イネスは何故自分を友人と言わないのか、その理由がわからず怒って絶交と口にしてしまいます。
それでもリリスは、ショックの中でただ静かに頭を下げ続けるしかなかったのです。
でもイネスの従者サファイアには、その理由がわかっていました。
身分のヒエラルキーの中、てっぺんの巫子と底辺の家無し召使いが友達関係になれることは希だと思います。
それを取り持ったのはセフィーリアですが、彼女はいつも荒れた手をして学校にも行けず、召使い頭に牛馬のように働かされるリリスの息抜きになればと何かに付け遠出には同行させました。
その中での出会いであり、大切にひっそりと育てた友情だったのです。
そんなリリスが卑屈になること無く育ったのは、セフィーリアの愛情のおかげです。
特別に召使いである彼に館で一番日当たりの良い部屋に自室を持たせ、夜は二人っきりになれるように仕向け、二人で過ごして暖かくリリスを母のように抱きしめた彼女の愛情が、リリスを真っ直ぐに育てたのです。
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