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ヴェアヴォルフ/訪問者 の小ネタと裏話

こんにちは。海先です。

今回は二作品分、語っていこうかなと思います。

①ヴェアヴォルフ
 ワーウルフとか狼人間って言った方がシンプルですが、私個人がドイツ語を数年間だけ学んでいたことがあるので、かっこつけてドイツ語読みにしてみました。
 西洋の怪物の有名どころで言えば、フランケンシュタインが生命と人工生命のギャップで苦しむ怪物で、吸血鬼が死と不死のギャップ、転じて生と死のギャップを持ち続ける怪物なら、狼人間は人と怪物のギャップで苦しむ怪物だと思います。

さて。この詩はもともと、知り合いの作曲を趣味としている人になんか書いてよ!と言われて書いたものでした。なので読んだら大体わかるとしか言いようがなかったりします。
強いて言えば、実は各ブロックごとに2行ずつ文字数を合わせてあります。

②訪問者
 最初はホラーとして書こうと思っていましたし、話の流れを雑に思いついた時に書き殴っているメモ帳にもホラーっぽく書いてありました。それに『今昔物語集』も最初は出て来るつもりはありませんでした。最初の段階では、本の内容は別になんでもよかったんです。
 まあ、何故だか書いてみると想像と全然違う話になることってありますよね(笑)

 『今昔物語集』の話ですが、これは実際に存在しています。巻第三十の第八にあるので、よかったら元の話を読んでみてくださいね。
 主人公の栞が感じた疑問については、割と私は他の古文作品にも思っています。古典の中の人って何故だかよく泣くし、悲しみに暮れてそのまま儚くなる印象がありますよね。
 今回は亡くなった妻に添い伏してそのまま亡くなったとのことなので、ご遺体の腐敗のことを思えばそんなに日を置かずに亡くなっているはずなんですよね。じゃあ、亡くなるに関してその直接的な原因がやっぱりあるんじゃないかな、というのが、この話に今昔物語が絡んでくる理由です。
結局のところ、最後の一文が言う通り、
「亡くなった姫君が寂しさのあまりに連れて行ったのかもしれないなあ」
と思ったのがこの結末になるきっかけでした。それに気付くと多少ホラーですが、元の物語を読んでみると姫君を連れ去った男からすれば本望だったかもしれません。姫君も作中の歌で男を思っていることを明かしていますし、男が倒れるまでに悲しみに暮れてしまったのはその和歌を見てからでした。姫君がいるならどこででも良いと言い切った男ですから、多分あの世でも大丈夫でしょう。

 栞は一年前に渉を失ってから、『今昔物語集』でいうところの男の立場になって悲しみに暮れつつ、生き物の本能として生きることが染み付いているから生きているだけのような状況でした。この一年は、明らかに元気のない栞を見ている渉からしても、孤独も相まって苦しい時期でした。狂ってもおかしくないですよね。
 それでも渉は一年間待ちました。喜びの日が深い悲しみの日になるあの日に栞と再会することで、栞にとっての自分の命日を、二人にとっての始まりの日にしたかったのです。これは本当に作品内で明かす必要ないな、と思い推敲段階で消しました。

 次の小ネタとして、なんで渉がプロポーズに桃の花を差し出したかについてを。桃の花言葉には、「チャーミング」「気立ての良さ」「天下無敵」「私はあなたの虜」というものがあるそうです。
きっと、渉にとっての栞は「チャーミング」で「気立がよく」、隣にいるだけでどんな孤独も耐えられる「天下無敵」の状態にしてくれる女性で、まさしく「栞の虜」だったのでしょうね。
 もともと、書き始めた段階では桃の花だとは決まっていませんでした。ただ、春先に売られているもので、可愛らしい花が良いなというイメージで考えていました。
 プロポーズなのに何故指輪じゃないか。これは渉さんが栞の両親に拒まれて焦っていたからでしょうね。もともと二人が両親の元に行ったのはプロポーズ後の挨拶のためではなく、同棲してしばらく経ったので、結婚を考えて付き合っていますよ、という報告のためでした。そしたらとんでもないくらい大反対された。
でも栞のことを諦められない。栞も両親を気にしている。というわけで、急いでプロポーズをして自分の気持ちを伝えようとしたのが、桃の花でのプロポーズでした。栞の視点からすれば、プロポーズが指輪だろうが桃の花だろうが、自分が不安に思っていることに渉が気付いてくれたことの方が大切なことなので、このことを知りません。だから作品内では触れていません。裏設定、裏話というやつですね。

 三度「渉さん」と呼びかけた栞についても少しだけ。これは、新約聖書を読んだことがある人ならなんとなくピンときたかもしれません。ペテロが二度鶏が鳴く前に三度イエスを知らないと言った下りからいただいています。それぞれの「渉さん」にどんな気持ちが篭っていたのかは内容とこのエピソードを一緒に考えてみて、初めてわかるのかもしれません。

 最後に。これはしっかり考えたことなのでおまけとして。
二人の名前、「栞」と「渉」がどこから出てきたか。
 栞というのは本を辿れば「枝折る」という、登山の時に枝を折って道を覚えるためのマークにするという意味の言葉だそうで、当初ホラー小説として書こうとしていたときには、栞の遺体がまるで木の枝を折ったかのように首が折れ曲がっていた、というオチにするつもりでした。
でも、道を覚えるためのマークにするということで、「渉が孤独を耐えて一年後に行くべき場所を忘れさせないためのマーク」としての栞にしました。
 一方、渉の方は、「渉」という漢字に「水の中を歩いてわたる」「広く見聞する」「関わる」という意味があるそうです。渉は三途の川を渡った存在であり、栞のそばで彼女が置かれていた環境やその状況をずっと見続けてきた存在であり、小説の段階になってようやく栞と関わることができた。彼には「渉」という名前以外は考えられませんでした。



さて、今回も書いた作品の裏話などをしていきました。
いろいろ考えた結果、2,3作品に1個のペースで近況ノートを書いていこうと思います。

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