• に登録
  • SF
  • 現代ドラマ

世界が溶けていくように見えた

2018年7月、豪雨の日。
太陽がしずむ直前に、海の近くに行かなければならない用事があった。


ふりしきる雨に風景がぼやけ、ひなびた港町に人の姿はなく。
海面は、水滴に打たれた穴が無数に生みだされていた。


箱庭のように作り物めいた景色のなかで、海面にうっすら土の色が広がっていく。
右を向いても左を向いても、正面の島影からも、じわじわと土まみれの水が流れていく。
一瞬ですべてを破壊する地震などとは違って、ゆっくりと大地が崩れていくのが肌で感じられた。


死者が出たとの報道を聞いたのは、それから少し後のことだった。

コメント

コメントの投稿にはユーザー登録(無料)が必要です。もしくは、ログイン
投稿する