本作をご高覧いただき誠にありがとうございます。
日帰りファンタジーコンテストが終わりましたが、まだ文字数オーバーをするわけにはいかないので、こちらにあとがき……というより、創作時の話を独り言のように書き綴ってみようかと思います。
ふつう、長編でもないかぎり、このようなあとがきとかやらないのですが、今回は思うところがあって最初からこのあとがきを少しずつ用意していました。
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※注意
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こちらは、「本作をさらに○倍楽しむために」的な内容ですが、ネタバレを含みます。
できたら、本作を読んでからお読みください。
https://kakuyomu.jp/works/1177354054883976632―――――――――――――――――――――――――――――――――
●参加のきっかけ
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最初は参加せずに見守って作品を読ませていただいていたのですが、「参加の敷居か低いお祭りだから踊らにゃソンソン」的なことをTwitterで言われて、どうせなら踊ってみるかと参加してみました。
まあ、どうせ参加するなら、とことんということで思いっきりお祭り騒ぎしてみました。
踊るあほうですね(笑)。
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●アイデアとタイトル
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日帰りなら拙作「アウトランナー」があるなと思ったのですが、漫コンで編集部選考で選ばれた一泊目でも6万字弱あります。
直すなら最初から書きなおそうとネタを考え始めました。
私の話の基本は食欲が絡んでいるので、それならそれを前面に出すかと今回のネタ確定。
食事ということを考えたときに、ふと「ティファニーで朝食を」を思いだし、オマージュ。
ただし、ストーリーで取りいれたのは、「麻薬密売」のエピソードだけですね。あくまで別物ということで、オマージュ部分はわずかです。
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●キャラクター「ホーク」
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これは私が中学生のころに生んだのが原型で、そこからずっと少しずつ設定が変わりながら描いているキャラクターです。
他の話ではまだもう少し人間的なのですが、いろいろと経ていてこの時にはとんでもない時を生きて、並行次元宇宙にまで連結している完全な人外です。
もともとは「知(サー)」の属性を持つ錬金術師で、記憶を自然に忘れることができないという爆弾を抱えます。
そのために多次元にわたり存在を連結して脳を並列処理している……とかいろいろあるのですが、その辺はどうでもよい話(笑)。
今回の話で大事なのは、彼が知識欲を求めるということです。
しかし、彼は忘れられないため、「知る」という欲望をなかなか満たせません。
そんな中、唯一忘れられるのが「幸福感」で、それを手軽に得るために食欲という手段にたどり着きました。
幸福感を知りたい→美味しい物を食べる→幸福感を知る→時間が経つと幸福感がなくなる→最初に戻る
というようなループですね。もう中毒です(笑)
この性質を今回の話のテーマに利用しました。
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●キャラクター「燕子花 美蘭」
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名前を考える時、「ミランダ」という名前がなぜか頭に残っていてこの名前になりました。
たぶん、なにかで「ミランダ・カー」さんの情報が頭に入ってきたタイミングだと思います(笑)。
地の文にあるとおり、絵にかいたテンプレのような不幸を味わってきた女性というキャラクターです。
これは、私的には「不幸テンプレ」のアンチテーゼ的な要素を含んでいます。
物語でよくある、しかし現実になさそうで、実はやはり現実でもある問題。
目の前にある問題なのに、幸せな人には別世界のような話。
それが彼女です。
そういえば、コメント等で彼女の過去の部分の文章についてご意見をいただきましたが、それについては非常に面白いので後述に追記します。
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●テーマ
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最後まで読んでいただいた方はわかったと思いますが、この話で美蘭の問題はまったく解決されていません。
言い方を変えれば、救われておらず、下手すればもっとつらい状態になったと言えます。
救われたと思った方は騙されやすい方でしょう(笑)。
登場したときの彼女は賭け金がなくなった、すっからかんの状態でした。
そして物語の最後に、ホークから賭けのための資金を少しもらっただけなのです。
これは「また少しギャンブルを続けられる状態になった」だけで、負ければ地獄がまた待っているかもしれないわけです。
そしてホークは、「小さな賭けに勝たせて資金を得られるようにしてあげるから、あとはお好きにどうぞ」という態度ですね。
つまり、たちの悪い男にギャンブル狂いにされてしまった話なのです(笑)。
エピローグでまた資金をもらいに来ていますが、あれはギャンブルに勝ったからさらに大きな勝ちをつかむためなのか、負けて資金がなくなって来たのか……どちらでしょうか(笑)。
ただ、美蘭はそのことに気がついているのも確かです。
な~んもよくなっていないことはわかっていますし、ホークにうまいことのせられたことは「詐欺師」呼ばわりしていることでもわかると思います。
実際にホークがやったことは、正しい現実認識だけ。
彼女もギャンブルをおりるかどうか悩んでいた。
そこに資金がちらつかされた……うむ、酷い話(笑)。
でも、人の救いってそんな毒のようなもんなんだろうなぁというのがテーマです。
毒をもって毒を制すとか?w
勝てば官軍とか?w
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●美蘭の過去とテーマ
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ところで、このテーマを書くのに、美蘭は不幸でなくてはならず、その状態を読者に示す必要がありました。
2万字という文字数も考えて、どのように書くか悩みました。
一番最初に思いつくのが、彼女の心理描写を丁寧に書いていく当たり前の方法です。
しかし、文字数も足りませんし、なによりそれはこの話に合いませんでした。
この話は、外面的には明るくハッピーエンド(に見せかけて)終わる話で、途中も少しほんわかした感じで進ませるのが目的でした。
だから、読者に美蘭の不幸な想いを共有してほしいわけではなかったのです。
加えて、ここで私が読者に見てほしい視点は、実は美蘭ではなくホークに近い視点なのです。
ホークが「(美蘭が)味わってきた不幸を知りもしない人」側に立ちますが、読者にもそちら側に立ってほしいと考えました。
なぜなら、このセリフの通り、人の不幸なんて簡単に理解できるわけがないからです。
そこで今回は、彼女が味わった過去をあえて羅列する方法を取りました。
出来事を淡々と書き、読者に好きなように受け取ってもらうことにしました。
人によっては、「かわいそう」「つらそう」と思ったかもしれません。
人によっては、「よくある話」「つまらない」と思ったかもしれません。
結局、描写は想像を促すものでしかなく、1つの描写で想像できる人もいれば、10の描写でないと想像できない人もいます。
これはバランスの話でしょう。
ただ、どちらにしても、この書き方なら読者は「他人事」のようにとらえるはずです。
そのキャラに確かに「過去」があっても、「他人事のつらさ」になります。
ホークと同じ考えの立場ですね。
ロボ物で設定や説明をやたらに書きたくなる病(笑)の話を別のところでしたことがあります。
それと一緒かもしれませんが、何でもかんでも描写を丁寧に綴ればいいわけではないのではないでしょうか。
手法は1つではなく、いろいろとあると考えています。
いろいろやってみることは大事だと思います。
特に今回の読者層や、短編という構成ではとくにわかりやすさというのも重要になります。複雑な心理描写が求められているのかも考えないといけません。
適材適所というのもあるでしょう。
まあ、それが成功しているかどうかは、別問題ですけどね(笑)。
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●けっきょく……
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本文にもあるとおり、つらいことは簡単に消えず、ふとした瞬間に戻ってきます。
たった1つの言葉で不幸がすべて消えるわけもなく、一時的なうわべだけの救済です。
なぜなら不幸に対して、幸福の力は弱い(本文では賞味期限と言っていますね)。
それでも、確実に手いれられる幸福の力はあり、その弱い力に頼りながら生きていく哀れな生き物……それがホークから見た人間なのかもしれません。
だけど、ホークはそんな人間が、そんなつらい中でも美味い物を作り食べる人間が、もしかしたら好きなのかもしれません。
ところで、この長ったらしいあとがきをなぜ書いたのかというと、私がホークに対する愛をとにかくぶちまけたかったからです(笑)。
語りたかったんですよ!!!!!wwwww
私の長編のほとんどに、姿形を変えて現れるキャラクター。
もし「知る」というキーワードが出てきたら、それが彼かもしれません……。
ぜひ皆さんにも気に入っていただけると嬉しいです。