Oさんは高校生時代、自転車に乗っていて事故に遭い生死の境を彷徨った。それ以来、もうすぐ亡くなる人が分かるようになったそうなのだ。
「分かるんだよねえ……こんなもの分かって何もいい事なんて無いのにさあ……」
彼女は愚痴っぽくそう言う。なんでももうすぐ亡くなる人は独特の空気を纏っているのだそうだ。
町を歩いているとそういった人が普通に歩いているので引きこもりたくなるそうだ。
ある時、もう死ぬまであと少しなんじゃ無いかと思うくらい暗い空気を纏っている人がいた。声をかけようかと思ったが、そのすぐ後に起こった事のせいで逃げ出したそうだ。
その男は近くにいた老人の方に近寄ると、自身の纏う暗い空気を老人に押しつけた。押しつけたといっても自身にはすぐ再び死の空気を充満させていた。
あの老人がどうなったのかは分からないが、彼女はアレが死神だったのだろうと信じているらしい。