ふたたびたまってきたので、やります第四弾。
翻訳ものの本の紹介。いっきまーす。
『なつかしく謎めいて』
アーシュラ・K・ル=グウィン
有名な『ゲド戦記』の作者による、異次元の異文化記録短篇集とでも申しましょうか。
異次元旅行が可能となった時代、こことはまったくちがう次元の風俗文化を記録したもの。
ル=グウィンは翻訳された時代によっては難しすぎて読みにくいのですが、これはとてもおすすめ。眠らない人たちの話とか、言語が複雑化した人たちの話が記憶に残る。
『エヴリデイ』
デイヴィッド・レヴィサン
毎日。朝起きると、ちがう人間として目覚める。物心ついた頃から、いや、赤ん坊として生まれたときからそうだった。だからこの物語の主人公は、本当の自分が何者なのかを知らない。毎日別人として生き、毎日、ただ生きるために生きる。次に目覚める人は、同い年のだれか。男か、女か。太っているのか、痩せているのか、金持ちなのか、スーパーモデルなのか、メイドなのか、視覚障害者なのか、レズビアンなのか、ゲイなのか、トランスジェンダーなのか、精神病患者なのか、幸せなのか、不幸なのか、わからない。
そんな主人公が恋をして、なんとか成就させようと試みる話。
『ぼくがいちばんききたいことは』
アヴィ
父と息子(あるいは、祖父と孫)の関係性を描いた、7つの短編オムニバス。
「あれ、ここで終わり?」という寸止めのところで終わらせるのがうまい。短編ってあまり読まないのだけれど、これはいい。
ベトナム戦争に言っていた祖父の話もいいけれど、やはり『ブリーフ派、それともボクサーパンツ?』がいちばん面白い。というか笑える。私も母親が再婚するとき、同じことやればよかったな(笑)
『カッコーの歌』
フランシス・ハーディング
妖精の「取り替えっ子」を、ここまで濃密に、ここまで現代的なアレンジで書けるなんて……!
しかもすごいのは、主人公が取り替えっ子本人だということ。取り替えられた本物を探すのだけれど、本物を見つけたら、もちろん偽物の自分は邪魔者になるわけで……そのあたりの落としどころも、そうくるか! というかんじ。いい!
『僕には世界がふたつある』
ニール・シャスタマン
はじめ、ずいぶん読みにくいな、と思うのも当たり前。この主人公、現実と妄想を行ったり来たりしている。大海原を航海する船員の自分と、精神病院で治療を続ける自分と。
妄想と現実がお互いの領域を踏み越えはじめたときに、冷やりとする。そうか。そうだったのか。
理不尽な船長、船長を殺したいオウム、脳みそを退治する掃除夫、韻を踏む(?)航海士、船の軸先の女神カリオペ。
あとがきまでが一冊の物語。
『闇の魔法学校』
ナオミ・ノヴィク
ホグワーツ魔法魔術学校とはまったくちがう。
まず、この学校には大人がひとりもいない。その代わりに怪物がいて、生徒を食おうと狙っている。だから生徒たちは、廊下に出るときも団体行動をとり、引き出しを開けるときも身構え、勉強しているときも五分ごとに後ろを確認して、怪物から身を守る。四年生で卒業するまでに生き残れるのは四分の一。それでも、外で暮らすより生存率はずっと高いので、この学校に入学できることはラッキーだ。それくらい、魔法使いの子どもはおいしい。生徒たちは文字通り命がけで勉強する。生き残るために。
この設定だけでも面白すぎるのに、主人公の秘密と周りの同級生たちとのなんやかやがいちいち面白いので、本当にずっと面白い。軽く絶望を覚えるほどに。
ちなみに章タイトルは主人公たちを襲う怪物や黒魔術師の名前になっているのだけれど、途中で「四年生」が出てきて笑う。主人公は三年生です。
約二年ぶりの紹介でした。
本を読むのは遅いので、また紹介できるものがたまるまでに時間がかかりそう。よければ面白い翻訳ものを教えてってね!