更新停止作品である鋼城事変の続きについて

久々にカクヨムを開いたので、更新が止まった作品について書きます。

Twitterには書いているように、この数年で同人誌紙媒体でオリジナルの短編を四作品書きましたが、こちらの更新は完全に止まっていました。なぜ止めたのか、なぜ続きを書けないのかは、ある種の理由探しに終始するに過ぎない気がしているので特に書きません。

書かない代わりに、この記事では鋼城事変のプロット(三部作)を共有しようと思います。読んでくれた方々はこれがどうなるんだろうという思いを持って読んでいたと思っています。作品の続きが書かれないという面では申し訳ない部分がありますが、書かれることが当面ないので、少なくともどう終わらせるつもりだったのかというのを知る一端の情報として共有しておきます。

ネタバレを避けたいという考えの人も多いかもしれませんが、僕は「面白い話は結末を知っていても面白い。なぜなら作者はそれを知った上で楽しんで書いているからだ」という思いがあります。一応、万一にでも世界情勢含めてこれが受け入れられる、特に自分の余力があれば、続きを書こうとは思ってはいますが難しいので期待は一切しないでください。

期待に添えない結果かもしれませんが、僕なりの誠意として受け取っていただけると幸いです。
以下、脈絡がないメモに近い状態ですが鋼城事変プロットです。

        *

◆第一部
VRゲームCIOの開発者北浜によって、プレイヤーがゲーム中に囚われる事件が発生する。ベータテスターであったがCIOを買えなかったブラック企業社員の谷中はその様子をネット経由でリアルタイムに目撃する。
警察は直ちに対応を始める。初動の速さは開発会社と政府の癒着があると見ていたためだった。そのため、犯人逮捕は検察特捜部と刑事部捜査一課と捜査二課の縄張り争いとなる。捜査二課へのVR技術の説明で上京していた、京都府警察本部生活安全部サイバー犯罪対策課の古西らは全プレイヤーの病院搬送を担い、二日で完了させる。
プレイヤーを生かしゲームし続けさせるという政府の対応を見て、ああなっても自分はゲームをやりたかったということ(プレイヤーになれなかった後悔と、未だにプレイヤーになりたいという衝動)に谷中(HNねこけん)は気づき、VRゲームの自粛ムードを消し去るために自分たちで事件解決しようとネットで呼びかける(※この辺りまで完成、公開)。はじめはF5アタックぐらいから始まり、βテスターであった谷中のプログラムやログの共有によって、今からでも追加ログインをしようとするも、当然、被害者を増やしたくない警察に阻止される。
そんなネットの盛り上がりを見ていたクラッカー木崎(HNドラキチ)は谷中にきちんとゲームを止める、そういう攻撃をしようと掲示板に書き込み、提案する。攻撃には否定的だったが掲示板のノリ(木崎の自演)に押される形で、リーダーとなっていた谷中も渋々賛成に回る。
計画日に谷中が攻撃を宣言すると、同時に日本全体のネットが利用不能となる。谷中は自分がとんでもない事件の片棒を担がされてしまったと後悔する。接続が不安定化して一時間半後、総務省と警察は合同会見で即時強制で海外からのネットを切断したことを発表し、問題は急速に解決していく。
谷中は自分のできる範囲の責任を取らなければと考え、木崎の次の攻撃予告を手土産に警視庁に出頭し逮捕される。木崎とは何度か顔出しでネット通話していると思っていたが、リアルなVTuber的な技術が使われており(木崎は美少女アイドルグループの平均顔を用いていたが谷中は気づかなかった)、技術力の高いハッカーであること以外、わからなかった。谷中のVRゲームへの強い思いが報じられると、北浜は開発会社にベースプログラムや技術情報を提供したことを発表し、開発会社も賠償金確保のためにゲーム開発を行うと発表し、それを受けて谷中はVRの救世主と呼ばれる。有罪判決を受けるも執行猶予付きであり、控訴せず一審で決着、ゲーム世界に帰るための準備をする、と会見で言う。

◆第二部
CIO事件から半年が経った。わずか二年で市場投入された最先端製品には流通のための無茶があり、開発会社の役員から国会・防衛装備庁・総務省と幅広く逮捕者が出て一大疑獄となっていた。それ故、警視庁捜査二課のリソースは不足し、CIO人質家族に対する特殊詐欺(囚われたお子さんだけ救う方法があるので百万円振り込んでくださいみたいな事件)は後回しになっていた。それらの事件は報道で話題になってから、生活安全部サイバー犯罪対策課と京都府警古西が協力しようやく担当する始末だった。
古西が事件を調べ始めると、プレイヤーが一万人近くおり実名報道がカバーされなかったにも関わらず、個人情報がきちんと集められ、ピンポイントに攻撃されている事件であることが判明する。どのようにして情報が集められたのかを追っている最中、警視庁の建物で瞬停が発生する(自家発電で復帰)。
停電とそれに起因するネットの不調は関東一円で起きていた。古西がネットを確認するとCIO攻撃の予告が出ており、谷中が出頭時に明らかにした(そしてマスコミでも報じられていた)攻撃が行われたことが明らかになった(それ故、止めれなかった警察とマスコミは叩く)。そのため、停止したネットワークの復旧と非常用電源の復旧の二方面作戦がタイムリミット付きで必要となる。前回の上位回線DDoS攻撃の経験を買われて、古西は再び復旧部隊に回る。CIOプレイヤーを優先する警察に一部界隈からは反発の声が上がるも、ほとんどのプレイヤーを守り切る(病院内で暴徒化した患者に殴られ機器が外れ死亡したプレイヤーが生じる)。
CIOが対象となった二回のサイバー攻撃は、予告はあれど、どちらも不意打ちのように始まったものであり、今回の攻撃に至ってはネットの同意も得られていない。これは別の目的の隠れ蓑ではないか、と古西は考える。その線でチーム内でいくつかの候補を上げ、調査すると、金銭目的という線で今回の攻撃と前回の攻撃で利益を上げ、仮想通貨取引などの方法で出金している怪しげな口座が多数見つかる。それらの口座の個人情報はすべてCIOで囚われているプレイヤーの情報で取られたものであった(CIOプレイヤーの個人情報がこのような形で全面的に悪用されている)。
クラッカー木崎は国際的な犯罪集団xD341の一員であり、今回の行動もカネ目当てのものであった。大規模な攻撃の場合、別の形の足がつきやすい。そこで偽装としてCIO攻撃を行っていた。攻撃の中で、木崎は北浜の残りの相当額の金融資産の在り処を察する。その個人口座を奪おうと考えた木崎は、病院に対して専用線敷設のための担当者に応募してソーシャル・エンジニアリングを行う。病院のシステムに独自のツールを埋め込み、プレイヤーの通信をクラックし始めた。ゲームへの通信は既に監視されていたが、通信データの中身は監視されておらず、それゆえ、正常運用時ならGMがすぐに止めて対応できたはずのことが、遠隔操作の北浜が対応すると見ていた(これはネットにいて北浜の気持ちを多少理解していたからだ)。
木崎の読みは当たり、一病院のプレイヤー二十名近くが死亡するも、CIOの相当な情報、そして、北浜の具体的な行動がわかった。ネット上の行動がわかれば、隠し口座も追えると豪語する木崎であったが、北浜のアクセスは防衛医科大学校病院を踏み台にしていることがわかり、そして、それは自衛隊とグルでなければできないことに気づく。
木崎は防衛省の人間が来る前に(間一髪で逃げる)マンションから脱出、そのまま国外に逃亡する(Fシステムを回避する)。しかし、逃げ場のロシアは入国を拒否し、他国への出国も認めないという姿勢を打ち出し、外務省職員とともに国外退去でUターンし逮捕されることとなった。多くの事件を引き起こしたとはいえ、不正アクセス禁止法ぐらいでしか立件できず、とはいえ執行猶予なしの有罪と見られていた。だが、木崎は保釈時に漁船で出国し逃走し、警察は不完全燃焼で終わる。

◆第三部
ロシアから木崎と同じ飛行機で、日本人女性ハッカー四条が帰国する。偶然ではなく、四条こそが木崎逮捕の立役者であった。木崎の居住地特定こそ防衛省に出し抜かれたが、その後の足取りを掴み、ロシアで捕らえたのは四条のおかげだった。四条自身は元々CIO事件への協力を申し出ていたものの、どの程度被害を出してよいのかという被害者を顧みない姿勢に警視庁は拒絶していた。
だが、CIO事件からまもなく一年というところで、結果が出せていない警視庁は内部の権限争いをようやく諌め、古西らも犯人追跡のためのチームへ格上げされる。チームは早速、他のチームが受け入れない四条を引き込む。だが、それ故、他のチームとの情報交換も冷たくなる。が、四条は警視庁内でのスパイ行為で入手した情報、権限が曖昧なFシステムのデータ、木崎の入手した病院一つを潰したデータから、あっという間に現実における北浜の居場所の候補を出してしまう。
そこは前年から災害派遣の名目で自衛隊が居座っている村だった。パトカーを送ろうにも途中でトラブルが起きて(自衛隊が引き起こした)、自衛隊車両に牽引されて引き返すという失態をしてから、この村に対し警察はアンタッチャブルとなっていた。
温泉旅館への旅行者として四条と古西は村に潜入する。調査の結果、北浜は若葉という同じ研究室の後輩の補助を受けて、CIOに関わっていることが判明する。その若葉は北浜を止めにきたが、結局、ズルズルこのままとなっていたのに負い目を感じていた。そこに漬け込み、若葉によって北浜宅のネットワークに障害を起こし、近隣のホームセンターに部品を買いに行く、という名目で連れ出し、そこで逮捕する、ということが決まる。自衛隊の盗聴があるので、作戦は四条経由で警察に連絡する。
Xデー、旅館をチェックアウトした直後、車に乗り込んだタイミングで、若葉とその隣に男性が乗る車が前を通り過ぎる。運転席の古西は追いかけることを決断し、四条に作戦が早まったことを連絡するよう頼む。
ショッピングモールで、準備の整わないまま、四条・古西は北浜と遭遇する。四条は時間引き伸ばしのために、なぜCIO事件を引き起こしたのかという分析を語る。四条は、北浜の目的を「現実世界のあらゆる枠や法則を超越した世界を作り出すこと」、すなわち「世界を西洋的な二元論に落とし込み、神になること」が目的だと指摘した。北浜はそれを聞いて、それが真であった場合の感想を求めた。
四条はそれを否定的に答える。「自分は人間になりたい」からだ。人間と神様の違い、「努力で解決できることは努力で解決したいのが人間。努力で解決できないことを解決するのが神様」。神様はいてもいいが、CIOのデータは全てプレイヤー自身の身体にしている。つまり、VRの世界でも努力はできない要素を残している。
四条はバレリーナになりたくて、ロシアに行ったがその夢が叶わなかった。その夢の話で北浜を引きつける。
その間、古西は他のメンバーに現在地はどこだとスマホで連絡するも、まだ東京にいると聞く。四条に連絡を頼んだのに、なぜ彼らが動いていないのかわからないまま、四条が北浜をカフェテリアの一角で座って話そうか、と誘うところまで行く。北浜が承諾しかけたとき、それを止める声がする。警察ではなく自衛隊から出向者の青山(第一部のときからうまく出していく)であった。
「狙撃手に狙われている、伏せろ!」と叫ぶ。四条は今まで見せたことのない、笑顔を見せる。「残念、私の負けだ」と言う。「古西、四条を守れ!」と青山が叫ぶ。その瞬間、四条の頭から血が吹き出る。彼女は狙撃された。
青山は間に合わなかったと言う。ショッピングモールの大型テレビは特別ニュースとして、四条と古西に逮捕状が出たことを報じる。四条の本当の目的は北浜の殺害による国際特許の合法的な消去であった。「日本」の天才がVRを独占していることを世界は受け入れなかったのだ。だから、秀才の四条を「世界」は使おうとした。
青山は「日本のGDPが今何位かわかっているだろう。もうこの国には天才を法律で制限する余裕がなくなっている。いや、もう宗教が薄くなったこの全世界、どこも天才を制限しようなんて思っていない。彼女だってそうだったのだ」と言う。
古西はもっとやるべきことがあったのではないかと思う。四条が「それでも、この世界は神様のものじゃない。人間のものだ。皆のルールを守るべきだ」と言ったのを思い出す。
結局、そこで北浜の追跡は終わる。ここで北浜をひと目だけ見た古西だけが残され、そして、逮捕される。拘置所で弁護士を通じて四条がなぜそこまでのことをしたのかを知らされる。ロシアは四条のために体を用意していた。彼女が持っていなかった、全身がすらっと長いバレエ向きの体を持っている美女、そこへの脳移植を行う準備がされていたというのだ。
そのとき、古西は仮想空間と現実世界の差を垣間見た気がした。
結局、古西は恣意的な裁判員裁判で死刑とも言われていた刑罰よりは遥かに軽い懲役刑になる。ただ、これによって警察の権威は失墜し、テロなどの重大事件は防衛省から派生した国家特別警察が担う切っ掛けとなった。これの結末をもって、一連の事件を日本の政治体制が変わった故、事変と呼ぶことになった。
古西は最後に最悪の国になる、と吐き捨てる。

(終わり)

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