「桃狩鬼譚」
https://kakuyomu.jp/works/1177354054889499459
バトル多めな異世界和風ファンタジー。おとぎ話「桃太郎」のオマージュ作品ですが、設定やストーリーのアレンジの仕方が巧みでした。
味方側のキャラが皆それぞれ個性的で、言動・会話のテンポがとても良かったです。ただ、そこに辿り着くまでがちょっと長いかな。
各キャラは過去と今がよく関連づけられていて、それぞれに見せ場も用意されてるので、読み進めれば楽しめる物語です。主人公は薄めですが。
人死は多めというか、名もなき妖と人間たちがバンバン死んで(消えて)ゆきます。そういう要素もあいまって、RPGゲーム的な展開の印象でした。モブキャラの生死を掘り下げる展開が苦手な方にとっては読みやすいのではないでしょうか。
以下、気になったところをいくつか。
冒頭、我鬼サイドの暴虐を延々と描くことで、読者の間口を狭めているように思います。導入の村焼きは勇者もののセオリーとはいえ、一方的な虐殺は読んでて面白みを感じるものではなく。
それが桃狩の動機と直結するならともかく、桃狩がその行為を目にして覚悟を決める場面は中盤にちゃんと用意されてるようですし。
鵺さんの説教ターンとかも、一気に出してしまうとキャラではなく作者の主張が透けて見えてしまうので、演出に一工夫欲しいなぁと思いました。信条にしても主張にしても、一方的に全部吐露する台詞は読んでて水を差された気分になっちゃうので。
味方サイドは凄くいいんですが、敵サイドが薄いというか、殺されていくモブキャラと悪意を向ける人間たちがアイコン的に描かれていて、正直、鵺さんと同じ気持ちになりました。
折角神視点で書くのですから、あたたかいものと冷たいものを対比させつつ「人間側」の人間臭さをもっと演出していくといいと思います。
全体的には楽しく読ませていただきました。
ありがとうございました(^^