Mさんがパートに出ていたスーパーの話だ。そのスーパーでは深夜まで残ると幽霊が出るという噂が立っていた。もっとも、みんな話半分で聞いているばかりで、誰も信じてはいなかった。
なぜならそのスーパーは二十四時間営業であり、残業も何もないからだ。そうして交代で業務を回していたわけだが、突然一人辞めることが決まり、業務に穴が開くので幾人かが新人が入るまでその抜けた穴をカバーすることになった。
Mさんは眠い目を擦りながら十二時間ほどの勤務を終えようとしていた。その時更衣室の一角に小学生くらいの少女が見えた。何故こんなところに? と思いながら『どうしたの?』と声をかけようとするとふっと消えた。
「それだけなんですが、悩んでいるんですよ。もし幽霊だったら怖くもないし安心なんですが、アレが疲れから見えた幻覚だったら辞めない限りシフトに抜けが出る度にアレを見ることになるんですよ……」
どうやら幽霊よりも質の悪いものというのは存在しているらしい。彼女は今では人に迷惑がかからないタイミングで辞められるのを待っているそうだ。