【朗読劇】夏祭り 第1話
https://nana-music.com/sounds/04376cf4/今でも忘れられない、あの夏の日の出来事を。僕は今でも思い出すんだ。そう、あれは高校三年生の頃の出来事だ。
何時もの僕は友達に誘われ、近所で行われる花火大会へと向かった。お祭りの屋台でごった返すひと達を尻目に、僕は友達と約束した八代神社の一本杉へと急いだ。
その途中で僕は、同級生の女の子を見かけたんだ。その子は僕と幼馴染の女の子で、僕と違って友達皆んなから慕われ、皆んなが憧れる、そんな存在だった。
だから僕は、同じ高校に通って居たけど、高校に進学してからは、話し掛けるのにちょっと悪い気がしたんだ。
今日は花火大会で、お祭りと言うこともあり、彼女は浴衣姿に草履と、いつにも増して艶やかな姿だった。
すると彼女の草履の鼻緒が切れ、困った表情を彼女は浮かべていた。僕は彼女に声を掛けていいのか迷った。そんな彼女は僕を見つけて、救いを求める眼差しをしたんだ。
僕は胸がドキドキして、頭が真っ白になってしまった。
つづく…
【朗読劇】夏祭り 第2話
https://nana-music.com/sounds/03c1b292/友達と約束した花火大会に向かう途中、僕は幼馴染の女の子と遭遇した。そして彼女から声を掛けられたのだ。彼女の名前はサツキ、小学生時代からの幼馴染だ。
サツキは花火大会の今日、浴衣姿に草履を履いて来ていたのだが、草履の鼻緒が切れ、僕に助けを求めて来た。
彼女の視線を感じた僕は、頭の中が真っ白になりながらも、彼女の方へと人混みを掻き分け、近づいて行ったのだ。
するとサツキから、こんな言葉を掛けられた。
「ハヤトくん、久しぶり」「わたしの草履の鼻緒が…」
そう言うとサツキは僕に、自分の履いていた片方の草履を、僕に手渡したのだ。僕は草履の切れた部分を観て、サツキにこう言った。
「サツキ…」「慣れない草履、履いて来るからだよ」「しょーがない…」
こう言って僕はポケットからハンカチを出し、鼻緒の切れた部分を直していた。その間、サツキの右手が僕の左肩に寄りかかり、僕の心臓の鼓動はドキドキしていたのだ。
そして、この鼓動をサツキに気づかれないか、僕は気が気ではなかった。
つづく…
【朗読劇】夏祭り 第3話
https://nana-music.com/sounds/03ee0474/幼馴染のサツキから渡された草履を、僕はドキドキしながら直していると、サツキから、こんな言葉を掛けられたのだ。
「ハヤトくん」「ハヤトくん、私のこと学校で避けてるでしょ」
こう言ってサツキは、僕の顔を覗き込んだ。僕はドキドキしながらも頭の中で、何と答えたら良いか言葉を探した。
そしてサツキに、こう言ったのだ。
「サツキ…」「サツキは、クラスの人気者だからさぁ」「話し掛けにくいんだよ…」
そう僕が言うと、サツキは僕から草履を受け取り、嬉しそうな顔をして、こう言った。
「ハヤトくん」「やっぱりハヤトくんって、手先が器用なんだ…」
この時、僕は嬉しかった。それは幼い頃、一緒に遊んだ時の事を、サツキが覚えていてくれて居ると思ったからだ。
僕は試しに、サツキにこう言った。
「サツキ…」「何で知ってるんだよ…」
サツキに僕がこう言うと、サツキは嬉しそうに、こう答えたのだ。
「ハヤトくん」「昔、一緒に折り紙したでしょ」
この言葉を聴いて、僕は嬉しくなった。するとサツキは僕に向かって、こう言ったのだ。
「ハヤトくん」「昔みたいに、一緒に金魚すくいしようよ?」
僕は友達との約束が気になったが、こう言ったのだった。
「サツキ…」「わかったよ、サツキには負けないからな」
そう言うとサツキは、にっこり笑った。藍色の浴衣と髪を結い上げたサツキの姿はとてと新鮮で、見惚れてしまった。
つづく…
【朗読劇】夏祭り 第4話
https://nana-music.com/sounds/03f6a953/サツキから金魚すくいの誘いを受けた僕はドキドキしながらも、サツキの横に並んで、一緒に屋台へと向かった。
するとサツキが僕に、こう言ったのだ。
「ハヤトくん」「ハヤトくん、昔から金魚すくい上手だったよねぇ」
そうサツキが言うと、僕は少し照れながらサツキにこう言った。
「サツキ…」「サツキの方こそ、成績良いし運動も出来るから…」
僕がこう言うと、サツキは僕の顔を見つめてこう言ったのだ。
「ハヤトくん」「せっかくのお祭りなんだから、学校の話は…」「わたしとじゃ、嫌だったかなぁ…」
僕は焦って、サツキにこう言葉を掛けた。
「そんな事ないよ、サツキ…」「ごめん…」
そう僕が言うと、サツキはちょっと笑いながら僕にこう言ったのだ。
「ハヤトくん、冗談よ」「でもハヤトくんが、わたしの事どう思って居るか知れて嬉しいな…」
こうサツキが僕に言うと、僕も嬉しくなったのだ。それはサツキが自分の事を、気に掛けてくれて居ると言う事が分かったからであった。
こうして二人は屋台まで、話に花を咲かせ向かったのだ。それはまるで、周りから見ると恋人のように見えたのだった。
つづく…
【朗読劇】夏祭り 第5話
https://nana-music.com/sounds/03f82b68/サツキと一緒に金魚すくいの屋台へと向かった僕は、屋台まで来ると屋台のおじさんに、こう話し掛けた。
「すいません」「ふたり分の網(ポイ)を…」
こう僕が屋台のおじさんに話し掛けると、屋台のおじさんはふたりに向かってこう言ったのだ。
「お、若い衆」「今日は彼女とデートか…?」
そう屋台のおじさんが、僕達に向かって言ったのだった。その時、僕は何と答えたら良いか迷った。するとサツキは、屋台のおじさんに向かってこう答えたのだ。
「わたし達、幼馴染なんです」「今日は昔みたいに、デートかな…」
サツキのこの言葉を聴いたハヤトは、サツキが自分の事を幼馴染として見ているのか、それともひとりの男性として見ているのか、とても気になったのだ。
そして屋台のおじさんから渡された金魚すくいの網(ポイ)と椀を、僕がサツキに手渡すと、サツキはにっこり笑い嬉しそうな顔をしたのだった。
そのサツキの表情を見て、僕はサツキにこう言ったのだ。
「よーし、サツキ…」「昔みたいに、金魚すくい勝負だからなぁ…」
そう僕がサツキに言うと、サツキも僕に向かってこう言った。
「わたしも、ハヤトくんに負けないんだから…」
この時、僕は幼い頃にタイムスリップしたかの様な錯覚に陥ったのであった。
つづく…
【朗読劇】夏祭り 第6話
https://nana-music.com/sounds/03f9abc0/お祭りの屋台で、おじさんから金魚すくいの網(ポイ)と椀を受け取った僕とサツキは、昔のように金魚すくいの勝負をする事になったのだ。そして僕がサツキにこう言葉を掛けた。
「サツキ…」「この勝負、勝ったらどうする…?」
こう僕が言うと、サツキは僕に向かってこう言ったのだ。
「それじゃ、ハヤトくん」「あんず飴を賭けて、勝負しようよ…」
こう嬉しそうにサツキは僕に答えた。その言葉を聴いた僕はサツキに向かって、こう言い返したのだ。
「サツキ…」「よーしわかった、サツキには負けないぞ!」
こう僕はサツキに言い、僕はサツキに良い所を見せようとデメキンの金魚ばかり狙って、掬(すく)おうとしたのだった。
するとサツキは僕に向かって、こう言ったのだ。
「ハヤトくん」「その黒いデメキン、難しいよ…」
こうサツキが僕に言うと、僕はサツキに向かってこんな風に言った。
「 サツキ…」「俺の方が上手いから、これはハンデだよ!」
こう真剣な眼差しで、僕はサツキに答えたのだ。その時、既にサツキは二匹の赤い金魚を掬(すく)って居たのだった。
しかし僕は、サツキに良い所を魅せたい一心でデメキンばかり狙い、一匹の金魚も掬(すく)う事が出来なかったのであった。
つづく…
【朗読劇】夏祭り 第7話
https://nana-music.com/sounds/03fa6a4e/サツキと金魚すくいの屋台で金魚すくいの勝負をした僕は、サツキに良い所を魅せようとデメキンばかり掬(すく)って居たのだ。
しかし僕は、なかなかデメキンの金魚を掬(すく)う事が出来ずに、サツキとの勝負に負けてしまった。そして一匹の金魚も掬(すく)えずに、網(ポイ)は破れてしまったのだ。
僕は悔しくて、サツキにこう言った。
「ちっくしょー」「このデメキン、活きが良すぎるよ…」
こう僕がサツキに向かって話し掛けると、それを観ていたサツキは僕に向かって、こう言ったのだ。
「ハヤトくん」「ハヤトくん、調子に乗ってデメキンばかり掬(すく)ってるんだもん…」
こうサツキが僕に笑いながら言ったのだった。すると僕はサツキに向かってこう言い返した。
「おっかしーなぁ」「昔はもっと、上手かったんだけどなぁ…」
僕がサツキにこう言うと、サツキはすかさずこう言ったのだ。
「ハヤトくん」「金魚すくいの約束、覚えてるよねぇ」
こう僕に向かってサツキは言ったのだった。僕は悔しかったがサツキとの金魚すくいの勝負に負け、サツキにあんず雨をご馳走する事となったのだ。
こうしてふたりは、あんず飴の屋台の方へと向かったのであった。
つづく…
【朗読劇】夏祭り 第8話
https://nana-music.com/sounds/03fb2849/金魚すくいの勝負でサツキに負けた僕は、サツキにあんず飴をご馳走する為、ふたりであんず飴の屋台へと向かった。
その途中、僕のスマホの着信音が鳴ったのだ。僕は慌てて自分のスマホをポケットから取り出し、そして見て観る事にした。
すると「LINE」のメッセージで有る事がわかったのだ。僕がその内容を確認すると、八代神社の一本杉で約束していた友達からの連絡で有る事がわかった。
僕がその内容を読むと、次の様な内容であった。
「ハヤト、約束の18時過ぎてるぞ!」「早く来いよ、連絡待ってるからな…」
こう書かれてあったのだ。この様子を観て居たサツキは、僕に向かってこう言った。
「ハヤトくん」「もしかして今日のお祭り、友達と約束してたのかなぁ…?」
サツキが僕に向かってこう言うと、僕はサツキの方を向いてこう答えたのだ。
「ごめんサツキ…」「実は友達のユウタと、花火大会の約束を…」
こう僕がサツキに言うと、サツキは僕に向かってこう話し出した。
「ハヤトくん」「わたしも一緒に行って、いいかなぁ…?」
サツキはこんな風に僕に言ったのだ。僕はとても焦った、そしてどう答えたら良いか迷ったのだった。
しかしあんず飴の件もあり断る事が出来ず、一緒に八代神社の一本杉へと向かう事になったのであった。
つづく…
【朗読劇】夏祭り 第9話
https://nana-music.com/sounds/03fbee3b/ユウタからの「LINE」を受け取った僕は、サツキと一緒にユウタが待つ一本杉へと向かった。その途中、僕はサツキが自分の事をどう思って居るのか、とても気になったのだ。
そしてこんな言葉をサツキに投げ掛けた。
「サツキ…」「金魚すくいの屋台で、おじさんに言った言葉、覚えてるか…?」
こう僕がサツキに向かって言うと、サツキは何の躊躇(ためら)いもなくこう答えたのだ。
「ええぇ…」
すると僕は、恐るおそるこう切り出した。
「ええぇ、て…」「それは幼馴染って事かなぁ…それとも、ひとりの男性としてデートしてるって意味かなぁ…?」
こんな言葉が僕の口から出て来たのだ。自分でも不思議なくらい、この言葉がすんなり出て来た。するとその言葉を聴いたサツキは少し間を置いて、こう答えたのだ。
「ハヤトくん、幼馴染なんだから」「わたしの気持ち、わかるでしょ…」
サツキは僕に向かってこう言った。この時の僕の気持ちは複雑だった。それはサツキに対する自分の気持ちが、自分でもハッキリとはわからなかったからだ。
しかしサツキと一緒に居ると昔の頃のように、素直に自分を出せるのは間違いない。こうしてふたりは、一本杉がある八代神社の階段を登って行ったのであった。
つづく…
【朗読劇】夏祭り 第10話
https://nana-music.com/sounds/03fd8e64/友達のユウタが待つ一本杉へと向かった僕とサツキは、八代神社の階段を登っていたのだが、その途中でサツキの草履の鼻緒がまた切れてしまった。
そしてサツキは階段の途中で、しゃがみ込んでしまったのだ。それを見た僕はサツキにこう言った。
「サツキ、大丈夫か…」「その草履、ちょっと見せてくれる…?」
こう僕がサツキに言葉を掛けると、サツキはとても悲しそうな表情をして僕にこう答えたのだ。
「ハヤトくん、ごめん…」「せっかくハヤトくんが直してくれたのに…」
サツキがこう言うと、僕はサツキにこんな言葉を掛けた。
「俺の方こそ、ごめん」「ちゃんと直せなくて…」
僕は申し訳なく、サツキにこう言ったのだ。そして僕は草履の鼻緒が切れた部分を見てサツキにこう言った。
「サツキ…」「この草履の鼻緒、簡単には直せないよ…」
こう僕がサツキに言うと、サツキは今にも泣き出しそうな表情を浮かべたのだ。僕は何とかしなければと思い、咄嗟(とっさ)にこんな言葉をサツキに言った。
「サツキ…」「階段の上まで、俺が背負って行くよ…」
この言葉を聴いたサツキは、少し嬉しそうな表情を見せ頷いたのだ。こうして僕とサツキのふたりは、ユウタの待つ八代神社の一本杉へと向かったのであった。
つづく…
【朗読劇】夏祭り 第11話
https://nana-music.com/sounds/03ff66e4/サツキを背中に背負いユウタの待つ八代神社の一本杉へと向かった僕は、神社の階段を一段いちだん登って行った。
するとサツキは申し訳なさそうに僕にこう言ったのだ。
「ハヤトくん、ごめんね…」「重くない…?」
サツキがこう言うと、僕はサツキに向かってこう言い返した。
「大丈夫だよ、サツキ…」「あんず飴、ご馳走出来なかったし…」
こう僕はサツキに答えたのだ。その言葉を聴いたサツキは、僕の背中の背後から僕をギュッと握りしめたのであった。
この時、僕はサツキに何も言わなかったが、自分のサツキに対する感情を自分で確認する事が出来たのだ。
こうして僕は息を切らし、階段の上まで登ったのであった。するとサツキは僕に向かってこう言った。
「ありがとう、ハヤトくん」「大丈夫…?」
サツキは僕に申し訳なさそうに聞いたのだ。この時、僕はサツキに笑顔を作ってこう答えた。
「大丈夫だよ、サツキ…」「昔、サツキをよく背負ってたから…」
こう僕がサツキに言うと、サツキも嬉しそうに微笑んだのだ。そしてふたりは暫く八代神社の階段の上で昔の頃を思い起こし、見つめ合っていたのだった。
つづく…
【朗読劇】夏祭り 第12話
https://nana-music.com/sounds/03fff12c/八代神社まで辿り着いた僕とサツキは、ユウタが待つ八代神社の一本杉へと向かおうとした。するとサツキは僕に向かってこう言ったのだ。
「ハヤトくん」「わたしは大丈夫だから、先に行って…」
こうサツキが僕に言うと、僕はサツキにこう言い返した。
「サツキ…」「サツキひとりにして、置いて行けないよ…」
そう僕はサツキに言ったのだ。するとサツキは僕に申し訳なさそうに、こう言葉を発した。
「でも…」「ユウタくん、待たせちゃてるし…」
こんな言葉を僕はサツキから投げ掛けられたのだ。僕はこの言葉を聴いて、サツキに向かってこう言った。
「サツキ…」「今日の花火大会ここから、ふたりで観よう…」
そう僕はサツキに言葉を掛けたのだ。サツキは心配そうに僕にこう言い返した。
「ユウタくんとの約束、大丈夫なの…?」
こうサツキが僕に言うと、僕はスマホをポケットから取り出しユウタに電話したのだ。そして僕はユウタとこんな会話をした。
「もしもし、ユウタ」「ハヤトだけど、ちょっとお腹が痛くて…」
こう言って僕はユウタとの約束を断ったのだ。そして僕とサツキは八代神社の境内から、ふたりで花火を観る事になったのであった。
つづく…
【朗読劇】夏祭り 第13話
https://nana-music.com/sounds/0400cea5/八代神社の境内から花火大会の花火を観る事になった僕とサツキであるが、ふたりは幼い頃、一緒に花火をした時の事を思い起こし、こんな会話を交わしたのだ。
「ハヤトくん」「昔、一緒に花火した事、覚えてる…」
こうサツキが僕に言って来たので、僕はサツキにこう答えたのだ。
「サツキ、覚えてるよ」「一緒に線香花火、競争したよなぁ…」
僕は笑顔でこうサツキに向かって言った。その時、サツキも嬉しそうに僕にこう話し掛けたのだ。
「ハヤトくん、いっつもムキになって」「負けたらもう一回、勝負だって言ってたよねぇ」
このサツキの言った勝負とは、線香花火の火の玉がどちらが長く最後まで落ちずに居るかと言う事を言って居たのだった。
そんな話をふたりで暫くして居ると、ふたりの目の前に天高く大きな花火大会の花火が上がった。
これを観てサツキは僕にこう言葉を掛けた。
「ハヤトくん」「ハヤトくんとふたりで、花火が観られて良かった」
このサツキの言葉を聴いた僕も、今観ている花火と幼い頃、サツキと一緒に線香花火をした時の事を重ね、サツキの事をとても愛おしく感じたのだ。
しかし僕はサツキに自分のこの気持ちを悟られまいと、自分の心の中にこの感情を押し込めたのであった。
つづく…
【朗読劇】夏祭り 第14話
https://nana-music.com/sounds/0401b292/八代神社の境内から花火大会の花火を観ていた僕とサツキは、花火を観ながらこんな会話を交わしたのだ。
「ハヤトくん」「昔、一緒に観に行った花火大会覚えてる…?」
こうサツキが僕に言うと、僕はサツキに向かってこんな言葉を掛けた。
「サツキ…」「もしかして、長岡の花火大会に行った時の話…?」
僕がサツキにこう言うと、サツキは嬉しそうに僕にこう言葉を発した。
「ハヤトくん、あの時」「ハヤトくんが、わたしに言ってくれた事、覚えてる…?」
こうサツキが僕に言葉を掛けると、僕はサツキに向かってこんな風に言った。
「サツキ…」「昔の事だから、覚えて無いよ…」
僕はこうサツキに惚(とぼ)けたのだ。するとサツキは僕に向かって、こんな事を言った。
「ハヤトくん」「あの時、ハヤトくんからの気持ち」「今でもわたし、同じだから…」
この言葉を聴いた僕は嬉しくなり、僕もサツキにこう言ったのだ。
「サツキ、俺もだよ」「今でもサツキの事、好きだよ…」
僕は自分の気持ちをサツキに、正直に伝えたのであった。
つづく…
【朗読劇】夏祭り 第15話
https://nana-music.com/sounds/040298c1/幼い頃、ふたりで観た長岡の花火大会の話をしていた僕とサツキはその当時、僕がサツキに言った言葉をサツキは覚えていてくれたのだ。
そして、その時の僕の気持ちが今でも変わっていないか、サツキは僕に確かめたのだった。僕はサツキが自分に対する好きだと言う感情が有る事を確認する事が出来た。
すると自分の中に押し込めていた感情が言葉として溢れ出たのだ。その言葉とは次の様な言葉であった。
「サツキ、俺もだよ」「今でもサツキの事、好きだよ…」
満天の夜空を染めあげる花火がふたりを照らし、その輝きと音でふたりの心は突き動かされ鼓動となって鳴り響いた。
もう言葉にする必要も無い、ふたりは時折見つめ合い、そして花火を眺めて居たのだ。この夏の花火大会から僕とサツキの恋は再び始まった。
だがサツキは都会の大学に進学してから、僕とサツキは次第に連絡を取る事も無くなって行ったのだ。
そして僕は親の家業を継ぎ、今では地元の新潟市で小料理屋を営んで居る。友達の話によるとサツキは東京の大学に進学し、今では結婚して子供も居るらしい。
そんなサツキは僕に初恋を教えてくれた大切な想いでの女性として、今でも僕の心のアルバムの中に大切にあるのだった。
終わり