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SS:お手伝いさんの……

 Yさんの家は両親共働きだった。確かに二人とも稼いでは来ていたようで、子供の世話はベビーシッターを雇うという事で解決していた。
 一人で立って、一通り歩いてしゃべる事が出来るようになったらベビーシッターからお手伝いさんに代わって、彼女に細々した事をしてもらった。そのお手伝いさんは料理を作ってくれたり、お昼寝の世話をしてもらったり、それが小学校に入るまで続いた。
 それから一通りの小学校生活を送った頃、ふと両親に『ウチってお金あるの? みんなお手伝いさんなんていないって言ってたよ?』と言う問いに、両親は首をかしげて言う。
「それってあなたがずっと小さい頃のシッターさんの話?」
「ちがうよ、その人がやめてからきたおばさんのほうだよ」
 そう言うと、両親の顔が困惑の色を帯びた。
「ウチはそんな人雇ってないわよ」
 意外な事に混乱しつつ、よく考えるとあのお手伝いさんは一日面倒を見てくれていたのに、両親と話をしていたところを見た覚えが無い。それにいつも自分に寄り添ってくれていたのだが午前から午後の夕方まで居たのに、ただの一度も水を飲まずトイレにも行っていなかった。
「そうなんですよねえ、よく考えるとおかしい事だらけなんですけど、実害が出ていないのは何ででしょうか。まあ何にせよ優しい人でしたよ」
 それがこの世の人だったのかは分からないが、確かに彼はその人にお世話になった記憶があるそうだ。

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