タイトルのドイツ語62話~77話

「革命の焔」各話タイトルのドイツ語と作中の小ネタを解説するお節介なコーナーです。
62話~77話までのネタバレを含むのでご注意ください。



62. Archē
アルケー、始まり、原初
古代ギリシア語から。
古代ギリシア哲学では万物の始源を論じ、水とか火とか数とか様々な説がありました。

63. Kuken
クーケン、ひよこ

64. Bestie
ベスティー、野獣
英語では同じ綴りで俗に親友を意味しますけどね。

65. wilde Wiese
ヴィルデ・ヴィーゼ、原野、自然の草原

66. Markgraf der Wüste
マルクグラーフ・デア・ヴュステ、砂漠の辺境伯
彼女はいかにも悪魔というビジュアルの持ち主です。悪魔とは基本的にキリスト教や宗教上の概念ですが、キリスト教からすると全員悪魔であるフェーゲライン人の中でも変わり者扱いの種族のようです。
しかし、彼女は皇帝の思い入れある旧都を任されるほどの信頼を置かれているようです。
フェーゲラインの長命種の間では男女の区別に意味がないので、ひとを指す言葉は男女を区別しないことになっています。

コニーの『有り難い名』
Konstanzコンスタンツの名はラテン語由来で永遠不変を意味する。そもそもキリスト教に縁深いラテン語はフェーゲライン人にとっては不愉快な響き。そんなラテン語由来の名、しかも永遠不変を意味する名をフェーゲラインの旧い血脈をもつ獣につけるなんてと辺境伯は皮肉っているのです。
砂の辺境伯も石の伯爵もコニーのことをよく知っていて陰口を叩いています。

67. Strahl der Katastrophen
シュトラール・デア・カタストローフェン、災厄の光
アーテファクト4の二つ名の一つ。

68. Graf des Steins
グラーフ・デス・シュタインス、石の伯爵
彼が漂わせる死臭は香水かもしれない。

69. Meteor
メテオア、流星

Serket
セルケト
古代エジプト神話のサソリの女神。イシスの眷属でもあるとか。
砲塔セルケトが緑色の装甲をまとっているとあるのは、セルケトが大戦艦オシリスの一武装であり、オシリスの外装が緑だから。
神話のオシリス神の肌は生命を意味する緑で塗られているそうな。

70. Schwert und Prinzessin
シュヴェルト・ウント・プリンツェシン、剣と皇女
おとぎ話みたいなタイトル。
皇女グンヒルドGunhildの名付けは最後まで悩みました。結局古くてヒルデガルトと同じ要素を持つ名前にできて収まりが良かったです。
アーテファクトの一つ、王剣は「剣」と「王権」を掛けた訳語のつもりです。

Artefakt 4
アーテファクト・フィア
今は恐るべき姿を持つアーテファクト4も、創られた当初は愛らしい少女の姿を持っていたようです。ヒルデガルトとは似ていないと思います。

71. Aaru
アアル、古代エジプトにおける死後の楽園、葦の原野とも

72. Erbe des Vaters
エルベ・デス・ファータース、父の遺産

ハインリヒが冗談で言っている「ベルリン封鎖」は第二次世界大戦後の冷戦突入期、ベルリンがソ連によって封鎖された歴史的事件のことを言っています。当時はベルリンから多くの人が西側に逃げ出していました。
ヒルデガルトの身辺を嗅ぎ回るアリシアが揶揄されているのは、大衆紙Bildに転職したのか?と。ZDFと双璧をなすARDという国営放送からすると、ビルト誌は写真がいっぱいの硬派とは言い難いメディアです。

最後に触れられたヴィリー・ブラント・ハウスは、ハインリヒとオデットが訪れたSPDの本部。SPDが輩出したかつての連邦首相、ヴィリー・ブラントの名を冠しています。
作中では一応CDUが現在の首相を輩出しているということで、老獪な首相は「SPDの本部に行っておきながら、CDUの頭領とも言える私に会いにこないのは何でやねん」と冗談を言っているわけです。

73. Wolf, der den Mond jagt
ヴォルフ、デア・デン・モーント・ヤークト
月を追う狼
コニーのキャラクター像は、恐れられる狼として、北欧神話のフェンリルやその子孫スコル、ハティのモチーフを散りばめています。

Hermanubis
ヘルマヌビス、古代ギリシア語から
古代ギリシアに輸入されてヘルメスと習合されたアヌビス神の名です。イシスも古代ギリシア語での呼称ですが、地中海を挟んだ古代エジプトとギリシアの文化的つながりはロマンがありますね。
生まれ変わったコニーの呼称は、白い狼の神であるウェプアウェト(ウプウアウト)と悩んだんですが、呼称がカッコよくないのでネームバリューに勝るアヌビスに流れてしまいました。

Artefakt 2
アーテファクト・ツヴァイ
白い門の鍵。名前とは裏腹に、レガリアとして宝珠の形をしています。王様の肖像が王笏と一緒によく持ってる十字のついた球のことです。
アーテファクトはどれも用途と使い方が一致しないようになっています。

74. Schlafende Monarch
シュラーフェンデ・モナルヒ 眠れる君主
作中では性別不明の存在はあえて「かれ」と表記して呼称しています。
眠りの君の公的な姿はエルダ・ジレーネが作ったビスクドールで、豪奢なロココ様式のアビ・ア・ラ・フランセーズで着飾った君主のイメージです。俗世の皇帝などと違ってあんまり軍人っぽさがない優美な姿です。人形の躰や服は繊細で壊れやすいので自ら戦ったりしないようです。
2羽のオオガラスは北欧神話のオーディンの眷属であるワタリガラスです。

kemt
ケメト、黒い大地
古代エジプトにおいて、ナイル川の恩恵を受けた湿っていて豊かな土壌を意味する言葉。対義語はデシェレト=赤い砂漠。
イシス神はナイルの増水の予測に用いられた星シリウス(ソティス)とも同一視されるし、満干するナイルはオシリス神の死と再生になぞらえられるとか、黒い大地とはかれらに縁深いワードです。

75. Großherzog des Waldes
グロースヘルツォーク・デス・ヴァルデス、森の大公
エルダ・ジレーネErda Sireneの称号の一つ。彼女の名エルダは、北欧神話の大地と叡智の女神ヨルズ、ジレーネは古代ギリシアの海の怪物セイレーンを由来とします。
(モチーフの混線は昔作ったキャラクターにありがち)
眠りの君がやって来る前の北部ヨーロッパの人間ですが、1万年も前には体系的な神話や文明が存在してないので、彼女が北欧神話やケルト神話の神々を信仰していたかはあえてぼかしてあります。
彼女が爪弾く縦長のリラは、北欧の伝統楽器です。楽器自体は彼女よりずっと後の時代のものですけど。
彼女が自分のことを「泉の乙女」だとなぞらえる冗談を言っているのは、アーサー王伝説に象徴的な「湖の乙女」を示唆しています。
ヨーロッパでは文明の発達と森の開拓は切り離せない関係にあり、人とそれ以外を区別する概念でもありました。フェーゲラインは開拓され尽くしたドイツからすると「森」に見えますが、フェーゲライン内地の実情は、原生林のほとんどが文明の発達に伴って開拓されたり戦乱で破壊されています。
エルダが住まい、眠りの君の霊廟である原初の森は「森の中の森」というわけです。
ちなみにドイツには野生のクマがいない(絶滅している)らしく、大きなカルチャーショックを受けました。ドイツ人って緑の中を散歩するのが好きで、ヌーディストが全裸で寝転んだりしているらしいですが、そりゃクマがいない森なんて全然怖くないわけですよ。

76. Krone aus Mistel
クローネ・アウス・ミステル、ヤドリギの冠
ヤドリギは古代ケルトやゲルマン民族の間で、聖なる樹木として生命や永遠を意味します。
眠りの君がヤドリギを編んで作った冠は、土着の信仰とかれが秘める南方の信仰の融合を象徴しています。

異界のものを食べたら元の世界に戻れなくなる、というヨモツヘグイの考え方は古代日本にもありますが、古代ギリシアのハデスとペルセポネの神話にも見られます。フェーゲラインのもの、特に水を飲むとは神の躰を食むこと、と散々聞かされているのに、誰か分からないひとから杯を受け取って飲み干しちゃうヘルマンは、わざとなのか天然なのか分からないですね。

77. den goldenen Kelch
デン・ゴルデネン・ケルヒ、その黄金の杯を。
杯を差し出し、望みを叶える輝ける泉の君。
キリスト教に言う聖杯もイメージしています。飲めと杯を押し付けてくる泉の君、まさにアルハラ(アルケーだけに)

コメント

コメントの投稿にはユーザー登録(無料)が必要です。もしくは、ログイン
投稿する