準と出会って初めての夏となった。
準の所属する情報部の部室はいつも賑やかだった。
「ソトッちとアミちゃんは海とか行かないの?」
部長の茉莉《まつり》がメガネを光らせる。
「アミちゃん……」
「だって彼ノがみ様だからアミちゃんでしょ? それともみーちゃん?」
「す、好きに呼ぶが良い……」
「じゃ、やっぱりアミちゃんだよね〜」
「何照れてんだよ彼ノがみ」
「う、うるさいの。あだ名など付けられたことがないから……つい」
「海か〜俺は彼ノがみさんの水着姿見たいな〜」
「お兄様! そんな破廉恥なことをおっしゃらないで下さい! そ、そんなに水着が見たいなら私が……」
「は? なんで秋菜が水着になるんだよ?」
「い、いえ……喜ぶと思って……」
「んん? なんで?」
芦屋兄妹がいつものようなやり取りをする。夏樹が秋菜の気持ちに気付く時はあるのだろうか? 見てみたいような……怖いような……。
「ん? どうしたのだ犬山。深刻そうな顔をして」
もう1人の部員、犬山はボサボサ頭を掻きながら話し始めた。
「実は……最近変な先輩に付き纏われているんだ」
「変な先輩? どこかの部活動なのか?」
「料理部の先輩だ。1度、依頼を解決してからやたら話しかけて来るようになった」
「犬山も大変だねぇ。それってどんな人なんだよ」
夏樹が同情するような顔をする。
「なんというか……やたら自信に満ち溢れた女子だ」
「女子!? う、羨ましい〜俺も女子に付き纏われたいぜ……」
「なっつん泣きすぎだよ〜」
茉莉が笑う。そして、何かを思いついたのか小さく声を上げた。
「そうだ! 夏休みに合宿しようよ♪ なっつんの別荘とか無いの? 海の近くでさ」
「あるけど使わせてくれるかなぁ」
「秋菜ちゃんも一緒にどう?」
小宮が小さく耳打ちすると、秋菜は顔を赤くした。
「み、みなさん! 別荘は私がなんとか致します! みんなで合宿致しましょう!」
「秋菜ちゃんに何吹き込んだんだよ小宮」
「別に〜。ところでソトッちはさ、見たくない?」
「何を?」
「アミちゃんの水着姿」
「ななななな、何を言ってんだよ!?」
「お、分かりやす〜い♪ アミちゃん。良かったね♪」
「ななななな、何を言っておるのだ!?」
「アミちゃんも分かりやすかったか……」
茉莉が苦笑いする。
準が私の水着を見たいだと?
準と目が合う。準は顔を真っ赤にして目を逸らした。
……。
水着、調べておこう。
◇◇◇
これで4つ目。私が見ていたのと同じような出来事。
彼女も、近い経験をしていたんだね。
幸せだったのかな……。
ん?
あ、観測者さん。
初めまして。もしくはどこかで会ってる?
ここに来たのは偶然? それとも、私を手伝ってくれてるの?
私は次を探しに行くよ。
またね。
https://kakuyomu.jp/works/16817330650693947965