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チェーホフの銃

年の瀬ですが、いつもと変わらず読むたび増える誤字脱字と格闘しています。

大部分が闇に包まれていたラルバたちの生きる世界に、やっと触れられるようになりました。作品的には最初に解説するのがいいとは思うのですが、前の近況ノートでも話した通りこれは「ラデックとラルバの旅に寄り添う」作品です。

作品というよりは中継、伝承と言ったほうが正しいかもしれません。私は”作者”などではなく、私が見たラルバとラデックの旅を皆さんに伝える”翻訳者”だと思っています。
この世界は私にとってノンフィクションであり、実際に起きた出来事なんです。私は他の人から見たら、異世界を覗く力を持った超能力者か、頭がイカれてる精神異常者のどちらかです。

なので作品的には間違った行動を多くすると思います。
その中で最も気にかけているのが「チェーホフの銃」です。
チェーホフの銃とは作品における技法・ルールのようなものです。

「舞台で登場した銃は発砲されなければならない」

簡単に言うと、張った伏線は回収しようねって意味です。
以下Wikipediaからの引用。
「誰も発砲することを考えもしないのであれば、弾を装填したライフルを舞台上に置いてはいけない。」
「もし、第1幕から壁に拳銃をかけておくのなら、第2幕にはそれが発砲されるべきである。そうでないなら、そこに置いてはいけない。」

作品内で盲目の少年が登場するなら、盲目である背景が物語に関わってこなくてはならない。同性愛者。ただ一人生き残った悪役。四肢欠損。
これらすべては、おそらく物語に関わってこないといけません。

しかし先ほど申し上げた通り、これは私にとってはノンフィクションです。
皆さんの周りにも同性愛者や盲目者はいるでしょう。大勢の死者を出した事故から生還した人や、四肢が欠損した人をテレビで見たこともあるでしょう。
果たしてそれは必ずしも何かに必要でしたか?いいえ、同性愛者である意味や、四肢がないことに必要性はありません。
野菜が好き。蛙が嫌い。おとなしい。意地っ張り。そういった誰でも持ち合わせている個性の一つに、境遇があるのです。

言い訳がましくはなりますが、シドの国にもそういった”特殊な境遇”を持った人物は出てきます。無論、それが発砲される銃であることは多いです。なんせラルバという度を越した異常者の趣味趣向に付き合わされるわけですから、”特殊な境遇”が何かしらの弊害や機会になることもあるでしょう。

しかし、発砲されないこともあるわけです。なぜならこれは作品ではないから。
盲目である必要。聾唖である必要。足がない必要。腕がない必要。そんなものはありません。もしそれを必要としているのであれば、先に「この文を読んでいるあなたが今ここに生きている必要は?」という問いを思い浮かべてください。
それは誰にも答えられません。

同じように、ラルバたちにも、私にもそれは答えられません。

しかし「チェーホフの銃」という手法が世間一般に浸透し、ルールとして根付いているのもまた事実。この小説はきっと「素人の愚作」と罵られることもあるでしょう。
ですがそんなことは些細なことです。私の目的は「私が目にしたラルバとラデックの旅の行く末を書き残す」ことであり、作品として認めてもらいたいわけではないからです。なので皆さんにもシドの国を「史実」として読んでいただきたいという私からのお願いにすぎません。

こんな節操のない私ですが、これからもシドの国をよろしくお願いします。

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