長の『橋本萌々』かな。理由は最初の事件での黒板の消し残し。黒板にあれだけの「芸術作品」を書く犯人が、消し残しに気付かないことがあるのだろうか? また、気付いたとして消さないだろうか? あれだけのものを書いていて、しかも、いろんな色のチョークを使っているのだから、消す時間くらいあったはずだ。ならば、犯人はあえてそれを残したことになる。となれば、偶然残ったのではなく必然的に残っていた可能性が高い。犯人はそれを残せる人物……つまり、事件が発覚する前日の黒板を最後に消した人物。作中では描写されていない。だから、日直……ではないと邪推してみる。
     なら、誰か。
     パシリに使われている『近原スナオ』か、学級委員の『橋本萌々』なら黒板を消していても自然である。しかし、片方は腕を粉砕骨折しており、化粧を落とせない描写があった。なのでそっちじゃない方が犯人、と推測している。

     ドヤッ

     柳の人は黒板の書き残しだけでここまでの邪推が可能です(9割がた合ってない気がするけど、推理としては間違ってない気もする)。
     ただ、タイトルが気になる。「ザコキャラコンソレーション」。コンソレーションは「慰め」と「敗者復活戦」という二通りの意味がある。「雑魚キャラの慰め」「雑魚キャラの敗者復活戦」どちらの意味なのか、それとも二つともにかけているのかは分からないが、これは『近原スナオ』のことを指しているのだと思う。とすると、犯人は……。
     いや分からないです、はい。


     ◆最後に誤字について指摘させていただく。
     本来、私は誤字を指摘しないのだが、今回の作品にはさせてもらう。ギャグコメなら読み飛ばせるがシリアスではダメ、……と言っている方もいるが、物語の山場でされる以外は私はあまり気にしない。しかし、今作はすこし違う。今作は誤字が多い、……というのは間違いで人並み程度の誤字くらいしかないのだろうが、多く感じた。なぜなら、この作品は卓抜した描写をゆっくりと味わうものだと判断したからだ。ゆっくりと味わっている最中にほかの《《雑味》》はこういった作品では致命的になる。
     なので、今回にかぎりこと細かに誤字報告をする。

     【誤字】
    ◆1:クラゲとオウム
    ・私が見たかぎり一話目に誤字は見当たらないが、段落冒頭の「| 《くうはく》」がないところが見受けられる。全編に通して見受けられる。

    ◆2:嘘つきの教室
    「お、社長出勤か?」
     昼休みの教室自分の席で足を投げ出していると、どこからか戻って来た前坂《まえさか》鷹来《たかきが》倭の机の周りをぐるりと廻り抜けつつ言う。
     ・「昼休みの教室」「自分の席」のあいだに「、」「。」がおそらく抜けている。

     実際問題、このクラス処過去の学年で今年度死んだ者は居ないのだ。
     ・クラス処過去の学年 → クラスどころかこの学年

    買って来て、と片手を立てて頼まれると、友人の頼みだからスナオは断れない。
     ・手を立てる → ? どんな状況かわからない。そういう表現があるのかと検索をかけても出てこなかった(画像検索をかけたら、中指立てられて『fu○k!』って言われた。こっちが言いたいわ!)

     スナオを含めた全員が一瞬、こちらを見、身をくねらせ合って笑った。
     ・こちらを見、身を → 誤字ではない。が、「み、み」と同音が読点を挟んで読むので読みづらい。シーンを印象付けさせるためにあえてやったのなら個人的にはセーフだが、気になってシーンが入ってこない人もいると思われる。

    神様召喚出来るんだよ」
     ・出来る → できる 「出来る」は作られて形になること。「できる」は可能の意。

    ざっくりと耳の後ろでまとめるように編み込んだ髪から、髪が数本ほつれていた。
     ・髪から、髪 → 誤字ではないが、語感が悪い。前者を「束」にしたりして言い換えたほうが読みやすい。

    ◆4:ギロチンプール
     不快影を落とす。
     ・不快 → 深い

     他の部員達が、思いあまって販促手段に出たのだ。
     ・販促 → 反則

    ◆5:花の体温
     付き合ってもいないのに失礼なやつだよなあ、と笑ってぼやく倭の隣を歩く舞夏の表情は優れずどこか思いつめた風があった。
     ・風が → ふうで または ふうだった 「ふう」でも「風」でもいい。

    ミンミンと鳴き叫ぶせみの声が、上空で幾層にも重なり無形の圧力となってのしかかっているようにすら見える。
     ・「見える」 → 誤字ではない……気がする。しかし、視覚的に声がのしかかってきたということだろうか? 「聞こえる」か「感じる」あたりに変えた方が自然。(ちなみにここの表現好き)

    保険教諭が飲んだであろうコーヒーの残り香が、鼻に染みて泣きそうになる。
     ・保険 → 保健

    退院出来ても
     ・出来ても → できても

    ◆8:burden
    倒すべき相手をを失った議論は失速し、生徒は散り散りに日常の昼休みに返って行った。
     ・相手をを → 相手を  返って行った → 帰っていった

    ◆9:魚の泳ぐ家
     倭は子どもだから、一人では何も出来ない。ソンな当たり前の事を、学生が一人消え代わりに大人が二人増える待ちの新陳代謝に思い出す。
     ・ソンな → そんな だと思われる。

    底に悪があると、断言できなければ誰が何をしていようが干渉しないのは、道理。
     ・底に → そこに だと思う、文脈的に。


    倭を見て怪訝そうな顔が、煩わしそうな面倒くさそうな顔になり、さっとと怯えが宿る。
     ・さっとと → ?

    使っても射ないのにどこから待ってきたか誇りが張り付いている。
     ・使っても射ない → 使ってもいない  待ってきたのか誇り → 舞ってきたのか埃?

    ◆12:第三の予告と二人目の被害者
    バケツの水をひっくり返したような量の水が地表を叩く。
     ・「水」が重複している、というより「バケツの水をひっくり返したような」という表現はない。正確には「バケツをひっくり返したような」

    下着までずぶ濡れになりながら倭と前坂が登校すると、教室の中央で結城《ゆうき》優菜《ゆうな》が泣いている。
     ・「○○すると、○○している」は文法がおかしい。「~が登校すると、~が泣いていた」となる。

     誇表現張
     ・「こひょうげんちょう」。なんか口に出したらかっこいいので、特に何も言わないでそのままにしておく(え?

     ◆誤字とは関係なく気になったところ。
     生物教師である室井むろい真理まりは肩胛骨の下辺りまである一本の三つ編みを、こちらに勢いよく振り向きざま黒板にぶつけて、アルミフレームメガネの右下をちょいと人差し指で押し上げた。においに対して鼻が麻痺しているのか、げんなりした顔ぶれの学生に反して実に涼しげである。あばたやニキビの全く見られない童顔のせいで、頰や額は陶器のようにさらりと白く、白衣を着ていなければ大学生と言っても通用しそうなほど風貌が幼い。前坂鷹来の趣味はどこかロリ臭い。
     ・文末の「前坂鷹来の趣味」が唐突すぎない? あとで必要なのは分かるのだけど。

     彼はおもむろにワイシャツを脱ぎ、下着を頭から抜き去る。革製のベルトを外し、スラックスを下に引っ張って、それだけで外れ落ちないことを確認した。背中を太陽が焼き、心臓の鼓動が一拍ごとに強く、けどもゆっくりと整っていく。靴を脱ぎ、靴下もシャツの上に丸めておいて、準備体操もそこそこに飛び込んだ。
     ・ここで最初、「えっ主人公女性?」と思った。「下着を頭から抜き去る」で下着=ブラジャーだと思って、その先も読んで、やっぱり男性だと思われたので、今度は「えっ主人公メンズブラしてんの?」ってなった。おそらくインナーのことではないだろうか?

    事勿れ主義で刹那主義な考え方は、そんなに昔からではない。体が男性的に成長して、引き締まって、理想とうまく折り合いがつかなくなった頃からだ。
     ・↑のことがあったからここが、「もしかして主人公って性同一障害?」ってなった。もしかしたら、そうなのかもしれない。
     謎は深まるばかり・・・。まさに、ミステリー。
  • 【ミッドナイトウルブス】 石田 昌行 さま

    [詳細レビュー]
     ◆「名作に限りなく近い秀作」。この作品を読み終わったときに感じたことだ。私は、良いところ・悪いところをまぜこぜにしながら批評することを基本としている(感想ならどちらかに寄るのだが)。だが、この作品は欠点がほとんどない。これから書く「欠点」については難癖レベルなのでそれを念頭に置いて聞いてほしい。

     おもしろい。ほぼ完璧だ。凄まじい完成度で物語がまとまっている。しかし、なぜか読み終わったとき、もやっとした。この作品は面白くなるプラスの要素をひたすら積み上げていく。逆にマイナス要素は全くと言っていいほどない。ひたすらおもしろさに「徹している」。逆にいえば「突き抜けていない」とも言えるかも知れない。
     名作と秀作の差は心をつかむかどうかだと私は思う。読み始めのキャッチーさより、読み終えた時のキャッチーさ、心をつかまれる感覚、心に残るかどうかのことだ。

     作品の主人公は走り屋らしからぬ「安全運転」を心がけている。それが作品の中核であり、面白さにもなっている。個人的に、一般人にも親しみがある「レガシィ」を主人公の愛車として選んだことも好感が持てるし、自家用車の範囲を出ないその車でのハンデマッチレースで強豪にどう打ち勝っていくのか、という面白さにも繋がっている。

     安定して読めることがこの作品の良さでもあるが、冒険感……「これからどうなってしまうんだろう?!」というハラハラドキドキ感、読者を引きつけてやまないナニカが少なかった。読者の期待の範囲内で最大限おもしろい作品になっている。おもしろかったからこそ欲を言えば、自分の予想を超えてほしかった。

     非常にエゴ的なことを言っている自覚はあるのだが、ほかに言うことがほとんどないんだ、すまない(´▽`;)。



     ◆ここからは書くことが少なかったので、誤字報告とちょっとだけ気になったこと。

    ◆ロードレーサー(1)

    本質的に根がお人好しの翔一郎は、口は悪いが押しが弱い。
     ・誤字でも破綻しているわけでもないのだが、この一文に「が」と「は」が入りすぎている気がする。「本質的に」「根が」も同じ意味合いで重複になりかけていると思う。自分だったら「口こそ悪いが、本質的にお人好しの翔一郎は押しが弱い」

    ◆ロックアップ(7)

     真琴たちが陣取っているコーナーは、その週末地点だと言っていい。
     ・週末地点 → 終末地点

     かつて八神街道に君臨した伝説の走り屋ロードレーサー。
     ・おそらく「ロードレーサー」のルビを「走り屋」にしたかったのだが、「屋」だけにかかっている。

    ◆ミッドナイト(3)

     理恵がいつの間にかやってきていた理恵が、微笑みながら真琴に尋ねた。その両手には、それぞれ缶コーヒーが握られている。
     ・「理恵が」が重なっている。単純に間違いだと思われる。

     だから真琴は、つい彼女に向けて非礼とも取れる言葉を発してしまった。

     彼女は言った。

    「河合先生もそんな感情持ったりするんですか?」
     ・「だから真琴は、~言葉を発してしまった」とその次の文「彼女は言った」って意味合い的に二重になっている。あえてだろうか?


    ◆エピローグ

     引っ越し当日、もともと面倒が嫌いだった俺は荷造りから何からすべてを業者に任せ、ほとんど身体ひとつで新しい自分の城へと赴いた。
    ・「荷造りから何からすべて」はもしかしたら意味的には間違っていないのかもしれないが、変に感じた。「荷造りから何から何まで」のほうがしっくりくる。


     ◆ちょっとだけ気になったこと。というより、私の読解力がないことを露呈させること。
    ・「ボクっ娘」である真琴について。実は一人称が「ボク」であることに気づいたのが、「ロードレーサー(5)」。で、それまでに「ボク」と言ったのが「ロードレーサー(2)」だけ。ロードレーサー(2)で私は「戯けて『ボク』を使っている」と勝手に思っていた。ロードレーサー(1)で「ボク」と言わせていいのでは? と、自分の読解力を棚に上げてちょっと思った。(ボクっ娘かわいい)



     ◆一応読まれるようにするためには? の考察ために詳細レビューコーナーを作っているので、少しだけ。

     本当に文章力も構成も物語も(文圧調整も)申し分ないのだが、もっと読まれるために、という提案だ。感じたのは一文がすこし長めであるということだ。文章が達者なので気にならない程度なのだが、それでも「ロードレーサー(1)+(2)」だけは短くしたほうがいいかも知れないと思った。一文のなかのセンテンスを少なくしてテンポをよくする手法である(車の説明は勢いが感じたのでその部分はそのままでいいと思う)。読者的には「ロードレーサー(3)」まで行ければ読み続けることができるはずだ。

     ◆余談
     作者のTwitter上のプロフィール欄を見たら本物の走り屋で噴きだす。しかも、同県の方でなぜか親近感がわいた。もしかして作品の舞台も地元の可能性が……? となり、『八神街道』について調べたり、「この作品TRPGまであるのか?!」となったり作品外でもいろいろと面白かった。そして、私はこのあと「頭文字D」を読みに本屋にいくと思う。
  • 【とっても高い、デートのお値段】 @EIJI-S さま

    [詳細レビュー]

     申し訳ないがここからはレビューじゃない。ただ、読んでいて自分のなかの「お節介」が騒いだ。なので、ここでは「お節介な提案」がほとんどである。ただの私なりの「こんなのはどう?」という一案なので撥ねつけてもらって構わない。

     ◆まず、プロローグ「足踏み症候群」の「出会った日」。

     最初のミステリーが出てくる。その謎と解答が魅力的かは置いといて、ここで大切なのは「ロアリー」に読者が共感させることだと私は思う。

     しかし、読んで一番に思ったのは「状況が分からない」だった。

     最初のミステリー(謎)の魅力は足踏み症候群の異様さだ。だから、謎が解けたときの安堵につながる。なので、読者にはロアリーとともに「不気味で気持ち悪い行為」と思わせなければならない。しかし、全くといってそれが伝わってこなかった。「ロアリー神経質すぎじゃない? 視点者が狂っている叙述トリック?」と思ったくらいだ。

     そして、なぜ伝わらなかったのか?という問題だ。

     それは状況が分からなかったから、である。作中に出てくる情報は「ロアリーの部屋」と「窓からのぞくと足踏み症候群が起きている地点」くらいだけだ。

    「ロアリーの部屋はどこにあるの?」「アパート(寮)?一人暮らし?それとも実家?」「目の高さは?一階?二階? どの地点で覗いている?」「足踏み症候群の地点はどのくらいの距離?ここからどのくらい近さなの?」「そこはどんな通りなの?」

     ……と、このくらいのことは読んでいて思った。もちろん、省けるとこは省いていいのだが、その光景が浮かんでこないと異様さが伝わらない。結果、ロアリーが一人相撲しているようにしか見えなかった。(もちろん、舞台背景を意図的になくしているのは分かる。しかし、主人公の焦点があった謎にはもっと深く説明が欲しい)

     余談だが、その異様さを際立たせるために私なら。
    「老男若女どころか、犬までその場で足踏みしている!」とか、「足踏みしている人と目が合ってしまった!」(→このあと銃など確認の流れ)などの描写を入れる。このくらいしないと「長編作品のツカミ」として読者は引きこまれないと思う。「足踏み症候群」というキーワードはなかなか惹かれるところがあるので勿体無いと感じた。

     ◆振られた日
     ここは一つのことを三つに分けて言わせてほしい。
    ①重複について。
     前話での「この街の女性は〜」という下り。この話数にもほぼ同一の意味合いの下りがある。そして、告白シーン。これも次の話数で同じ下りが書かれている。どちらか一方なら強調したいのかな、と思うのだが、重複した内容があっちにもこっちにも出てくると読者は同じことを何度も読まされることになって読むのが苦痛になりうる。

    ②一番最後の告白→振られる、の下り。
     ↑の重複の話にも重なるが、
    「 そしてさらに数日後……
     ロアリーは思い切って、精一杯の勇気をかき集めて、ケインへ愛情を告白した。
    「貴方のことが、好き」      」
    ここからあとの下りは必要ない気がする。告白した、ということだけ読者に伝えればいい。なぜなら、その内容は次の話数で語られているからである。

    ③エピソードタイトル
    「振られた日」。なにかしらの意図で付けたタイトルだと思いたい。しかし、エピソードタイトルにすでにこの話数のオチを書くのはいかがなものだろうか。正直、緊張感もなにも生まれない。

     以下のことから私ならタイトルを「告白した日」に変更して文末を↓

    「 そしてさらに数日後……
     ロアリーは思い切って、精一杯の勇気をかき集めて、ケインへ愛情を告白した。

    「貴方のことが、好き」

     ロアリーはケインの横顔をじっと見つめて、そして、彼が口を開くまで、返事を待った。」

     で、このエピソードを終わらせる。

     つまり、「この告白はどうなるんだ?」というヒキを作り、ページをめくる楽しさを読者に提供する。もちろん、もともとの文章でのオチは、このあとに続いていく展開に雰囲気《ノリ》的には合っている。作品全体で見ると間違っているわけではない。しかし、最初読んだ人はオチを見て、きっと「あっそうなんだ、ふーん」と流《ブラウサバック》してしまう可能性がある(この発言はそのまま自分の作品にブーメランが突き刺さっていて心苦しいのだが)。

     構成力の話での一例として出すが、「バカとテストと召喚獣」というコメディ作品では、「ページ終わりに緊張感のあるシーンを入れて→ページをめくると→すぐにそのギャグのオチがある!」ということを意識されて作られている。

     要点をまとめると、エピソードの終わりごとに「オチ」を置かず、「ヒキ」を置くほうがこの作品には合っていると思う、ということだ。特に 序盤 ~ 一章の終わりまで。作者もここがこの作品の弱点だと分かっていると思う。

     一章「恋の話」の最後なら、次の章の……

    「 とその時、カフェのドアが静かに開いて一人の男が入ってきた。

     私の呼吸と脈拍が跳ね上がる。そう、入ってきたのは、私の片想いの相手。あるいはよく話題に出て来る人物。ケイン・フォーレンである。」

     ……まで入れる。「あっ、これから物語が始まるかも?!」と思わせるところまで。

     決して「バカテス」の作者のようになれ、とは言わないが、これを意識するだけでPVの持続率は高まると思う。

     ・気になった箇所について
     まず最初に。
     プロローグが三人称で、それ以外が一人称である。なにかの伏線か効果を狙ってのことかと思ったが、読了後もこうなっている理由がわからなかった。特に理由がないなら統一したほうがいいと思われる。

     ◆「出会った日」
     自分自身の魅力は、正しく自覚していた。とびきりの美人、とまではいかないけれど、そこそこは可愛らしい顔立ちをしていると思う。最近伸ばし始めている金色の髪も、なかなか綺麗だ。スタイルも悪くはない。そして何より、性格が明るくて開放的なため、男女を問わず誰とでもすぐに仲良しになれる。
     ・「正しく自覚していた」なら、そのあとは→「~と思う」になるのはおかしい、かと。さらに、三人称(単視型?)なので違和感。「可愛らしい顔立ちをしている。」と言い切るか、そのままの表現で行きたいなら一人称で(ぎりぎり)大丈夫だと思われ。

     不気味な現象を目の当たりにしたロアリーは、ドアのロックを確認した。さらに、机の引出しの奥にしまってある拳銃も確認する。彼女の、普段の勝ち気な態度は、本音を知られたくないための防衛機構である。本来は臆病なのだ。
     ・間違った表現はない。ただ少し気になった。「普段の勝ち気な態度」という作中で描写されていないときにいきなり書かれているので想像がつかない。だから、「本来は臆病なのだ。」と言われてもピンと来ない。「奥にしまってある拳銃も確認して、おもわず抱きしめた」とかで余計なことを書かないほうが読者的には読みやすい。

    「んー……」
     寝返りをうって、壁に当たった衝撃で目が覚めた。やや薄暗いのはカーテンが閉め切ってあるせいだ。
     ・文脈のつながりが弱い。目が覚めて、唐突に薄暗い理由が述べられている。「目が覚めた。」→「やや薄暗い。」→「カーテンのせいだ。」と独立させるか。「薄暗い」に主語を入れたほうがいい。この場所なら「部屋が」か「視界が」あたりの主語になると思う。

    「そう言えば、昨日のっ!」
     不気味な現象、足踏み症候群はどうなっただろう。カーテンを開けてみる。部屋の中が途端に明るくなった。どうやら、雨は昨夜のうちにあがったようで、もう地面は渇いていた。通りには、誰もいない。
     ・間違っていないし、とても細かいことだけど気になった、視点の移動。ここの要素を見てみると。
    「どうなったのだろう?」(外への意識)→「カーテンを開けてみる」(外への意識)→「部屋の中が途端に明るくなった。」(唐突な部屋の内側の描写)→「どうやら~」(外)
     ……という具合になっている。これは読者が想像する光景と意識の問題である。読者と主人公が外を気にしているのだから(部屋の内側の描写)は要らない。このワンシーンが入っているだけで読む勢いが殺されてしまう。自分なら「部屋の中が途端に明るくなった。」ではなく→「光が窓から入ってくる。」などの(外)の要素でまとめる。

     とその時。通りの向こうから誰かがこちらに歩いてきた。
     ロアリーは反射的に、踵を返した。小走りになってその場を離れる。大丈夫、誰かが追ってきたりはしない。
     ・「~たり」表現は「~したり、~したり」と二回続けるのが基本だが、語り文みたいな場所なのでいい(ダメだという人もいるかもしれない)。それと、このシーンでロアリーさんは物陰に隠れてその人が足踏み症候群を行うかどうかを確認を行わなかったのか?が気になった。「思考が回らなかった」のか「気になったけど臆病だから逃げた」のか……いや、私が単純に気になっただけです。

     ◆振られた日
     しまった。香水を軽くつけていたのに、昨夜の酒臭さを気づかれてしまった。
     ・意味はわかるのだけど「昨夜の酒臭さ」が気づかれたわけではなく、通じづらい気がする。

     そのあまりに素敵な表情に、ロアリーは目と心を完全に奪われた。ケインはずっと無表情を通していて、それも素敵だったが、笑うともっと素敵で、綺麗だった。もう恋人がいるフィニアまで、ケインの笑顔に見惚れているほどだ。
     ・ここはまぁ、このままでもいいのだが。この短めの文章に「素敵素敵素敵、綺麗!」と来ているので語彙がなく文章下手だと思われかねない。

     だがその笑顔はすぐに消え、彼は先程までの無表情へと戻ってしまった。いや、よく見ると僅かに嬉しそうな瞳をしているかも、しれない。
     ・ここは「しているかも、しれない。」ではなく「している、かもしれない。」ではないだろうか? よく分かんないけど!という意味合いを強調するなら「している、かも、……しれない。」などでも。

    「聞きたいな」
     率直に言うフィニアだ。ケインは無表情のまま肯く。
     ・これはわざとやっているかもしれないので、強く言えないのだが、一応指摘しておく、ということで。「頷く」→首を縦に振る動作。 「肯く」→肯定の意味合いが強い。

     その夜、自室で。ロアリーはハッキリと自覚した。
     ケイン・フォーレンに恋をしてしまったことを。
     ・前後の流れ的にちょっと唐突だった。自分なら、なぜ恋と気づいたのかを描写する。「その夜、自室で。彼の見せた笑顔が何度も浮かんできて。ロアリーはハッキリと自覚した。」などである。

     日増しにロアリーの悩みは膨らみ、それ以上に胸の高鳴りと高揚感も膨らんだ。
     ・「胸の高鳴り」に「高揚感」の意味合いがそこそこあるから、重複しているように聞こえる。「胸の高鳴りは高揚感となって膨らんだ」などに違和感なくすることをオススメする。

    ◆2章「「真実」はワリといっぱいある(らしい)」
     こちらも、と武器を探す。これでいいや。近くの花瓶を手に取った。
     バスルーム!
     クローゼットの中!
     カーテンの裏!
     さらにはベッドの下まで誰もいないことを確認して、ようやく落ちついた。
     ・二回目の部屋の侵入時。花瓶を持つところまでは分かるが、「まず自分の拳銃の在り処を探すような……」って思った。動転しているのは分かるが、侵入されたのが二回目だから違和感。

     ◆ここから完全に余談。
     ↑では一章が弱点と述べた気がするが、実は私はけっこう楽しめた。

     というのも、読んでいると退屈な日常のワンシーンには変わりないのだが、「ここに作者が秘めた伏線がある! どれかな、どれかな?」とわくわくしながら読んでいた。これは「埋もれた作品の本棚」という企画だったのもあるが、この作品が「ミステリー」ジャンルだったからといのが強い。

     だからこそ、↑で言ったような「ヒキ」が映えると思った。きっと「現代ドラマ」など他ジャンルだったらこうにはならなかったと思う。「ミステリー」だからこそ映える「ヒキ」。「これから事件的な何か起こるかも?!」という期待は「ミステリー」ならではのメタ的なおもしろさ、だと思う。少なくとも拙作「ネ申ネト」ではできない(-_-lll)、ので大切にしてほしいと願う(押し付け)。
  •  【読解力とラブレター】 叶 遥斗 さま

     ・構成について。
     全体ではエピソードが「文字数の少ないもの→文字数の多いもの」の順に基本構成されている。その分け方自体は問題ないし、読者も読みやすいと思う。しかし、正直に言わせてもらうと、一番最初のショートショートショートは「読み始めるぞ!」と思って読むと「始まる前に終わってしまった・・・」感があった。なんと言えばいいか分からないが、作品の読み方が分かる前に終わってしまう。
     カクヨムでは、前情報なしに読もうとすると「1~2話のエピソード」でその作品の傾向を判断する読者が多い、と思われる。この作品のPV数推移でもそれを物語っている。そういう状況で、多くの人に読ませたいのなら、この構成は悪いと考える。

     もちろんキャッチコピーに「最速読了」と謳っているので仕方がないのは分かるのだが、欲を言えばなにか「前書き」のようなものが欲しかった。ある程度短くて作者の色が見えるようなエピソード《まえがき》かなにかが一つ欲しい(難易度高い戯言だな、おい)。

     それと、もう一つ。
     明確な作者の言葉が文末(犬轌レースなど)または文中に書かれているエピソードがある。これは非常にリスキーである。短編集の作品と作品のあいだにあるので現実に戻される感覚が強い。次の作品に行くのに足踏みしてしまう。
     こういうエピソードを置きたいのなら、「ショートショート」などの分類されている題目の最後のエピソードとして置くか、いっそのこと、そういったものをまとめた作品群で作ってしまうか、のほうがいい気がする。

     ・コピーについて
    (辛口評価を希望とされたのでこのキャッチコピーだけ激辛を混ぜてみる)
     タイトル【読解力とラブレター】
     キャッチコピー【最速読了。ただし読解までの時間には個人差がございます。】

     本棚のところにも書いたが、私は大好き。これはセンスがないと出てこないな、と思った。ただ、コピーデザインの観点からいえば、すこしだけ長い。人は、目にしたとき読んでしまう文字数がある程度決まっていて、だいたい7~8文字。「最速読了。」で一度区切られているのでここまでは一気に読ませてられる。そのあとの「ただし~」が読まれない可能性がある。(「最速読了」がみんなを惹きつけるキャッチーな強い言葉なら、長くても問題ない)

    【最速読了。(※注意※ 読解には時間差がございます)】

     ↑は一例だが、できるだけ短く文章を分けて書いたほうが目に飛び込みやすい(ただし → ※注意※)。ただ、↑の一例では、「個人差」と「時間差」で意味が食い違うので、本当に一つの例として言っている。

     ・後書き
     先述したが、ショートショートを書くのは難しい。そして、詳細レビュー書くことも難しい。いや、本当に難しいです(´▽`;)。一つ一つ突っ込んだことを言っていくネタバレに直結していくので雁字搦め状態。

     お題やら縛りプレイをしている方なので、いろんなことをして自分のスタイルを深めていってほしい。
     詩に近いと評したので戯言としての提案だが、文節のリズム(5・7)を意識した作りで一度書いてみても面白いかもしれない(難易度高いな、おい)
  • 【裏通りモノノカタリベ貸本屋】 月端 灯吾 さま

     まず、作者に。遅れてしまい申し訳ありません。読み終わったのは結構前なのですが、紹介自体がかなり手間がかかってしまいました……(汗
     理由といたしましては、「詳細レビュー」と銘打っているこの場所のせいです。この作品に対しては事細かなレビューがなかなか書けなかったからです。ですが、これ以上待たせるのもよくないと思ったので、「詳細レビュー」ではない、「自分の感想」で書かせていただきます。本当に申し訳ありません。不躾ながら言い訳を重ねて言わせてください。

     実は私、この作品が……。

     すっっっっごい好みにぶち当たりまして。
     なんど書き直しても「自分の感想」になってしまいまして。いやぁ、本当にすみません。

     とくに、ひとつひとつの世界観や雰囲気も好きではあるんですが、『十二冊目』からの『十三冊目』が私の心に来ました(一応ネタバレ防止のため、表記を『十三冊目』とさせていただいております)。これがあるだけで、ほかの物語がさらに身が締まったかのような印象を与えてくれました。おそらく読者によって賛否が分かれる部分かとは思いますが、私は好きです。一から読み返してしまうくらいに好きな部分です。あまり書くとネタバレが危ないので、この話は辺で。

     文章や構成は問題ない、と言いますか、非常に高い能力を持っている印象を受けました。いろんな文体や表現、書き方を持っていて、……羨ましい限りです。誤字も一か所あるかないかくらい。全体的に、自分が口出すところがないくらいにはとても良い内容だと思いました。

     しかしながら。
     ひとつだけ気になったところがあります。

     内容とちょっと別の場所。
     【キャッチコピー】についてです。

     何回も読んだ作品なのに、【キャッチコピー】が思い出せなかったんです。そして、改めて現在のを見てみると……【ぱらぱらぱら。さあさ皆様、お気軽に。】……おもわず「こんなコピーだっけっ?!」ってなりました。

     このキャッチコピーに関しては、初見で「内容が分からない」「魅力が伝わってこない」。読み終わったあとですら「このキャッチコピーでなければいけない理由が分からない」となりました。「ぱらぱらぱら」がなにを指しているのか、作者が言っているのかキャラが言っているのか、「お気軽に」の対象も判然としません。おそらく、作者としてはぼやかした表現がしたかったのだと解釈していますが、あまりにも伝わってきてない印象です。

     キャッチコピーは二つの役割があって、「最初見たときに惹かれるかどうか」と「その作品の読了後に見て心に留まるか」です。「内容を伝える」か、「作品の一番の魅力を書く」か、「謎を煽る」か、の要素を打ち出したキャッチコピーのほうがいいと思われます。

     もし埋没しているなら、内容よりおそらくこちらのほうが理由が強いでしょう。折角の良い内容なのにもったいないと思いました。
  •  全体の所感としては、面白かった。素直にそう思う。ただ、この作品はただ一点において、筆者である私に合わない点があった。しかし、それはこの作品の問題ではなく私の問題なので省く(もし作者が知りたいならDMで教えることにする)

     ・文章
     文章は端的で想像にやすく、読みやすい。ある程度のベースがあるので、途中引っかかる箇所もあったがそこはセンスの話で、正解不正解があるわけではないので割愛。

     ・キャラクター
     数多くのキャラクターが登場するが、一人一人想像しやすく生き生きとしている。それぞれにちゃんとバックボーンを感じさせる。鳶谷御影かわいい。ただ欲を言うなら、キャラクターの型にハマってしまっている印象もあった。このキャラだからこんな設定・バックボーン……みたいな。それはそれとして(想像しやすくし)いいのだが、そのキャラクター性だからこそできる予想の上を行く言動がなくなってしまっている気がした。まぁ、これはベースが出来ているので作家としてさらにそのレベルを上げるなら、という話。鳶谷御影かわいい。

     ・世界観
     よく作りこまれている印象だが、最初の提示の仕方は唐突さが否めなかった(詳細は後述記載)

     ここからは章ごとに分解して見ていく。

     一章

     ――・―――――――――――――――――・――

     そんな彼らとユウトの共通点は、全員が左手に付けている銀色に光る腕輪だ。
     これは『ルーンの腕輪』という。何者かによって送られてきたこの銀色の腕輪は、信じられないことに、装着者に超常の力を与える。いわゆる魔法というやつだ。

     そう。ユウトたちは『魔法使い』なのだ。

     腕輪はある日突然、差出人不明の小包で送られてきた。そして腕輪を持つ者の運命故か、ユウトは怪物に遭遇し、命からがら逃げ回っているところを偶然彼らに助けてもらったのだ。

     魔獣。最近になって姿を現した怪物だ。ヤツらは「空間の裂け目」を通って突然現れる。
     裂け目がいつどこで現れ、どこに繋がっているのかはわからない。ただ、今のところ一度の出現数自体はそう多くはない。これまで彼らは協力して魔獣と戦ってきたのだ。魔法だけが唯一魔獣と対抗できる力なのだ。

     ――・―――――――――――――――――・――
     『魔法』『魔獣』の下りが唐突に感じた。まぁこのくらいならストーリー展開優先として考えれば許容範囲。ただ、このままある程度(次の章まで)ブラックボックスなままなので、どういうものなのかが関心が行っている。その中で、次のエピソードで魔獣が出てくるが、なにがなにか分からないうちにハサミを持った謎の大男に瞬殺されてしまう。正直な感想とすれば、この世界における『魔法』や『魔獣』の立ち位置を一、二行ほど言及していたほうがいいと思った。そこがなかったかなのか、このハサミを持った謎の大男が強敵なのかどうかがイマイチピンと来なかった。

     ・二章
     一章は全体的に楽しく読めたが、二章は他の章より短めなせいか、敵が巨大な怪物だったからなのか私はあまり好みではなかった。けど、謎を散りばめたり盛り上げる見せ場シーンがあったりと面白さは保っている。

     ・三章
     全体の流れとしてはいいとは思ったが、この章に関してはツッコミどころが多かった印象がある。
     『神座凌駕VSユウト(ロシャード)』では、敵味方互いに自分の能力や状況をペラペラ喋ってしまうという愚行をしてしまっている。もちろん、アーロンやユウトのように正々堂々としたキャラクターなら理解できる。しかし、『この海上都市で一番頭のいいと呼ばれている男』と『ロボット』が言うのにはさすがに違和感がある。

     ――・―――――――――――――――――・――
    「私の魔法は安定させることだ。重力場の乱れを安定させた」

     外部から加えられた力で歪んでしまった事象を強制的に安定させる力。
    「私はロボットだ。本来与えられた仕事を完遂してこそ価値がある。そこに一切の乱れがあってはならない。故に私は全ての異常イレギュラーを許さない」
     ――・―――――――――――――――――・――
     こんな短い間に「相手に自分の能力を言う」+「私はロボット。仕事を完遂してこその価値」と言ってしまっている。シナリオ上仕方がない部分があるのは分かる。しかし、違和感を感じたのには間違いないのですこし工夫をしなければならない気がする。

     ――・―――――――――――――――――・――
     パチンと指を鳴らすと、何もない空間がいきなりはじけた。いや、二人の周囲を舞う鱗粉が爆発したのだ。
    「がはっ……っ!!」
     ミズキとアリサの体はボールのようにバウンドし投げ出される。
    「今のはお仕置きだよ」
     どういう原理かはわからないが、奏音は精神操作以外の魔法を使っている。鱗粉をまるで粉塵爆発のように爆発させる。何かそういう力だ。
     ――・―――――――――――――――――・――

     鱗粉が爆発するのと粉塵爆発では大きく規模が違う気がする。少なくとも読者がイメージする爆発規模は違うだろう。

     ――・―――――――――――――――――・――

    「壊れちゃえ」
     
     その手を振り下ろす。
     直後、数百数千の爆発が起こった。

     ――・―――――――――――――――――・――


     プレイルームにて戦う奏音たちだが、プレイルームはもともとあったものでは無く、部屋と部屋の間に作ったものなのでそれほど大きくない広さのはず。爆発させた奏音も被害出そうだがそこは割愛。(できれば『魔獣化の影響で、細かい爆撃痕も大丈夫だった』とか欲しかった)

     ――・―――――――――――――――――・――

    「その服……そっか。そっちも爆発に合わせて爆弾を使ったんだね? 確か手榴弾持ってたよね?」
     奏音の言う通りアリサは鱗粉が爆発する寸前に手榴弾を起爆させ、爆風を相殺した。無論無傷というわけにはいかないが、それが生存の確率を大きく高める結果になった。

     ――・―――――――――――――――――・――
     ……現実的にできるのだろうか。目のまえに固まっていたならまだしも周りに散っていた鱗粉が爆発した場合は……。いや、魔法のある世界になにをというかもしれないが、アリサは魔法が使えないキャラなはず。百歩譲って仮に相殺できたとしよう。たぶんその爆発で自滅する……と思ったが、検索エンジンしてみると、この世には指向性の爆弾(爆風方向を決まっている爆弾)があるのでできるかもしれない。ただそう説明描写がないので、腑に落ちないところがある。できるかどうかは置いといて、ここはバトルの分け目になるシーンなのでもうすこし説得感が欲しい。

     三章全体としては登場人物もぞろぞろと出てくるので、最初『この登場人物全員分ちゃんと把握できるかなぁ』と心配したが、思いのほか違和感なく追えたので作者の力量に素直に感心した。
     しかし、四章は登場キャラクターも増えなおかつ複数人ずつ、いろいろな場所で戦っていて、しかもキャラが移動するので、ちょっと追いきれず混乱した。正直、私は読者にキャラ把握させる系統のことは苦手分野なので、助言もできないのが悔しい。四章はここ以外に指摘するところはないが、四章全体がこういうシーンばかりなので。

     五章・六章
     とくに指摘するような場所はない。というより、かなり面白い。今までの謎だった箇所が次々に解けていくのは圧巻だった。正直、これを読めただけで良かったと思ったほど。

     あれこれ言ったが、この作品はすでに完成度が高い。上で書いたことが事柄はもう一ステップ完成度を上げるにはどうすればいいのか、というのを私が必死に考えたにすぎないだけなので勘違いしないでほしい。

     最後に、この作品は拙作企画『埋もれた作品の本棚』に[非番]として掲載させてもらう。理由は、この作品が埋もれているようには感じなかったから、というのが一点。二つ目は、この作品ならではの特異性(作品の個性というよりこだわりと言ったほうがいいかも)が強く感じられなかったこと。そして、この作品は映像映えして商業受けするだろうということ。
     全部それ自体はいいことなのだが、この企画の趣旨が『読者に届かなかった、作者のどうしてもやりたかった、伝えたかったものを宣伝する』というものなので、そのどれかがクリアしていてほしかった。むしろ、宣伝したかった...(だからファンアート描いたりしたわけですが)
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