まずおさえておきたいのが、「シュレーディンガーの猫」は単体で存在する話ではなく、ある話の流れから出てきた「批判するための思考実験」であるということ。
「君たちのその理論が正しいとしたら、生きていると同時に死んでもいる猫が存在することになるよ?おかしくない?」と相手の理論の問題点をつくための「たとえ話」
何を批判するためかというと【量子力学の確率解釈】に対してですね。
量子のミクロの世界では我々マクロの世界では考えられない現象が起こる。
代表的なのは二重スリット実験。
「量子の世界において、粒子は観測されていない時と観測されている時とでは状態が変わる」
そこで量子力学者たちは、こういった実験で得られた様々な情報を元に、量子に関する整合性と実用性のある理論を構築しました。
『量子力学において粒子は様々な状態が「重なりあった状態」で存在しうる。この「重なりあった状態」は観測機器によって粒子を観測することで、いずれかの状態に収束する』
『重なり合った状態』というのは、複数の状態を同時に持っていることを指す特殊な表現です。
これが量子力学の確率解釈ですね。
それでこの説に異論を唱えたのがエルヴィン・シュレーディンガーさんです。
この説の奇妙さを分かりやすくするために、ミクロな世界の奇妙な挙動をマクロな世界に拡張する思考実験を考えました。
①1時間後に箱の中には「放射性原子が崩壊していない状態と崩壊した状態が1:1で重なり合った状態」が存在する
②原子の崩壊を検出すると装置が青酸ガスを出し、猫が死ぬ
③つまり、1時間後に箱の中には「猫が生きている状態と死んでいる状態が1:1で重なり合った状態」が存在する
④そして、観測されることによって「猫が生きている状態」か「猫が死んでいる状態」に収束する。
しかし、この箱の中に「猫」と「原子の崩壊を検出すると青酸ガスを出す装置」もあったとしたらどうでしょう?
①1時間後に箱の中には「放射性原子が崩壊していない状態と崩壊した状態が1:1で重なり合った状態」が存在する
②原子の崩壊を検出すると装置が青酸ガスを出し、猫が死ぬ
③つまり、1時間後に箱の中には「猫が生きている状態と死んでいる状態が1:1で重なり合った状態」が存在する
④そして、観測されることによって「猫が生きている状態」か「猫が死んでいる状態」に収束する。
・・・1時間後に箱の中には「猫が生きている状態と死んでいる状態が重なり合った状態」が存在する。
つまり、生きていると同時に死んでもいる猫が存在する?
それってやっぱり変じゃない?
このように、ミクロな世界での奇妙な量子現象をマクロな世界に拡張することにより「直感的には意味が分からないけど整合性はあるから納得できていた量子論」の問題点をついた思考実験。
それが、シュレーディンガーの猫ですね。
これは我々の常識からしたら「まったくバカげた状態」である、というのがシュレーディンガーの主張。
【まとめ】シュレーディンガーの猫は、ミクロな世界での量子現象をマクロな世界に拡張することで、量子力学の確率解釈論の問題点を分かりやすくした思考実験であるということ。