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空戦ACT.3〜5のテーマ

「空戦」
https://kakuyomu.jp/works/1177354054888422454

ACT.3
 なにより「しぶとさ」でしょう。DⅠ-133のセリフ「私、しぶといのよ」に表れているとおりそのままです。P-40とのほとんど果てしない空戦、不時着後も闘志を絶やさない相手のパイロット、何時間も漂流を続けるDⅠ-133、遭難から生還して間もなくの出撃で死闘を繰り広げ、しまいには滑空で着艦を成し遂げる語り手。至るところにしぶとさのモチーフを詰め込んでいます。だいたい本来零戦とP-40の戦場に九六艦戦が上がってくることそのものがしぶといではないですか。
 あと、随所にキリスト教を想起させるモチーフを置いたのですが、お気づきでしょうか。ノアの方舟とかね。DⅠ-133もそうですよ。DⅠは第四航空戦隊の一番艦を示す記号、100番台は戦闘機、その33番目ということです。ダンテ『神曲』の煉獄の章が33節立てということで、33は煉獄の数字とされているようです。しぶとく生きるということは煉獄を生きるということなのです。
 つまりACT.3の舞台は煉獄です。霧に満たされた白い煉獄。九六艦戦はそこに染まったような灰色、そして生還の兆しとなる九七艦攻や九五水偵は黒っぽい緑。煉獄と天使の明度逆です。(P-40も銀とかがよかったか…)
 むろんDⅠ-133は架空です。龍驤はせいぜい戦闘機20機なので、順番につけていれば33には届かないはず。例えば例のアクタン・ゼロがDⅠ-108です。


ACT.4
 「成長」でしょうか。むしろ104戦隊の戦いの想像がメインなので、どう味付けするか結構悩みました。題名も同じくらい悩んだ。
 疾風勁草というのは暴風が強い草を育てる、倒されても起き上がる草になるという意味なのです。その草にあたるのがウイングマンの鴻上というわけ。たぶん対ソ戦が初めての実戦でしょう。とにかくついてこいとの笹川の指導に従い、冒頭でやっとの戦果を上げます。そしてラボーチキンとの空戦をイメージし、通遼上空で戦隊唯一の戦闘機撃墜をコール、大金星。しかしこれは一歩間違えば逆に食われていた危ない手柄でした。前の晩に「生きて戦い続けろ」と言われた道理にいささか反するのです。そのリベンジになったのが奉天上空戦。これは敵方からのリベンジでもあるのですが、鴻上はこれにまともに受けて立って相手を仕留めます。笹川に自らの成長を見せつけたことになります。
 一方の笹川は最後に軽くLa-7を捻ったところが面目躍如でしょう。鴻上を見守りつつ必要なら割って入る、という余裕が貫録です。

ACT.5
 「ジンクス」です。前線基地を散歩することにしている、とか、パイロットの手を握らない、とか、色々ゲンを担いでいます。ポケットの中のサメはその象徴です。
 冒頭の構成が変に感じられた方もいると思いますが、「誰々は今どうしているか」という問答を続けるこのスタイル、フィッツジェラルド「バビロンに帰る」の冒頭のパクりです。
 あと結末部分ではルー・ビゴットとスチュアート夫人のどちらがどちらの運命をたどったのか伏せておくことによって読者に残酷な選択を強いています。どちらが助かってほしいか、と。この段落を書いてるのは2019年10月28日ですが、今日、この二人に少し思い入れられるようにちょっと書き足しました。

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