本日一回目の更新です。
今回は「日常と非日常の境目」が、ほんの少しだけ音を立てて揺れます。
第55話 紫煙の向こう、日常をつなぐ細い糸
大熊・高木の訪問を終え、北藤家にはようやく笑いが戻る。
だがその直後、教会の外で吸われる一本のたばこから——
“日常に混じる異物”が、ゆっくり形を帯びていく。
「ありゃ、“クロ”だな……」
元刑事の大熊が口にしたのは、
少年・北藤翔太を「保護対象」ではなく「監視対象」と見る冷たい判定。
紫煙の中で語られるのは、
父の死の疑惑、世界各地で進む失踪、
そして“666の獣”をめぐる不穏な線。
教会の窓から漏れる小さな笑い声だけが、
この街を“いつも通り”に繋ぎ止めている。
その糸は——もう、細く震えている。