• 異世界ファンタジー

近況(2022.3.18)

 速贄です。

 なぜ本編を更新せずに外伝を更新するのか?
 よくないですね。素人作家はすぐにそういうことをする。
 許してください。書いてて楽しかったです。

 さて、巷の悪役令嬢モノを拝見しますと、よく御令嬢が扇子を持って口許を隠しているという描写がありますよね。とくに漫画。
 あれはお高く留まった貴族というアイコンに持ってこいという印象があります。ところがあの扇子で口許を隠すという行為は、白粉(当時は水銀でできていました。おそろしいですね)によって抜けた歯を隠すためのもので、それで扇子が大流行したという言説があります。だったらうら若き少女にああいうポーズをさせるのは背景的になんだか嫌だなあと思うんですが、一方で私の調べた限り、インターネット上でそう言っている記事とかブログとかWikipediaにはとくにソースとなった文献が記載されていないので、なんかそれで扇子が流行したっていうのもあやしいような感じもいたします。
 こうなってくると、もう自分で歴史的背景を小説の中で考えるしかないですよね。そんな風にしてキャスリーン・ザ・ブレイブは執筆されています。そう、寄り道が多い。

 というわけで中世~近世ヨーロッパの事情を調べながら、キャスリーンたちの生活を考えたりしているんですが、ファンタジー小説と実際の中世ヨーロッパの比較(そんなものを比較するなという感じもいたしますが)においては、衛生環境が取り沙汰されることも多いですよね。実際にはもっと汚かったとか。
 実際、ベルサイユ宮殿なんかは糞尿のにおいで立ち込めていたと言います。ベルサイユ宮殿はでかすぎてトイレに間に合わないからその辺でしてたとかそんな話のようですが、現代的な感覚としては間に合わないからってその辺ですんなよという感じではあります。これは当時の人々と我々の衛生観念のずれに基づいた感想ですけれど、これにまつわって、当時の人々は風呂に入らなかったという有名な話があります。色々理由がありそうなんですが、大きいところではペストの流行とキリスト教の影響が強そうです。

 ペストに関しては当時のパリ大学の医師たちが、大気中の有害物質が毛穴から体内に侵入して病気に至ると発表した影響で、「水に触れると病気になる」ことが常識になってしまったようで、以後17世紀くらいまで、およそ300年に渡り、少なくともフランスで入浴という習慣が失われたそうです。ベルサイユ宮殿にお風呂自体はあったそうなのですが、入浴についてあれこれと記録がうかがえるのはマリー・アントワネットの頃っぽいので、その間、敬遠されていたのは事実のようです。
 もうひとつの理由として挙げたキリスト教ですが、禁欲の象徴として不潔が尊ばれたり、それに反して入浴という行為が肉欲を象徴したものでもあったため、否定的だったということのようです。なんでも当時の教義では熱は性欲を高めるとかで、女性は風呂とワイン(体温が上がる)を禁じられていたとか。なんじゃそりゃ。他には、そもそもローマにおける公衆浴場は男女が邂逅する場という側面があったということもありそうです。

 この辺りが入浴に対する否定、不衛生を助長したと考えますと、少なくともキリスト教的な教義が浸透していない世界、ペストのような疫病が流行しない、したとしてもその対策を水の回避に求めなかった世界において、一概に不衛生であることを与件として考えるのはいささか乱暴な気がしなくもないです。
 風呂に限定した話になると、風土(気候)的な影響、とりわけ湿度が低い地域では湯を用いた風呂の重要性が相対的に低かったことは間違いないでしょうから、宗教や病気だけで語り切ることもできません。

 何が言いたいかと言いますと、キャスリーンもリュドミラも、ちゃんとお風呂に入っていますし、お風呂に入れないときは絞った布で体を拭いています。だから良いにおいがします。それだけです。

 ではまた。
 近いうちに本編も更新できるように頑張ります。

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