流石に毎日ノート書いてるとネタが無いんでですね。
最近、ちらほらフォロー作者様が、一人称と三人称についての言説を述べておられるのを見ていたので、今日はそれに乗ってみようかなと思います。
と言っても、わたしは創作論とか語れるほど、引き出しの広い人間ではございませんので、
大したお話をするわけではありません。
わたしは基本的に、作品で書きたいことを考えて、人称を決めてますが、
視点を集中しやすいという意味では、一人称の方が得意ではあります。
三人称で書いても、割と視点を固定しがちではありますね。
語り手の考えとかを文章に乗せやすいのが一人称の強みですが、反面、その視点以外で起こった出来事を描写しにくいのが難点で。
広い範囲に伏線を貼りやすいのが、三人称の強みかな、とは思います。
今書いてる【真夏の仮面舞踏会】も、最初は三人称で書いたんですが、その後、一人称に直して、そのまま書き続けています。
個人のメンタルが壊れていく、
そんな視点を描きたいなとか、考えたせいですね。
良ければ、初期版を下に載せときますので、本編と読み比べてみてください。
いろいろ推敲前のものなので、今と文量が全然違うのですけど、雰囲気の違いとかは伝わるかなあと。
あ、ルビの表記とか、そのままなんで、読みにくい点はご了承くださいm(_ _)m
さて、今日もこれから執筆だあ(*ᐛ*)
いつもお読みくださっている皆様に感謝と祝福を!
本日の更新分↓↓↓
【真夏の仮面舞踏会】9話
https://kakuyomu.jp/works/16818792437467008569/episodes/16818792438797595946-----------
【真夏の仮面舞踏会】初期稿
『八月一日』
比較用 本編1話
https://kakuyomu.jp/works/16818792437467008569/episodes/16818792438120358162-----------
その日、|七搦《ななからげ》ナオが出会ったのは、世にも奇妙な台本だった。
「……なに、これ?」
そう、彼女が口にしてしまったのも、むべなるかな。
なにしろ“世にも奇妙な“なんて枕詞を付けてしまいたくなるくらいには、そいつは見るからに奇抜でヘンテコで妙ちくりんな逸品だったのだから。
「名前なんだっけか。最近来た転校生が書いたんだってよ、その台本」
おおよそ独り言のような問いかけに答えたのは、|一寸木《ますぎ》リョータ。
ナオが所属する演劇部の先輩にして、部長である。
「へぇ……」
転校生が書いた、という言葉に惹かれ、ナオはそっと手を伸ばした。
テーブルの上にポイと置かれていたそれは、見るからに手作り感溢れた小冊子。背表紙がなくて、糸で|か《・》|が《・》|ら《・》|れ《・》|た《・》リングノートみたいになっていて、見開きしやすそうだなとか第一印象を抱きながらも、その奇妙なデザインに、ナオの小首は角度を増すばかりだった。
「……えぇと、まず、何語っすかね、これ……?」
表紙の紙は紫色だった。
それも割と濃ゆい色。
こんな色の紙を台本の表紙にしようという発想そのものがなかなかファンキーだなぁとナオは思ったのだが、それに加えて更に拍車をかけたのが、そこに記されていたタイトルだった。
明らかに英語などではない、けれどどこか西洋風な文字。
やたらとぐねぐねと曲がった文字で、平仮名で言うなら『の』とか『も』、アルファベットなら『m』とか『s』みたいな形をした文字に、アキュート(´)やウムラウト(¨)のような記号がくっついた見た目をしていた。
ついでにそれも、印刷ではなく、たぶん絵の具か何かで手書きされていた。
それも金色で。
やけに|装飾的《レトリック》な文字なのも相まって、古い時代の写本のようにも見えなくもなかった。
「何語でもないらしいぜ。|七搦《ななからげ》、お前、『コデックス・セラフィニアヌス』って知ってる?」
「ミリしら」
まるで聞き慣れない単語に、1ミリも知らないと即答するナオであった。
「……だよな。俺も全然知らんのだけど。なんか半世紀くらい昔に、イタリアの建築家が書いた本らしいんだけどさ。それに使われてた文字を真似て書いたんだってさ」
リョータもその反応は予想通りだったのだろう。
頬をポリポリと掻きながら言葉を続けた。
「ん? えと、つまりイタリア語って事すか?」
「いんや、聞いたら、作者の創作文字だとかなんとか」
ニヤリ、と笑う部長に、なんとなく続く言葉が察せられつつも、ナオは問う。
「……つまり?」
「その文字列そのものに意味は無いらしい」
「無いんかーい」
そりゃ読めないはずだわ、とアメリカンに肩をすくめるナオ。
よく分からないままに、ぺらと表紙をめくった。
「……中身は普通に台本なんすね」
「そりゃ台本として書かれてんだからな」
「あ、でも見開きしやすくて、めっちゃ読みやすいっす、これ」
背表紙がないその台本は、ぱらりとめくったページを完全に見開くことが出来る上に、なんならページごと背中合わせにできるので、普通に便利だった。
「俺も思った。こういう製本の仕方をコデックスって言うらしいんだけどな。変に本に折り目もつかないし、手に持って読みながら稽古するのにも良いよなー」
「意外な発見っすね」
なんて話をしながら、パタンと最後のページを閉じた。
「……う、わっ……!」
すると、その最後のページ……裏表紙が目に入って、ナオは変な声を上げてしまった。
慌てて台本から手を離して、自身の身体もまた台本から距離を取った。
「はは、ビビるよなー、それ!」
「知ってたんなら、先に教えて欲しかったっす!」
ぞわりと心が震えるのを押隠すように、ナオはことさらに大きな声で不満を口にした。
そこには、べしゃり、と、ぶちまけられたような、赤い絵の具の模様が走っていた。
まるで……血にまみれた手のひらでこすった跡のように。
「なんなんすか、これ……。いくらホラー系の話だからって、たかが台本にこんな演出いらんでしょうよ!」
「作家のこだわりってやつなんじゃね? 知らんけど」
「適当か!」
どっどっ、と音を立てて鳴る胸を手で抑えつつ、ゲラゲラ笑っている先輩にツッコミつつ。
ナオはこの台本を書いた人物のことを思い返していた。
半月ほど前、夏休みに入る直前。
七月も半ばを迎えようとしていた頃にこの学園にやってきた転校生……|九重谷《ここのえだに》マユの事を。
----------