Gさんは以前コンビニでバイトをしていた。その頃は廃棄の扱いも、本来良くはないのだが甘いところもあり、割と生活が楽になる良い職場だったそうだ。
ただ、そこは駐車場が広いコンビニ……要するに田舎でも郊外の方にあったので夜間のバイトはなかなか不気味だったという。
彼女は原付で通勤していたのだが、そこではエンジン音が聞こえてから真面目そうな態度を取れば良いと先輩たちまで言っていた。
実際徒歩で来る人はほぼ居なかったのでそれで問題無かったのだが、ある日奇妙なことが起きた。
その日もダラダラと勤務していたのだが、気が付くと店内の書籍コーナーに女の人が立っていた。慌てて居住まいを正したのだが、彼女は一向に会計にこず延々と立ち読みをしていた。
むろん立ち読みはお断りしているのだが、バイトの一人が一々経営者目線など持っていない。立ち読みするだけで邪魔にならないならいいやと、見た目だけは真面目に勤務している振りをしながら頭の中で今晩は夕食を何にしようかなどと考えていた。
その時、一台の車がエンジン音を鳴らしながら駐車場に入ってきたので今度は真面目に応対しようと気を引き締めた。しかしその車は店内をヘッドライトで照らした後、急ハンドルを切る音を立てて通り過ぎていった。交差点にあるコンビニならショートカットのために駐車場を使う車が居るが、ここは直線の道路脇にある。何故そんな行動をしたのか分からなかったが、一つ面倒事が逃げて言ってくれたと思っていた。
後日、地方新聞でひき逃げ犯が逮捕されたと載っていた。ご丁寧にその犯人は『コンビニで轢いた相手が立っていた』から出頭したのだと言っていた。わざわざこんな事を描かなくてもいいのにとは思ったが不気味なものは不気味なので、そのコンビニでのバイトは辞めてしまったそうだ。