綾香が櫻井と会った後、すぐに響一の元に向かったら…<if.ver>
送別会を終えた私は、二次会には参加せず、すぐに響一の元へと走った。我武者羅に、響一だけを思って。
「ただいま」
「お帰り~…どした?そんなに息切らしっとと…」
出迎えてくれた響一の胸に飛び込んで、両腕を回し抱きしめる。最初は驚いていたが、響一は何も言わずに抱きしめ返してくれた。
「疲れたろ。シャワー浴びてすぐに寝るか」
やさしく労わってくれるのが好き。いつもはズボラなくせに、私に何かあると察しようと頑張ってくれるのが好き。ガサツなくせに、繊細さを見せるのが好き。いっぱい、いっぱい好きなところがあって、何よりも私のことを好いてくれるのが…大好き。
私が何も応えないでいると、響一は…しゃーないなと、私をお姫様抱っこして部屋に連れて行く。
ソファーに座り、自分の膝の上に私を乗せると、私の頭を撫でてくれる。暖かい…。心臓が凍えるほど、冷たかったのが嘘のように。
「なんか…あったか」
私がこくりと頷くと、そうか…と、また二人とも黙り込む。でも、嫌じゃない。静かな沈黙が、二人の間にある空気が心地よくて、燃え上がっていた私の怒りの炎は、ゆらゆらとした弱火になっていく。
落ち着いた私は、今日起こったことを、ポツリポツリと話しだした。話しているうちに、怒りが再燃しそうになったけれど、触れている響一の暖かさが、その熱を奪うように、私の心を穏やかなままにしてくれる。全てを話し終えた私は、響一の顔を見るのが恐くて、響一の胸に顔を埋めていた。
「それは、つらかったな。…綾香はそいつに復讐したいか」
…出来るのならば、したい。
「したい…かも」
響一は、うんと頷くと、気軽に散歩でも行くかのように、
「ちょっと俺、ムショ入ることになるけど、いいか?」
と言ってきた。
はい!?
驚いて顔をあげると、響一は優し気な顔で私を見ている。口をハクハクさせていると、
「綾香にとって一番大切なものを、傷つけてまで喧嘩を売ってきたんだ。綾香が買うなら、俺の出番だろ」とこともなげに言う。
呆気にとられていると、響一は、傷害罪って何年だ、示談金とかいくらだろうな、剛と友也にも手伝ってもらって…恐ろしいことを言い出している。
「しない!したくない!あんな女しらない!」
私が担当している小さい教え子のように、必死になって訴えた。それを見た響一は、ニヤリと笑い、冗談だよ…と私の頭を撫でる。
か、からかったな…こやつめ~。
自身すら燃やしてしまう怒りの炎ではない、ほわっとした…暖かみのある、それでいて恥ずかしさも相まった熱が体中を駆け巡る。
「きょういちの癖にナマイキよ!」
「ま、たまにはな。先生も大変そうだし」
悔しそうに響一を見ていると、
「綾香はさ、一人でなんでもできて、我慢強くて、他人ばっかり気遣って、心配だったんだ」
「……」
「でもさ、強いだけじゃなくて、今日みたいに弱いところも見せてくれて、ホッとした」
「…うん」
響一は、私の頬にかかった髪を梳いてくれる。
「綾香の中の負の感情は、消えてなくならないかもしれない。だから、もし飲み込まれそうなら、俺に言え…すぐにな。そんでもって、あかりや菫さん、剛に友也も巻き込んで、笑い飛ばしてやれ」
うん、うん…と私は頷いて、悲しい涙じゃない、嬉し涙を流すのだった。
何書いてんだろ…。
と言うか、普通こうなんだろ!と…書いてて思った。
復讐?…ねえよ!
お目汚しでした。
自分なら?スナイパーライフルでズドンよw