それは、ある夜にとある海辺の町を車で走っていると、どういうわけかいきなり車が道をそれ、ガードレールを突き破って、そのまま夜の海に真っ逆さまに転落してしまう、という夢なのですが。
それはもう、とてもとても怖い夢で、真夜中にいつも汗をびっしょりかいて目を覚ましていました。
その海辺の町というのは実際にある町で、小さい頃にはよく両親に連れられて海水浴や潮干狩りなんかに行っていたのですが。
小さな私は「いつか自分はあの場所でそうやって車で海に落ちて死ぬんだ」と本気で信じていました。
でも10代になると、いつの間にかそんな夢は見なくなって、進学のために上京して、就職をする頃には、夢のことなどすっかり忘れていたのですが。
ところがつい最近、ひょんなことから、その海辺の町に引っ越すことになってしまって。
それでその夢のことをふと思い出して。
何と言うか、ちょっと気味の悪い感じで。
何だか、知らず知らずのうちに「何か」に呼ばれていたような、そんな気になってしまって。
ガードレールを突き破る瞬間に目に入る、あのオレンジ色の街灯の眩しい光。
何かが蠢く真っ暗な海の底へ、ゆっくり、ゆっくりと沈んでいく自分……。
悪いことが、何も起きなければいいな、と思っているのですが。
……まあ、私、車の免許持ってないんですけどね!(笑い)